物心ついたころには、家の外ではしゃべれなくなっていました。
だから、しゃべれなくなったきっかけがあったのか、そういうの何もわからないまま、気がついたらそうなっていました。
でも保育園のころは、まだ、そのうちしゃべれるようになれるかもしれないと思っていました。
だって、ほんとはしゃべれるんだもん。
なんでしゃべれないのかはわからないけど、ほんとは普通にしゃべれるんだから。
頑張ったら、私だって、みんなと同じようにしゃべれる。
そう思ってたけど、結局しゃべれなかった。
しゃべりたくても、みんなの中に入ると、なんか自分が麻痺してるような感じになって、気力がなくなってしまう。
自分でも訳がわからなかったけど、今になってみると、私はしゃべることにかなり強い不安を感じていたんだなって思う。
ある日、母に保育園まで車で送ってもらうのに、幼なじみの子が一緒に乗ってるのをつい忘れて、
「ねぇ、お母さん」
って言ってしまったことがある。
幼なじみの子がそこにいるって気づいた時、私は体がこわばってしまって、まるで何か悪いことをしてるのがバレてしまったような気持ちになってしまった。
人に自分がしゃべってるのを見られるのがとても怖かった。
人にどう思われるかって思うと怖かった。
しゃべっても、全然おかしいことはないのに。
特別人と変わった変なことをしてるわけじゃないのに。
でもそれが、私にとって、自分が壊れてしまうんじゃないかと思うほどの恐怖だった。
大人になった今でも、その怖さはなくなっていません。
子どものときほどじゃないけど、人がまわりにいるとしゃべるとき声が小さくなったり、緊張が強いとしゃべれなくなります。
こんな自分をずっとダメだと思っていました。
これが場面かんもくの症状だったということを、最近になってようやく納得できるようになってきています。
私がダメなんかじゃなかった。
自分をちゃんと受け入れられるようになるためにも、つらかった過去と向き合って、前に進みたい。
だから、場面かんもくのことを自分のなかにとどめておかずに、話していきたいと思います。