巣を後にしてから 一ヶ月ほど。

彼等の時間は 急速に進んで、

パパ電チュンは、人間だったら60代後半くらい。

真面目で実直な印象は 相変わらずだが、

トシのせいか 少し体が重く、億劫そうな感じだった。

ヨメ電チュンは、子育てが済んで のびのびやっているのだろうか

おおらかで明るい 50代のおばちゃん という感じ。



以前、『寿命図鑑』で スズメのそれは1.5〜2年とある事を 紹介した。

彼等の時は 本当に あっという間に過ぎるのだ。


彼等から見たら、人間は、

自分達が一生を過ごす間 あまり姿が変わらない 

不思議な生き物 かもしれない。


私には ほんの一分未満だったひと時も、

彼等にとっては 長い数時間に該当したに違いない。



ありがとう  電チュン。




秋が深まり、やがて冬が来る。

来年の春、彼等はまた来て

ここに巣を作るだろうか。

また 軽やかな あの声を聞かせてくれるだろうか。

御隠居夫婦、OK!!  カモーン!!







と、おちゃらけてみても 現実は。

この メオト電チュンのレポートは、 2017年のもの。

結論を言ってしまうと、翌年  彼等は 来なかった。



多分、最後の再会のその後も、

相変わらずダッシュでひたすら改札に向かう私を

どこかから 眺めていただろう と思う。




[ なんで 気が付かないんだろう?  

 自分達の事、懐かしがって 会いたいと思ってるみたいなのに。

 自分達は ここにいるのに。

 ここにいて、挨拶してるのに。

 ニンゲン って……。 ]

きっと そう 思っていただろう。 





ごめんよ  電チュン。

ニンゲンは、いつもバタバタ忙しいのさ。

時が経っても 見た目あんまり変わらないのは

それだけ成長が遅いって事かもしれないよね。

ふっ。




きっと 呆れて 眺めてる。

駅前の舗道の上からか、

樹上からか 空からか。




あるいは もっと高く から。




きっと 見ている。




きっと いつも そばに いる。