警察の人…校長先生に似ている方の人はオレを気にしてママに目配せしながら
『ちょっとお話が…』
と言った。
ママに向こうに行くように言われたのでキッチンに戻って牛乳をコップに注いでいるとサヤカが降りてきた。
サヤカはオレのすぐ上のお姉ちゃんで今、中1だ。
こないだまでオレと一緒の小学校に通っていたクセに中学に行ったら急に髪の毛を気にしたり時々化粧なんかしてママからは
『イロケづいちゃって』
なんて言われてる。
バスケ部に入ってるから爪を伸ばせないのが
『ムカつく~』
らしい。
バスケ部も本当はもう辞めたいみたいだけど入部してすぐにシューズもウェアも…ユニフォームまで買っちゃったからママに
『辞めたら当分…三年間位はお小遣いあげないから!!』
って言われて辞められないでいる。
それに…
パパも中学の時にバスケ部でキャプテンだったらしく、しかも三人の中でもサヤカはパパに似ているから…
『お前はパパ似だからバスケだって絶対上手くなるぞ!』
なんて言われてますます辞められないのかもしれない。
もっともサヤカは
『ウチはママ似だからッッ!!』
って言ってるけど…。
確かに女なのにパパ似だとイヤかもなぁ~とオレも思う。
パパは体もデカくて少し太っていて頭は坊主にしていて…顔は…ゴツい。声もデカイし顔もママと一緒に写真を撮るとママがずいぶん後ろにいるみたいに写る。ママが特に顔が小さいからかもしれないけど…。
結婚式の時に親戚の人からは
『まぁまぁ、美女と野獣ね』
って言われたのよとママはお酒を飲んでイイ気分になるといつも言う。
確かにそうだとオレも思う。
オレの友達が遊びに来て挨拶しないとデカイ声で
『こんにちはッ!は?』
なんて言うからだいたい友達は
『お前の父ちゃん、コエーなッ!』
って言う。
『なんでお前のお母さん、あんなゴツい父ちゃんと結婚したのかね!?』
確かに…お母さんはドコが良かったのか?
一度聞いてみたことがあったけど
『なんでかね~!?』
ちょっとポカーンと遠くをみて、それからこう言った。
『ママ、あんまり面食いじゃないからかな!?』
…正直、もう少し…なんかこう違った言い方をすると思ったんだけどな…
サヤカは髪を結わきながら玄関の方をアゴで指して
『誰?』
と聞いた。オレは牛乳を冷蔵庫にしまいながら
『警察だって』
と言うとサヤカは目をパチパチさせて
『警察!?』
と聞き直した。それからリビングを見回して
『そう言えばパパは?』
と聞いた。
『なんか昨日、帰って来なかったみたい』
オレが言うとサヤカはオレの口元をジッと見つめて
『牛乳のヒゲ』
と言った。
オレが口を拭いていると一番上のお姉ちゃんがアクビをしながら携帯を握りしめてキッチンに入ってきた。
『おはよ』
オレとサヤカをチラッと見てイスに座りまた携帯をいじりだす。
フウカ…一番上のお姉ちゃんの名前だ…は携帯が無くちゃ生きていけないらしい。前にトイレに落とした時にそう言ってた。
突然、トイレから
『ギャーッッ!!』
と悲鳴が聞こえたかと思ったらいきなりトイレから飛び出してきて…そりゃあすごい騒ぎだった。
ママに
『トイレにまで携帯持って行くバカはいないよッッ!!』
『動かなくてもしばらく買えないからねッッ!!』
と言われて
『ウチは携帯が無かったら死ぬッッ!!』
って、その時に言ってた。ママがすました顔で
『じゃあ死んで下さい』
って言ったので必死でドライヤーで乾かしたりして…まぁ動いたからフウカは今もこうして生きている。
そして…フウカはアニオタでもある。アニオタっていうのは“アニメオタク”の事で…そんなフウカをサヤカは
『ねぇ~なんでフウカってああなの!?ウチ、ヤなんだけどッッ!!』
って毛嫌いしている。
コミケだかにコスプレして行ったり同人誌を出したりしていて“その筋”ではわりと有名らしいのだ。
前に友達に
『サヤカのお姉ちゃんじゃない?』
って雑誌を見せられた事があるらしい。
雑誌の中のフウカは化粧もなんだかよくわからない化粧で銀色の腰の辺りまであるウィッグをつけて青いカラーコンタクトレンズを入れてた。とてもフウカとはわからなかったがフウカの同級生の妹や弟でサヤカと同級生がけっこういて…三歳違いはわりと多いらしい…サヤカに報告するのだ。
そういうサヤカは今時の…目をこれでもかと大きく見せるような化粧でまつ毛がバシバシの…ギャル系っていうらしい…化粧が好きで…
サヤカは
『ウチの化粧はあんなオタクのとは全然違うしッッ!!』
…オレからするとどっちもどっちにしか見えないけど…
まぁそんな感じでサヤカはフウカをイヤがっている。
前にフウカの部屋を覗いたらナニジンだよって色のカツラ…ウィッグっていうらしい…があったり制作中の洋服があったり…しかもV系とかいう、男なのに化粧した歌手のポスターが貼ってあったりして、確かになんだかフウカの部屋だけ違う世界で驚いた。
でもオレはけっこうアニメが好きだし話しに乗ってくれるフウカも好きだし時間があるとゲームを一緒にやってくれるサヤカも好きだ。もちろんそんな事は二人には言わないけど。だって、なんか恥ずかしいじゃん。
フウカも携帯をいじりながらリビングを見回すと
『あれ?パパは?』
とサヤカと同じ事を言った。
オレがさっきの答えをしようと思った時、お母さんがキッチンに入ってきた。
ボーッとした顔でイスに座ると頬杖をついてなんだか考えるような顔をした。
オレが
『ママ?』
と声をかけるとハッとしてオレとサヤカとフウカの顔を見た。
…