発端は1学期の始めのちょっとした口喧嘩だった。

原因は俺が明希の消しゴムを勝手に借りたからだ。

俺が明希と出会ったのは中学に入ってからだ。

明希とは同じクラスで、たまたま隣の席だった

明希は緊張で体が小刻みに震えていて、目が泳いでいた。

俺は、何となく『大丈夫か?』って声をかけた。

これがきっかけで、明希と話をするようになっていった。

普段、怒りっぽい性格ですぐ俺を叩く。

でも、時折見せる眩しい笑顔に少しずつ惹かれていったんだ。

俺は消しゴムを借りただけで怒られたことに腹が立って、無視を始めた。

最初は、すぐ止めるつもりだった。

でも、3日経ったころ、明希は俺に話しかけてくるのを止めたんだ。

俺は、明希に話しかけづらくなってしまった。

そのまま、話しかけられずにどんどん時間が経っていた。

そして今、もう半年になる。

今日、廊下を通った時、俺はある噂を聞いた。

明希が告白をされたらしい。

俺は今、教室へ向かっている。

はやる鼓動は俺の歩みを加速させていく。

教室の前に着いた。

大きく深呼吸をしてから、戸を開く。

ガラッ

休み時間に作り出される喧噪がより大きく響く。

みんなが笑いながら話す中を一人、間を縫う様に歩いていく。

明希は1枚の手紙を握っていた。

机の上に置いてある封筒には、『東雲明希さんへ』と書かれている。

ラブレター。

それを見ている明希が真剣な眼差しをしていることで俺は悟った。

明希は2度と俺に振り向いてはくれないことを。

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今日、下駄箱にラブレターがあった。

拓実はどう思うのかな。

拓実は優しかった。

私が中学に入ってから助けてもらいっぱなしだった。

体育祭の時には、足を挫いた私を背中に乗せて保健室まで運んでくれた。

亜梨紗と喧嘩になった時には、仲直りの為に一生懸命頑張ってくれた。

修学旅行で班とはぐれた時には、私を探しに来てくれた。

高校の入学生歓迎バレーボール大会で、体育館シューズを忘れた私にシューズを貸してくれた。

少しぶかぶかだったけど、すごく嬉しかった。

なのに、私は素直になれなくて、酷いことばっかり言ってた。

そんなつもりはなかったのに、毎日、毎日ずっと。

気づいたら、拓実は私と話してくれなくなってた。

拓実に嫌われた。

私は嫌われてしまったんだ。

ラブレターには名前がなかった。

放課後に体育館裏来てほしいって書いてある。

もう、拓実とは関係がないんだ。

行ってみてもいいかもしれない。

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今日はなんとしても成功させないと。

私は秀治君と相談して、いつまでも素直になれない2人をくっつけることにした。

ラブレターは成功かな?

後は秀治君が頑張ってくれれば。

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俺は放課後、友達の秀治に呼ばれて体育館裏に来ていた。

あいつ、俺のことを呼んだくせにまだ来ないし、帰るかな。

「えっ、拓実?」

振り返ると明希がいた。

なんで、明希が?

「明希、どうしてここに?」

その瞬間、明希は――――――――

「拓実、ごめんね。」

俺に抱き付いていた。

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体育館裏に行くと、何故か拓実がいた。

もう、ラブレターなんてどうでもよかった。

ただ、拓実に謝りたかった。

「拓実、ごめんね。」

そういって抱き付いた私を、拓実は優しく抱きしめてくれた。

「明希、俺こそごめん!!」

「え?」

「俺、ちょっとふざけてただけだったんだ。本当はすぐ止めるつもりだったんだ。」

視界がが涙でにじんでいくのがのがわかる。

「今まで無視をしてごめん。」

よかった。

「私、嫌われてた訳じゃなかったんだ。」

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「俺が嫌いになる訳ないだろ!!」

「俺は・・・・俺は明希が好きなんだ!!」

「えっ!?」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・私も拓実のことが・・・・・・嫌い。」

「!?」

「嘘。大好き!!」

ドンッ

「痛って~~~。」

「あっ、ごめん!!」

「いや、大丈夫。」

パチパチパチ

「おめでとう。よかったね。」

「ハァ、ずいぶん面倒だったな。亜梨紗、後でちゃんとジュース奢れよな。」

「えっ?」

「は?」

「偽装告白~くっつけ☆ラブラブ大作戦!!~、大成功!!」

「先に言っておく。俺は巻き込まれただけだ。」

「亜梨紗、どういうこと?」

「ほう、秀治どういうことだこれは?」

「あ、あ、あ、り、さ、落ち着、い、て~。体を、振るの、を止め、て~!!」

「まて、拓実。だから俺は巻き込まれただけだとゴハァッ!?」

「「さて、何か言うことは?」」

「「ごめんなさい。」」

「で、でも、晴れて両想いになれたんだからいいじゃん、明希?。」

「そっそれは・・・・・・・。」

恥ずかしそうに明希は顔を下げる。

「ありがとな、2人とも。」

「おう。」

「もちろん。」

2人が答える。

「さて、帰ろうか、明希。」

「・・・・・・・うん!!」

2人の手はしかっりと握られ、もう離れることはない。

4人は歩んでいく。

イチョウの葉が舞う通学路を。

「・・・・・・・・・はい?」

知らない男が立っている。

それはいい。

でも、なんで俺の部屋に居んの?

