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音楽好きの備忘録。

音楽ド素人のアルバムレビューブログ。
プログレッシブ・ロックを中心に音楽を聴きます。
紙ジャケットCDが大好物。
ゆる~くやっていきます。

 

2年ほど前、ヤプログ!にて書いた記事の転載(若干の改訂有)です。

いやぁ〜この頃はマジックに熱中してたなぁ〜…懐かしい。この記事も改めて読んでみると当時どんだけ熱中してたのかがわかります(苦笑) のめり込みすぎだろ!!と昔の自分に突っ込みたくなるレベルのマニアックぶり…。


『音楽好きの備忘録』とブログタイトルとは全く無関係な記事になってしまいますが、ヤプログ!のサービス終了に合わせて思い出深い記事は転載していこうと思います…。

 

 

 

 

※マニアックな記事です。
 専門用語が多く読みづらいかもしれません...。

 

 


↑は僕の『クラシックパス』デモンストレーションです。
記事と並行して御覧下さいm(__)m



カードマジックをするにあたって避けては通れない技法、『パス』 。

かつてはギャンブラー達が好んで使用し、マジックに応用されるようになった歴史のある技法です。
数あるカードマジックの技法の中でも「難しい」と名高い技法。これまでに改良が進められ様々な派生が存在する『パス』のなかでも、今日は『クラシックパス』について書いてみたいと思います。


まず、パスの基本的な動作は「密かにデックの上下パケットを入れ替える」というものです。それを「カードを軽く揃えただけ」の自然な動きで完了する事が重要なのですが、これが難関であり、パスの神髄でもあります。
そもそもパスは動きが大きくあまりスマートではない為、頻繁に使われる技法ではありません。むしろカードコントロールをする上では、ティルト、カル、カット等、例をあげればきりがない程パスの代用となる技法があります。しかもパスより遥かに簡単に行えてしまいますから、わざわざ難しい技法を覚えなくても簡単に済ませたほうが合理的だと思います。

ここで、パスの持つ力に注目してみましょう。
パス一つでトップコントロールは勿論、ボトムコントロール、応用させればトップから二枚目へのコントロール、カラーチェンジの効果さえ生むことが出来ます。
それだけでなく、完璧なパスはマジックを見ている客からは何が行われたかわからないという大きなメリットもあるのです。
どういう事かと言うと...


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まずカードをトップコントロールする事を想定してください。
今は例として『ヒンズーシャッフル』と『パス』を比較したいと思います。

・ヒンズーシャッフルではトップへコントロールする際にカードをシャッフルします。客はそのシャッフルする瞬間カードに注目することが出来ますが、客がカードを注意深く観察しない限り、「選んだカード(任意のカード)を一番上に持ってきた」と悟られてしまうことはまずありません。
しかし客は「シャッフルすることでカードをどこかにコントロールしているのではないか?」と疑いを持つチャンスを、ヒンズーシャッフルによって得ることになります。

・パスでのトップコントロールは、任意のカードの上にブレイクを作りデックの上下を入れ替える動作を行います。この時点で客に「今選ばれたカード、しっかり覚えておいてくださいね」等なにか話しかけながらパスを行えば客にとって「怪しい」と思う瞬間は生まれません。(話しかける、相手の目を観る等、この「注意を逸らせる」為の行為を『ミスディレクション』といいます。)
つまり客からしたら「選んだカードをデックの中に戻し、カードを揃えた。」という風にしか見えないわけです。

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どうでしょうか。極端に言えば
前者は「カードをシャッフルする」とカードが一番上にくる。
後者は「カードを軽く揃える」とカードが一番上にくる。
こういう風に見えるわけです。
両者ともにトップコントロールするという点では全く変わりありませんが、後者のほうが不思議にみえませんか?実際、確実なミスディレクションで動きが隠されたパスは客に疑いを持つチャンスを与える余地が全く無いのです。これは「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」にも記載されています。

 

 

 


