幕張初日 終盤

ランビ先生の厳かな舞に会場が しっとりとした雰囲気に包まれる

大人っぽくて、優雅で、厳かで、流れるようで…

うん…。そうなんだよね。流れるように終わってしまう

それでも、流石の存在感で魅了してくれて、にこやかに去って行かれました

 

さぁ、次はパパシゼで1部は終わりだな…と、誰もが疑わなかった

 

ぼんやりと見つめた先の入場口

その薄暗がりに、フワリ……と白いものが翻った気がした

 

あれ…? 白い…人…? 氷に…タッ…チ…????

 

え…!? え…!? え…!? え~~~~~!!!!!

 

ダニー ボーイは何の予告もなく、夢・幻の如くリンクに降り立った

ここで彼に逢えるなんて、誰も思ってないし!聞いてないし!(当たり前 ^^;)

もう、場内は狂喜乱舞的な大騒ぎ !! 歓声というより悲鳴!それも半泣き 笑い泣き

あたしなんぞは「うっ…そ…」とマスクの中で呟いたまま、開いた口が塞がらず

ただただ、茫然とリンクを見つめるだけで…

 

いや、それにしても、結弦くんってば、こんな大騒ぎの中で、凛♪とシュッ!と

スッ!と、いつも通りのルーティンをこなす

アナウンスだって、ウチラの雄叫び(笑)でかき消されてるからね

 

それでも、彼が スー―ッと位置につくやいなや…

あれほどの大騒ぎが一瞬で鎮まった

そして波紋が広がるように、凛とした緊張感が張り詰めてゆく

 

ピアノの音が、湖面に滴る

その中を、滑らかに、優しく、凛々しく、清々しく

風のように、鳥のように、花びらのように、木の葉のように、水のように

 

生きとし生けるものの営み

豊かな情感

優しさ、温もり、祈り

 

ただただ 魅入られ、惹き込まれ、幻想と現の狭間を たゆたう

 

 

幻想と現の狭間ということなら、”ダニー ボーイ” を愛でていると、バレエの ”レ・シルフィード” や ”ジゼル” を思い出す

両方とも精霊の舞なんだよね。だから、世界観とか相通ずるような気がして…

 

なんてことを言いつつ、私はバレエの世界に詳しい訳でもなく、ましてや経験したこともなく、ただ子供の頃から好きで憧れてもいた

バレエ漫画も大好きで、愛読書は『アラベスク』に『SWAN』

 

今回、唐突に思い浮かんだのが『アラベスク』の最終話辺り

ノンナの最後のコンクール(?)だったか、ピアノ伴奏が途絶えた中、ノンナは微塵も動じることなく、ブレスレットが手首を滑るサラサラとした音だけが木霊する舞台で ”シルフィード” を舞った

それは至高の芸術に辿り着いた舞

「精神世界のことだけは教えることができない」

ミロノフ先生の言葉が印象的だったけど、”そんなものなのか”と当時は思っていた

 

だが!しかし!

今なら、”羽生結弦” という人を知った今なら、とてもよく判る(気がする ^^;)

 

”ダニー ボーイ”を愛でていると、その場面を思い出す

(いや…他の演目でも そうだけど)

極端な事を言えば、結弦くんは ”音” 無しでも、エッジの音だけで、作品の世界を魅せてくれると思える

 

そうできるだけの技術も表現力も持ち合わせている

しなやかで たおやかな腕の振り、優美な指先、髪の毛の先までゆき届いた繊細さ

一音一音、休符までも表現し尽くす、彼こそが音楽

そして、豊かな情感と共に、曲の世界観が ”物語” として見えてくる

 

何となく想う

”幽玄の世界”とは、こういうことじゃないか

結弦くんも、ここまで辿り着いているんじゃないか…って

 

あ…でも、また思い出したけど、その片鱗って、2019年のMOIで既に魅せてもらえてるよな…と

あの苦しく切ないシーズンのMOIで魅せてくれた ”SEIMEI” は、忘れようったって、忘れられるものではないから

それほど凛と、凄絶なほど美しかったから…

 

 

祈りの舞を終えた、ダニー ボーイ

滴り落ちる汗もまた、美しく煌めき…

 

静の舞の方が、力を使うんですよね。姿勢の保持に相当な筋力を要するから

特に結弦くんの場合、無茶苦茶 緩急に富んでいるので、身体への負担も想像を絶する

 

そして、幕張初日だけ衣装が違う…

 

たぶん、幕張入りした頃に怪我をして、痛みも相当 残っている状況で

怪我の原因になった事への恐怖心もあっただろうし、衣装のことも…

そんな緊張、不安、恐れの中で迎えた初日 

ほとんどサプライズ的(ウチらにとっては…)な ”ダニー ボーイ”

 

これ以上ない、一期一会の ”ダニー ボーイ”

 

あのね、結弦くん

私も、皆も、途中から泣いちゃって…

泣いたら見えなくなっちゃうから、堪えながら、鼻すすりながら

でも、ホント!ステキだった! 嬉しかった! 幸せだった!

 

ありがとう! ありがとう !!  ありがとう !!!

 

 

拍手、歓声、すすり泣き(または嗚咽 ^^;)でカオスぐらいの場内

そんな中で出てきたパパシゼは気の毒…みたいに思ったけど

いやいや!そんなことを思うのは失礼 !! でした

バッハよね…荘厳だわ

 

かくして、今年のAツアーはヤバイ !!!! となったのでした 笑い泣き