短髪、黒髪。

コートにジーンズ、部屋の中だってのに黒いブーツまで履いてやがる。

右手にはナイフなんて持ってやがるし、ってかどうやって俺の部屋に入ったんだよ。

・・・・・・・・・・・ナイフ?

体温が2℃ほど下がった気がする。

「ど、どどどど、どちら様!?」

「あれ?秀治君?」

「ヒイッ!!お金はありません!!どうか殺さないで!!」

「はえ!?」

男は驚いて、目を落とした。

右手にナイフを持っているのに気付き、慌てて放した。

「ごめん!!秀治君!!」

「いや、お前誰だよ!?」

しまった!!

強盗に下手な刺激はかなりヤバいじゃ!?

「え?あっ、そうか。」

そう言うと男は首に手を当てた。

カチッ

何かスイッチを切った音がする。

「ごめんね。これじゃわからないよね。」

女の子の声。

男は自分の髪を引っ張り出す。

すると、首の辺りがめくれ出した。

そして、マスクの下からクラスメイトの新崎亜梨紗の顔が現れた。

「・・・・・・ハァ~。」

驚きは絶えないが強盗ではなかったことに溜息が漏れる。

本当に強盗じゃなくてよかった。

・・・・・・・で、なんで俺の部屋に男装、土足、ナイフ装備で立ってんの?

「俺の部屋で何してんの?」

亜梨紗は少し困った顔をした後に、何があったのかを話し始めた。

「え~と、孝輔君が部活辞めたでしょ?」

「あ、ああ。」

「元気無さそうだったから驚かせてみようと思って。」

「それで男装・・・。」

ずいぶんマニアックだな、オイ。

あっ、ナイフは玩具だよ、と亜梨紗は付け加える。

「だから、孝輔君の家に行ってみたら、知らない女の子が出てきて。」

「知らない女の子?」

「うん。制服はうちの学校だったけど、あんな女の子居たかな?」

亜梨紗は若干、首を傾げる。

「それでね、その女の子が『あなた誰?何で男の格好をしてるの?』って。いきなりバレちゃって焦ってたら、その子が、『そう、あなた孝輔の・・・・』って言って近づいてきたの。」

「私の前に来て急に押されて・・・・・・。」

「押されて?」

「ここに居たの。」

「うん?」

「気づいたら目の前に秀治君が居たの。」

「そうか。えーと、この家の近くに神経内科の病院ができたから行ってみると――」

「秀治君、全然信じてないでしょ?」

「いや、そんなことないよ。とりあえずブーツ脱いで。」

「あっ、ごめん。」

亜梨紗は慌ててブーツを脱ぎだす。

「あと、その玩具も拾って。」

亜梨紗は玩具を拾って、コートのポケットにしまう。

そして、コートを脱ぎだした。

コートは男物だが、穿いていたジーンズと中に着ていた服はちゃんと女物らしい。

黄色を基調とし、秋を意識したと思われる楓の模様があしらわれている。

「新崎。コートは脱がなくていいから、そこのドアを出て、向かって右側の階段を降りて、玄関から家を出ような?」

「秀治君はこんな寒い中、女の子を家から追い出そうって言うんだね?」

「何が悲しくて、不法侵入半覚醒状態女と過ごさないといけないんだ。」

「酷い!!それに、私寝ぼけてなんてないもん!!」

「よし、寝ぼけてないならさっさと帰れ。」

「うぅ。じゃあ、秀治君、お出かけしようよ。」

「はあ!?」

「一緒に行こう?」

ごふっ。

上目づかいだと!!

