『ダイエット3日目…』

ママは最近始めた「ダイエット」をブログに書いている。
さっきまで「今更」のビリーをドタンバタンやっていていた。
今年はお姉ちゃん達のと一緒に自分もビキニを買ったらしく「どうしても痩せなくちゃいけない状況」になったらしい。
夏休みに入ってカレンダーが8月に変わったその日に

『今日からダイエットします!』

と宣言したかと思ったら朝も昼も殆ど水とビタミン剤しか口にせず夜のみ、本当に少しのご飯を食べるだけという…パパから言わせると

『オイオイ!倒れるぞ!』

てなダイエットを始めた。

もっともパパからしたら

『どうでもいいけどよ~倒れられたら厄介だからなぁ~』

位でママの体を心配してではナイようだった。


『とりあえず順調に体重も落ち、ビリーも筋肉痛に負けず励んでいます!…と』

口に出しながらキーを叩いている…がストレスが溜まっているのを知っている。
何が一番辛いか…

節酒だろう。

うちのママはお酒が大好きだからだ。そしてものすごく強いらしい。
お酒の強い人の事を“酒豪”だとか“ザル”だとか言うみたいで陽治のお母さんにもいつだったか…なんでそんな話になったのか、覚えていないけど

『シュンのママは“ザル”だよね~』

って言われた事があった。
陽治のお母さんとオレのお母さんはけっこう仲が良くてたまに夜、一緒に出掛ける。お酒を飲みに、だ。
オレのパパはお酒が弱くてほとんど飲まない。たまに“付き合い”ってやつで飲んで帰ってくる時があるけど…

最悪だ

少しヨロヨロしながら帰ってきて…あとはトイレに入ったきり…

ママはそんな時に必ず

『もったいない!』

って怒る。

『お金払って飲んで来て…全く!弱いんだから飲まなきゃいいのに!もったいない!!』


だからママがカロリーを気にして発泡酒の350mlの1缶を大事そうに飲んでいる姿をパパはニヤニヤしながら見ている。
本当はその1缶を我慢してご飯をもう少し食べればいいのに…と思うけど…

前にオレと買い物に行った時にスーパーでオレンジジュースの新商品のお試しで小さな紙コップに入ったジュースを配ってるお姉さんがいた。オレがもらって飲んでいるとお姉さんが

『お母さんも飲んでみてください』

ってママに渡そうとした事があった。
ママは

『ごめんなさい』

って受け取らなかった。

『けっこう美味しかったよ。なんでもらわないの!?』

ママに言うと

『お酒が不味くなるから!』




ママは毎日晩酌をする。夏は一杯目のビールがめちゃくちゃ美味しいらしい。
だから

『その一杯の為に夕方は水も我慢』

しているらしい。
その話を陽治にしたら

『なんだかオヤジみたいだな』

と言われた。だから他の人には話していない。


まぁそれくらいママはお酒が好きだ。でもその好きなお酒を我慢…1缶にしてまでダイエットしてるんだから本気なんだと思う。
ママがビキニを着てもパパがたまに読んでる本に出てくるビキニを着た女の人みたいになるわけないけど…
でもオレとしてはママに「男気」を感じて頑張ってほしいと思ってる。…
ママは女だから「女気」って言うのかな?



ママがブログをつけている間にパパは

『ちょっと行ってくる』

と出ていった。
さっき携帯が鳴って話していたから飲みに行ったんだろう。

『…全く。またもったいない事しに行って!』

ママは自分が我慢してるもんだから余計にイライラして言った。



…でも
今日は

『もったいない!!』

と怒る事はなかった。

その日、パパは帰って来なかった。次の日の朝、ピンポンが鳴って…パパだと思って開けたら…校長先生にちょっと似ている男の人とサッカーチームの監督にちょっと似ている男の人が立っていた。校長先生にちょっと似ている男の人がテレビのドラマみたいに手帳を出して言った。


『お母さんいるかな!?』


警察の人だった。







世の中には自分の力ではどうにもならない事がある…
最近、オレにもその事が少しずつわかってきた。
いくら一生懸命に練習したって“○○イレブン”のようなシュートは出来ないし、そのシュートを止めるなんて出来ない…イヤイヤいくらオレでもそんな事は…アニメの話なんて実際にアリエナイ事ってことくらいは知ってる。

そうじゃなくて…

どうにもならない事…


『こんな家に産まれちゃった事』
とか
『こんな家に産まれちゃった事』
とか


そう

『こんな家に産まれちゃった事』


だな、やっぱり…


だから

『こんな家に産まれちゃってない事』
だったらどんなにいいか…

そいでもって
『こんな家に産まれちゃってなくて、こんな事件があったら…』

なんて考えたらきっとこんな感じ…
そう、まるで反対な感じ…
な事を書こうと思った。



ママはきっと『こんな感じ』で…







洗い流しても、なんだかワカルようで〝えっち″の後は必ず寄ってくるヨージの犬に

(来ンなッ!)

と足で鼻先をこずく。



最近は別れ話の度に〝えっち″になり…欲求がたまると別れ話をしているような二人…



バンドだかなんだか知らないが夢を語っていたクセに1年1年が早く感じられることに焦ってきたんだかヨージは避妊をしなくなった。



『…オレだって…オレだって…』

夜中に酔っぱらって帰ってきて、一人台所で そうブツブツ言いながら泣いてる姿に思いっきりヒイタ私は避妊しなくなったヨージに更にヒイタ。


(…きっかけが欲しいんだ…)



その「夢」ってのを諦める「きっかけ」のために私ン中にぶちまけてる…


でもヨージは知らない。



…習慣がなかなか身に付かない私が唯一、ピルを飲むのを忘れてない事を。

…私たちの最終章をどうやって完結させようか…〝えっち″の後にいつも考えている事を…



隣で寝息をたて始めたヨージの鼻を軽く弾きながら

(いっそ殺しちまうか~!?)

と我ながらナイスな考えにニンマリしているとヨージの犬が私のお尻の匂いを嗅ぎに来た。

(オマエから殺すよ!?)


ヨージにしたようにヨージの犬の鼻を少し強く弾いた。




外で
弱い雨の音がしている。