元々ギャンブラー達が好んで使用したと上記しましたが、「カードをコントロールし任意の場所に配る」という目的を達成するのに、周りから疑われては困りますから(イカサマが見破られてしまうから)、このようなパスという技法が生まれたのでしょう。(実際、パスだけを使って任意のカードを完璧にコントロールできるか?と冷静に考えるとほぼ不可能じゃないかと思います。ギャンブルでは不正が行われないよう予めデックをカットしたり、新品のカードのみを使う等対策が取られているので、あまり有効なテクニックだとはいえません。ただ、ギャンブラーが愛用した技法という歴史(伝説に近い気がする)がある以上、そういった逸話もあったりするのかも。)

カードマジックにおいて「カードを任意の場所にコントロールする」のは基本中の基本ですが、パスは基本的な技法の中でもずば抜けて難易度が高いです。その上、「デックの上下パケットを入れ替える」というシンプルな動きを手のカバーと角度だけで客から気づかれずに行う『クラシックパス』は相当の難易度かと思います。(僕は自分が納得行くパスが出来るまで一年強かかりました。)
その難易度故に様々改良がなされ、今では一口に「パス」と言っても、様々な派生が存在しています。
代表的なものを紹介してみると

・クラシックパス
 〜デックの上下パケットの入れ替え
  (上のパケットを下におろすイメージ)
・リフルパス
 〜上下パケットの入れ替えと共にカードをリフルする
  (パスの動きをカモフラージュさせる。)
・トップカードカバーパス
 〜トップ一枚以降の上下パケットの入れ替え
  (クラシックパスの進化系。難易度高。この動作によって任意のカードはトップから二枚目にコントロールされる。)
・スプレッドパス
 〜カードを広げた状態から戻す動作で行うパス
  (カバーがし易いが角度に弱い)
・ハーマンパス
 〜デックの上下パケットの入れ替え
  (下のパケットを上に上げるイメージ)
・ターンオーバーパス
 〜デックをひっくり返す動作で行うパス。
  (ハーマンパスの進化系。カバーがし易い)

まだまだありますが、紹介しきれないほどの量があるため省略します。
それぞれに利点、弱点があるため一概に「このパスを覚えておけばOK」というものはありませんが、状況に応じて使い分けられるようになれば『習得した』と言えるのでしょう。

どのパスにも共通して言えることですが、練習しても「上達してるのか?」と思ってしまうくらい難しいです。
カウント系の技法やフォールスシャッフル等の技法は自分の目線で上手く出来ているか確認しながら練習できますが、パスは演じている側からすれば丸見えの状態です。つまり自分の目線からはパスがうまく出来ているのかの確認ができない訳です。
そこで必要になってくるのが鏡とカメラです。鏡で自分の手がどう動いているのか、動きをカバーできているのかを確認しつつパスすることで、正しい動きを探ることが出来ます。更に、それを撮影することで後からじっくり自分のパスの動きを確認できるので、指の動かし方やカードを揃えるカモフラージュの動き等色々と研究できます。


なぜ『パス』はこんなに魅力的なのか。
それは「任意の場所にダイレクトにコントロール出来る」「カラーチェンジに応用できる」「客に疑いの余地を与えない」「パス単体でもマジックが出来る(極論ですが)」等、様々あると思います。その中でもやはり「難しい技法」であるからというのも一つの要因ではないでしょうか?
難しい、難しいと随所で言われている技法であるがために、「やってやろう」と意欲が湧いてくるのではないかと思います。実際、ある程度パスが出来るようになってくると難しいと思う事はあまりなくなりますし、積極的に使いたい技法としてパスをあげれるほどになると思います。
パスほど応用の効く技法は多くありません。パーム、スチール系の技法も応用がかなり効きますが、これらもやはり難しいです。(個人的にパーム系の技法はパスより難しく感じる。)

カードマジックの一大技法であるパス、その中で最もシンプルかつ不思議な魅力を放つのが『クラシックパス』だと思います。
18世紀にはもう考案されていたと言われている『クラシックパス』は、カードマジックの歴史を語る上で外せない存在であることは間違いありません。
そんな由緒正しい技法が練習でき、先人の知恵と試行錯誤の賜である技法達に浪漫を感じながら、技法習得の為に練習を積み重ねる。これも道楽としてのカードマジックの醍醐味です。



非常に長い記事になってしまいました。
いつか時間がゆっくり取れた時は、パスの解説やパスを行う意義を動画にまとめたいなぁとも思っています。
駄文長文失礼しました。最後まで読んで下さった方、有難うございます。

では、また次の更新まで...!!