「・・・・・じゃあ、行くか。」

「やったね!!じゃあゲームセンターに行こうよ。」

「ああ、ちょっと待ってろ。」

財布の中身を確認し、ポケットにねじ込む。

「早く行こ!!」

「はいはい。そんじゃあ行くか。」

こうして俺たちは家を出た。

夕日が輝く、気温16℃の寒空の下を。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~END

どこからか泣き声が聞こえる。

テレビの音声。

どこかで流れているであろう音もやはり遠くに聞こえる。

風が冷たい。

混沌とした灰色が雨の訪れを告げようとしている。

猫は屋上にいた。

少しおぼつかない足取りで壁の縁を歩く様は、子供を思わせる。

しかし、その整った毛並と艶、そして顔つきが大人っぽさを漂わせている。

足取りのおぼつかなさは、縁の幅の細さのためだろう。

それとも、風だろうか。

ふと、猫の体が傾いた。

そして、そのまま猫は屋上から姿を消した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

孝輔は、高校から帰宅中であった。

「ハァ。」

溜息。

(つまらない。)

最近、何となく誘われて入った生物部を辞めた。

家に帰ってもやることがない。

もちろん、勉強にも身が入らない。

だから、家に帰ってもネットサーフィンやテレビゲームをやったり、漫画を読んだりと1日中、部屋にこもっている。

俗に言う‘‘ニート予備軍,,って奴だ。

友達は部活で忙しく、‘‘彼女居ない歴=年齢,,で、1人寂しく帰っている。

12月の寒さに身を震わせる。

(空から美少女でも降ってこないかな~。)

ニャー

「うん?」

周りを見渡すが猫なんて居ない。

何となく上を見た。

アパートの上に黒いものが動いている。

ニャー

風が吹いた。

木が揺れる。

そして、猫の体が傾いた。

考える前に体が動いた。

必死に猫を追った。

ボスッ

重い衝撃が腕に走る。

なんとか、地面に着く前に受け止めることができた。

猫に怪我は・・・・多分無い。

着ていたダウンジャケットのおかげだろう。

「危ね~。大丈夫か?」

ニャー

「う~ん。まあ、いいか。」

「じゃあな。」

そう言って振り返る。

さて、帰―――痛っ。

腕、痛てーな。

そういえば、さっきの猫は――――ついて来てないな。

「ハァ。」

孝輔はため息をついて帰っていった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

猫はビルの隙間に入っていく。

振り返った。

まるで、背後を警戒するかのように首を巡らす。

そして、物陰に消えていった。

しばらくして、少女が出て来た。

高校生だろうか。

ブレザーとスカートというありふれた格好だ。

少女は若干、小走りに街中に消えていった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

パリッ

ポテトチップスをかじりながら、マウスを操る。

画面をスクロールしながら、興味を惹く話題を探す。

「今日もあんまりいい記事無しか~。」

ピーンポーン

「ん?」

立ち上がって部屋を出る。

今日は孝輔以外に誰も居ない。

階段を降りて玄関へ。

覗き穴から外を見る。

うん?

誰?

うちの制服だよな?

ガチャ

「どちら様?」

「ちょっ、何!?おい!?」

彼女は強引に家の中へ押し入っていく。

「ちょっと待てって!!」

しかし、彼女は孝輔をすり抜けて、2階へと駆けて行ってしまう。

「おい!!」

孝輔も後を追う。

孝輔の部屋の前で何とか追いついた。

「おい!!何んだよ!!警察を呼ぶ―――うわっ。」

今度は部屋の中に引きずり込まれた。

バタン

扉が閉まる。

孝輔が怒鳴り散らそうと口を開けたその時、

「ごめんなさい!!」

拍子抜けだ。

口を開けたまま孝輔は静止する。

「あの、私、お礼をしに来たんです。」

「お礼?」

「はい。先ほどは危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」

へ?

助けた?

「お礼は体で払います!!」

「ストッッッップ!!!!!!!」

「え?」

彼女は訝しげに首を傾げる。

「え?じゃなくて、助けたって何!?」

「え、あ、すみません!!分からないですよね?」

孝輔は頷く。

「さっき、屋上から落ちたのを助けて頂いた猫です。」

孝輔の脳内はパニックに陥っていた。

何だ、ゲームのやり過ぎで遂に夢まで―――。

「あのー?」

「んぁ?」

「お名前をまだ訊いてないのですが。」

「あぁ、孝輔。」

「孝輔さんですか。私はメイといいます。」

むに

痛い。

「その、助けて頂いたお礼に私の体を――――」

「ストッッッップ!!!!!!!(2回目)」

「なんでそうなる!?」

「えっ!?お礼ってこうするものってお父さんが。」

この馬鹿野郎!!

「普通は違うの!!もっと別のやり方があるだろう!!」

「別のやり方?」

メイは首を傾げた。

「ああ、もう帰ってくれ!!」

「えっ、やっ、ちょっと!!」

メイは困惑しながら押されていく。

「ちょっと!!ちょっと待って!!」

問答無用で階段を降りる。

「危ない!!危ないですって!!」

ガチャ

「いやっ、まだお礼が――」

バタン

はぁ。

寝よう。

ピーンポーン

ピーンポーン

ピーンポーン

ピーンポーン

ガチャ

「うるさ――――」

チュッ

「・・・・・・・・・・。」

「また明日来ますね。」

そう言ってメイは帰って行った。

それから、毎日、孝輔の家にメイはやってくる。

今日もメイが来る。

孝輔はもう溜息をつくことは無かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~END