コロナ禍で 映画館に行かなくなって久しく、感染が少し収まって来ても まだ行く気にはなれないので

タブレット視聴してみた。

樹木希林さんが見たかったのと阿部寛さんが確か出てたなぁ と思って。

他にも好きな夏川結衣さんやYOUさんが出ていて、ああ もっと早く見れば良かった!と思った。



このお話は御盆を迎えた一家族の物語で、主人公のお兄さんが既に亡くなっている。

そのお兄さん役は誰なのかな?と思ったのだけど、仏壇の写真がぼやけていて判らない。

そこまでのカメラワークと
ふわりとした画面の印象に
「おや?」と思った。

この映画は主人公のナレーションで進んでいくが、
カメラの視点は主人公ではないらしい。

では誰の視点なのか?

この映画の最後まで顔も姿も現さない人、

亡くなったお兄さん だ。

あるいは お兄さんを含めた、
お兄さんが溶け込み
お兄さんを包み込んだ
「祖霊」

何代もに遡る 先祖代々の魂が集まり、

ひとつになった「祖霊」。


その視点だ。

亡き人は お盆の間ずっと家族の傍にいる。
会話を聞き 一人一人の表情を眺めている。

観客の見ている場面のほとんどが亡き人が見ている視点から  と思うと、

観客はただ映画を見ているのではなく、亡き人自身を体験している とも言える。


静かに 穏やかに 物語は進んでいく。

時に 主人公の新しい妻の亡くなった前夫の視点も混じりながら。


生きる人の心に  さざ波が立つ。

いくつも重なり、静まる。

 そしてまた波立つ。


そうやって 生きている者達と共にいて、

亡き人は 誰を責めるという事もない。

蔑む事もない。

画面はほのかにきらめき続けながら

広がる浄化の海を映し出す。


亡き人達の視点は、

生きている者達へのいとおしさに満ちている。


深い愛を感じる映画だった。