つづきです。クローバー




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「くるり、来てくれたのね。」

「待ってたよ、くるり。」

私の頭上には、羽の生えた子供が2人、パタパタと宙に浮いていた。

「え…えぇえ!な、な、なに?!」

私が驚愕していると、2人の子供は視線を交わし、女の子は溜め息混じりに、男の子はくるりを宥めるように話した。

「ま、驚くのも無理ないわね。」

「くるり、落ち着いて、僕達はこの湖の妖精なんだ。
ずっと2人でこの湖を守ってきてる、くるり、前に好きな人にフラれて、この湖でずっと泣いてたでしょ?」

「あの時くるりを慰めたのは、私たちなのよ?フフフ、くるりは何か出来事があるとすぐにこの湖に報告しにくるものね。」

「そうそう、もう中学生になるのに、おね…」

「キャアアア!!やめて‐!」

私は顔を真っ赤にしながら叫び、男の子の言葉を遮った。

「本当に、本物の…妖精、なの?」

ようやく私は気持ちが少し落ち着いてきた。

「まったく、うそついてどうなるのよ。」

「本当に僕達この湖の妖精だよ、信じてくるり。」

私は冷静になり、2人を見つめた。

女の子は腰まである金髪に蒼眼、細長く先が尖っている耳の上にはオレンジ色の花がさしてある。

男の子は肩まである蒼い髪を一つに結び、眼は綺麗な金色をしている。

2人共、水色のシンプルなワンピースを着ていた。

「あたいはキラリ、よろしくね!」

ふいに女の子が自己紹介を始めた。

「僕はユラ。よろしくね、くるり。」

男の子も続いて自己紹介をした。

「私は…。」

「フフフ、私達にくるりの自己紹介がいると思う?」

キラリはクスクス笑いながらくるりの周りを一周する。

「くるり、僕達の名前を呼んで。」

ユラはくるりに少し真剣な顔で話した。

「この湖のために、そして、くるりのためにも。」

「くるりが名前を呼んでくれないと、私達はこの森の外に出れないの。」

キラリとユラはくるりの目を真っ直ぐと見つめて訴えた。

「…わかった。」

私は、わけがわからなかったが、とりあえず、2人の言うように名前を呼んでみる事にした。

「キラリ。ユラ。そなた達との契約を命ず。」

私は、2人の名前だけを言ったつもりだったのだが、なぜか、心の底から不思議と言葉が溢れ出てきた。

すると、私の胸に付いている月型の宝石が眩しい光を放ち、キラリとユラを包み込んだ。



つづく
つづきです。


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私は、白黒になった自分の家から外へ出た。

「う、わぁ。なんだか頭がおかしくなりそう…」

そこは、完全に色を失った白黒の世界だった。

「不思議。時間が止まってるみたいに感じる。」

色を失った世界はまるで、時間や音、希望までも失ってしまったかのように、私には切なく感じた。

「と、あそこに行くんだった。」

私は、白黒の世界に目を奪われているのに気づき、足を踏み出した。

私は、見慣れている道のようで、初めて通る道のようななんとも言えぬ感覚に襲われながらも目的地を目指した。

そして、ようやく目的地に到着した。

家のそばにある土手を通り、少し歩くと一見ただの小さな森のように見える場所。

その小さな森は中に入ると不思議な程広く、森の真ん中には木漏れ日が降り注ぐとても綺麗な湖が静かに揺れていた。

ここが私の大好きな場所。

悲しい時、悩んだ時、頭にきた時、嬉しい事があった時、私は必ずこの湖を訪れていた。

ここに来ると、抱えていた悩み事がすべて、とてもちっぽけな事のように感じ、何度も救われた。

かけがえのない、私の居場所。

「あれ?…なんで…。」

私は、小さな森の中に入って思った。

「…白黒じゃない、色がある。」

そう、私が今いる世界はすべて白黒になっていた。
しかし、その白黒の世界で、この小さな森だけ、白黒ではなく、色鮮やかに輝いていたのだ。

「くるり!」

その時、私の頭上からあの2つの声が聞こえた。








つづく。クローバー
つづきです。


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目が覚めると、そこは私の部屋だった。
ベッドから起き上がり辺りを見回す。

「え…夢?」

私は、いまさっき起こったことが夢だったのか、それとも現実だったのか、頭がこんがらがった。

と、ふと左手の小指に少し違和感を感じた。

「これ…。」

左手の小指を見ると、爪に「∮」の印と、おばあちゃんの形見の指輪がしっかりとはまっていた。

「てことは、夢じゃない?」

そこで私はもう一つ気付いた。

「え、なにこの服!」

パジャマを着ていたはずなのに、私はいつの間にか、見たことのない服を着ていた。

その服は宇宙のように闇に数え切れない程の星が散りばめられているようなワンピースで、胸元にはとても綺麗な月型の宝石がつけられている。

「うわぁ、可愛いこの服。」

と、そこで私は部屋の異変にも気付いた。

たしかに私の部屋に間違いない、でもなにかがおかしい。

注意深く部屋を見回すと、私は違いに気付いた。

「この部屋、色がない。」

そう、外が暗いので分かりずらかったのだが、私が今いる部屋は色がない、つまり白黒になっていたのだ。

(くるり、あなたの大好きな場所に来て、必ずよ。)

(忘れないで)

ふいに、またあの少女と少年の声が私の頭の中に響いた。

「私の、大好きな場所…。」

私の大好きな場所、それは1つしかない。

「ここでじっとしててもしょうがないか、なんかわけわかんないけど、行かなきゃ。」

そして、私は白黒の部屋を飛び出し、私の大好きな場所に向かった。




つづく。