#16(1st-ND4【極限脱出9時間9人9の扉】-[RED基盤捜索後(1:00)] 

====================

――前回の999。

 

大病室のREDの基盤が何者かに抜き取られていた。
このままでは先に進むことはできない。
かくして、全員が持ち場に散っていった……。

………………

…………

……――だが。

淳平は約束の1時になってもREDの基盤を見つけ出すことが出来なかった。

 

淳平は探すのを切り上げて、大病室へ戻ることにした――。

 

 

----------------------------------------
↓※Spoiler warning※ ↓

 

↓Novel modes- [C_Deck]↓

↓-[Large hospital room]

※20170720投稿分

=============================

 

■Cデッキ-[大病室]

C_Deck_[Large hospital room]

 

 

 

 

【淳平】ん? 

あいつら、あんなところに集まって何を……

 

 

淳平が大病室に駆け込むと…………。

既に(134678)の6人が病室に戻っていました。

 

しかも、【8】の扉の前――――REDの前に群がっている。

 

 

もしかして、基盤が見つかったのだろうか?

気になって淳平はその群れに声をかけると、群れの中にいた紫が反応し、REDに向かって指を指す。

 

淳平は歩みを止めかけていた足を【8】の扉へ向けて進ませ、群れを掻き分けて、REDの正面に躍り出ると、すぐにREDの異変に気が付いた。

 

 

 

 

【淳平】VACANT……空室、だと?

おいおい、基盤を見つけたのはどいつだよ……

見つけたら声をあげて知らせるって、そういう決まりだったろ?

 

 

少々八つ当たり気味に淳平は全員に話しかける――その理由は。

1時間前の12時に、淳平たちは捜索中のルールを決めていたからである。

 

『基盤を見つけたヤツは声をあげて知らせる』

 

もし、捜索中にREDの基盤を見つけたヤツはその場で声をあげて、周りに知らせるというものだ。

 

 

 

 

 それをきっちり守った淳平は、1時の鐘が鳴るまで右舷の通路の外側にある部屋を、船首方向から船尾に向かって調べていた。

 

おかげで、大病室へ戻るのに全速力で走らなければならなかったし、大病室まで戻る途中で誰一人合うこともないし、戻ったら戻ったで自分が最後だったのだ。

 

 

【紫】それが……

【淳平】なんだよ……。

 

 

紫が言い淀んで答える。

その紫の態度に自分の言い方がキツかったのかと冷静になるべくあたりを見回す淳平だったが、この場にいる他の者たちも困惑の表情を浮かべて押し黙っていたのだ。

その異変に気が付いた淳平は、重ねて問いかけるのだが……。

 

【淳平】なんで黙ってるんだ?

【八代】それがね、わからないのよ……

【淳平】わからない……?

 

 

紫だけではなく、淳平より先に大病室へ戻っていた八代までがそんなことを言い、これまでの状況を説明してくれた。

 

 

 

 

八代曰く。

彼女は12時から始まったRED基盤の捜索から戻って来た時には、大病室には誰もいなかったそうだ――つまり、彼女が一番乗りで大病室へ戻って来たということになる。

 

彼女が戻って来た理由。

それは捜索範囲で『基盤を発見できなかったから』戻って来たのである。

先ほどのルール通りなら、見つけられない奴は勝手に大病室へ戻ってきてもいいのだ。

 

――だから、一番乗りの八代は声を挙げなかった。それなのに……。

 

 

【八代】なのに……基盤が……

【淳平】はあ? ちょっと見せろ!

 

 

 

 

ってことで、再度REDを調査。

淳平がREDの下をのぞき込むと、基盤が抜けてたスリットは鋼鉄のカバーが覆われていた。

 

 

【淳平】他の2台は……?

【八代】同じよ

 

 

この大病室で【8】以外にREDが設置されている扉は【7】の扉と【3】の扉だけなので、他2台を淳平が調査しに行くのですが、八代に言われた通り……【8】の扉・【7】の扉・【3】の扉全てにREDの基盤が刺しこまれ、起動しています。

 

――だから、八代の『それがね、わからないのよ……』発言であり、淳平がREDについて問いかけた時に他のプレイヤーたちが困惑していたのです。

 

 

【淳平】なあ、念のため確認させてくれ。

ここにいるみんなは、全員、こころあたりがないんだよな?

