これは先月末に急遽新しく給与口座が必要となり、慌てて口座を開設しに行った時の話し。

現在使っている銀行とはまた別の指定された銀行口座が必要となり、その日の受付時間終了5分前に銀行へと滑り込む。
今の口座は子供の頃に親につくってもらったものなので、自分で手続きするのは今回が初めてだった。

そしていざ始めてみると口座開設にはしっかりとした個人情報を赤裸々に記入しなければならないことを知る。考えれば当然だけど、、

それでもたった今会ったばかりの担当者に色々知られてしまうのも何だか恥ずかしいもんだな〜なんて少し戸惑っていたら、
そんなことはお構い無しと15時ギリギリに駆け込んだせいか、グイグイとその担当者は必要以上に記入を迫ってくる。

そしてよく見るとその担当者は相武紗季似の綺麗な女性。俄然緊張が高まる。


記入項目は名前、生年月日、性別、住所と進んでいき次に職業、、

ん?職業?筆が止まる。
何て書こう。

もう会社員ではないしな。
自営業なのかな?

チラッと担当者を見る。

カッコつけて『フリーランス』とイキってみた。


続いて家族、住居関係項目、

『家族持家』の欄を薄く、
『独身』の欄を濃い丸で囲んだ。

必死なアピールは続く。

次は年収、

年収⁉︎

どうしよう。見栄張りたい。
年収1000万て書きたい。
でもさすがに嘘はダメだよな。
せめて脱サラ前の年収にしとこうかな。

悩んでいると、すかさずグイ子が口を開こうとしている。
まるでゴジラが放射能を吐き出す寸前かのように喉元まで出かけている。

それを見て私が先に仕掛ける。

『これってやっぱり年収とか書く必要ありますよね?』
『はい、審査がありますので。大体で構いませんので。』

グイ子がグイぎみで放射。

審査か。
カードローンの審査というよりは男としての審査に通りたい。

そう願いながらもここは正直に書かないと後に面倒になりそうなので、
渋々ありのままの自分をさらけ出した。

もはやここまでか。無念。

次に開設時の振込金額の記入。

『あの〜振込金額の最低金額っていくらでしょうか?』
『いくらでも構いませんよ。大半の方は1000円にしますね。』
『あ〜そうなんですね。』

そこでパッと財布を見ると小銭にしか入ってない。
三十路を控える男とは思えない驚額。月末の悲劇。
仕方なく聞いてみる。

『あの、1000円も無い場合は100円でもいいですか?』

ここで完全にプライドを捨てる。
さっきまで年収を見栄張ろうとしていた自分が愚かである。

『大丈夫ですよ。但し場合によってはATMからの引き落としができなくなりますのでご注意ください。』

『そうですね笑。ちなみに10円でも?』
『10円でも大丈夫です。』
『1円でも?』
『1円でも‼︎‼︎』

最後のはもう完全にカウンター狙いにきたぐらいのグイぎみパンチ。
ついでに『しつけーないいから早く書け』とトドメのアッパーも喰らったような気がした。

しかしプライドを捨てたファイターは何度でも起き上がる。
結局100円と記入して次に進む。

その後、キャッシュカードの種類や借入可能額など決め大体の記入が終わり最後に承認の印鑑を数カ所押すくだりへと入る。

これって普通なのかな?
それともグイ子だから?

押し直しが効かないという理由で押印は全て担当者がやりますとのこと。
契約において一番重要な行為なんだけどな。

そう疑問に思ってはみたもの、
これだけプレッシャーを掛けられたらもうキンチョーして絶対にちゃんと押せない。万が一でも失敗した時のグイ子の反応を思うと、、

黙って印鑑を差し出す。沈黙の印鑑。

さすがに豪語しただけあり受け取るや否やバスバスと躊躇無く押印していくグイ子。

まさに次々と敵をなぎ倒す沈黙シリーズのスティーブン・セガールかのように。

『さすがですね。練習したりするんですか?』

『えぇ、まぁ…』

集中している時に声を掛けるべきではなかった。

セガールから急に離婚届の押印を事務的に処理する冷徹な妻を見ているようでなんだか悲しくなった。


とは言え結果グイ子のおかげでスムーズに手続きは終わり、通帳受け取りまで待合席で待つことに。


『お待たせ致しました。こちら離婚成立しましたので、慰謝料振込専用の”苦痛預金”の通帳となります。少ない年収で死ぬまで払い続けてください。』

考えただけで怖ぇー。

と待合席でブルーな妄想の続きをしている間に口座開設。

グイ子から”普通預金”の通帳を渡される。
「普通」という言葉の安心感に改めて気付かされた。


『以上となります。ご不明点はありますか?』

『あ、えっと、あれ、、』


惨敗でも別れは惜しいものだ。フラフラな状態でも何とかラッキーパンチを当てに行こうと悪あがきで当たり障りのない質問をする。
何かが芽生えるはずもないのに。
それどころか同じこと聞いてしまって、さっき説明したよね!もう15時はとうに回ってるんだけど!貧乏人は帰ってさっさと働いてきな!
と言う意味が含まれていそうな、最近では悪女がすっかり板に付いた本家・相武紗季さんみたいな舌打ちが炸裂した‼︎‼︎ 気がした。
これでもうこの銀行には恥ずかしくて顔出せなくなった。
次回来店時にはフルベースを被って来店しないと。
それじゃあ強盗と間違われ逮捕されるのがオチだな。
そんなわけでKO退出。




帰り道の途中で偶然にも相武紗季さんがモデルのプロミスのポスターを発見する。

『あー借り入れでもしようかな〜』






レンタル彼女。。。笑