 

 

状況を把握した淳平が、再度、このREDについて問いかけと、一宮と紫静かにはうなずき、セブンは当て上げ状態、サンタに至ってはとぼけたように肩をすくめ、四葉は深くうなだれたまま、無反応で――――。

 

 

 

 

【淳平】あれ……? ちょっとまてよ……。

ニルスは……どこだ……?

 

 

あたりを見渡すが、ニルスはいない。

それなら、八代より早くニルスが基盤を見つけ、戻した後にまた散策に出ているのか……と、淳平が考えていますが、既に1時は過ぎてる訳で――

 

 

【セブン】それにしても遅せえな、あの野郎……。

一体どこをほっつき歩いてんだ?

【紫】もしかして、道に迷ってるんじゃないでしょうか

【サンタ】ああ、その可能性は高いな。

あいつは目が見えないわけで……

 

 

お前ら……言いたい放題だな。

盲目のニルスの近くに四葉がいるのは兄妹という関係以外に「ニルスの目」の役割を担っているのだと思います。

おそらく、ニルス自身は『9番の男事件』で、四葉が解放された際、いち早く四葉に駆け寄ったり、その後の【5】の扉内に一人で入っていったこともあり、ある程度、自分なりの条件を満たせば自由に動けるのだと思われます。

 

――従って、ニルスの聴覚や運動神経は健常者以上の能力を持ち合わせた人物だと私は考えます。

 

 

 

 

【四葉】そんなことありえないよ!!!

お兄ちゃんは確かに目が見えないけど、音を聞けばなんだってわかるんだから!

 

 

ほら。四葉に怒られた。

 

恐らく、ニルスは後天的な盲目だと思われます。

理由1――。先天的のニルスだったら、「見えなない」という表現はしないと思います。

「見えない」とは、見えていた物が見えなくなるから「見えない」と言っているので、先天性だった場合は「知ってる・知らない」「触ったことがある、ない」という表現をすると思われます。

 

理由2.点字が読める。

点字は語学学習と同じなので、先天的な方が伝達手段として使用しますが、後天的な方同様に音声で表現される方もいます。おそらく、ニルスは後天的なので筆記も手段の1つとして使用するかもしれませんが、ゼロはあえてニルスが盲目だと他のプレイヤーに知らせるのに使用したギミックだと思われます。

 

理由3。彼の博識とものの言い方

ニルスが記憶力のある人といわれれば終わりなんですが、最初に船を散策した時にDデッキの水面変化を解説してくれたのは盲目のニルスですし、ナンバリングドアを一人で通過して「8秒ルール」について話したのもニルスです。

恐らく【5】の扉内でDEADまで走って認証も自分で済ませていないとここにはいないだろうし、REDの基盤散策時にも、四葉とは一緒に行動はしていないでしょう。

つまり、ニルスは聴覚以外にも推察力を持っている人物。そして、五感以外にも直観もフル活動していると思われるので、プレーヤーの中では一番厄介な人物と言えるでしょう。

 

 

 

 

【四葉】だから、道に迷うなんて、そんなこと……

そんなこと……絶対に……私――探してくる!

 

 

兄を侮辱された四葉が過剰反応を起こします。

あふれんばかりの涙を浮かべ、それでも兄を心配した四葉は、その涙を隠そうとして勝手に大病室を出て行ってしまいます――淳平の制止も聞こえないまま。

 

四葉の「音を聞けばなんだってわかるんだから!」と激怒した四葉の言動からすると、知らない場所で全速力したり、触ったもので正体が分かる想像力、人の会話や現状を把握する推理力は、相当ニルスが様々な困難や障害に接して、努力し、克服し、情報を常に更新し、自分の行動力として獲得したものだと思います。

 

一方、家族である四葉もニルスの血のにじむような日々を自らのことのように体験し、兄のニルスと同じような洞察力の優れた女性になっているのはそれが証拠でしょう。

 

だからこそ、そんなニルスがREDを見つけても声をあげなかったり、刺したまま再散策に行ったり、道に迷うって事はありえないと激怒したものの、何かトラブルに巻き込まれているのではないかと心配で心配で仕方ないのでしょう。

 

 

【淳平】行っちまった……

まいったな……どうするか……

 

 

どうするもなにも、四葉一人じゃ危険ですよ。

それに、ニルスが戻ってこないと先に進めないし。

何かあって戻れない状態だったら助けないと!

 

==============================

 

⇒Next, #17(1st-ND4【極限脱出9時間9人9の扉】-[ニルス捜索]