平手said

平手「…」

志田「…」

平手「もっと、早く葵に伝えておくべきだったかな…」

志田「…仕方ないよ」

平手「…」

ソファに座って天を仰いだ。

デリケートな問題だ。

きっと誰もてちを責めはしない。

てち自身もそれは分かっている。

志田「…」

それでも、自分を責める気持ちは痛いほど分かるから、少しそっとしておこう。

ガチャ

志田「葵、寝た?」

守屋「うん…」

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守屋『葵?』

葵はその場にしゃがみこんだ。

原田『理佐ぁ…』

平手『…』

志田『…』

原田『うう…ううう…』

守屋『葵、ごめんね…』 

思わず、葵を抱き締めた。

決死の覚悟で飛び込んだ欅軍。

私達に甘えるなんて考えていないのは私達がよく分かっている。

でも、今は甘えずにはいられないはず。

それでも強がろうとしている葵は、止まらない涙を必死に堪らえようとしているように見えた。

原田『理佐は…いなくなっちゃうの?』

守屋『…』

原田『帰ってこないの…?』

何も、言えなかった。

方向性が何も決まっていない今、『理佐は助かる、戻ってくる』と言って良いものなのか、わからなかった。

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平手「…」

おそらく理佐はあの報告書で最終報告にしようとしてたんだろう。

あの報告書には、『自国の攻撃・防御機能を整えようとすることは、ひらがな国のこれ以上の拡大を待つことと同義の可能性あり』と書かれていた。

それに加えて、まだ攻撃力が勝っている今のうちにひらがな国を叩いておくことを進言している文も。

それほどまでに難しい事例なのに、このタイミングで拘束されたことを利用して、自分の命までかけようとしている。

そもそも、一人で国一つを相手にすることは難しいだろう。

おそらく理佐は、ひらがな国の深部を攻撃することで規模を小さくしようとしてるんだろう。

それも、自分の命と引き換えに。

そんなこと、させたくない。

理佐は欅国に不可欠な人だ。

私たちの精神的な支えでもある。

でも、理佐を救い出そうとすれば、逆にひらがな国に攻められる可能性もないわけではない。

そうすれば、逆に欅国が滅んでしまうかもしれない。

国のトップとして、そんな命令を出すわけにはいかないんだ。

平手「…」

でも。

平手「時間がない、何もしないよりは…いいよな」



志田said

平手「…」

ドアの隙間から、司令官室の中の様子を伺う。

昨日の出来事から、てちの表情が浮かない。

当然だろう。

確かに、私達にとって理佐は大切な存在だ。

一方てちは、一国の防衛軍の司令官。

この国の全ての人達の命を守る義務がある。

しかし、理佐を助けようとすれば国が危険にさらされる。

それは、一人の命のためにこの国を危険に晒すということ。

そのうえ、理佐の報告書からするに、今日からニ週間が勝負になるらしい。

そう簡単に判断できるわけがない。

志田「…」

今は話しかけるべきじゃないと、ゆっくりドアを閉めた。



志田「茜ー」

守屋「おはよ、愛佳」

志田「おはよー」

友香の病室を覗くと予想通り茜がいて、友香の手をマッサージしているところだった。

茜の隣に腰掛けて、天井を見上げた。

守屋「今日訓練は?」

志田「午後から」

守屋「そっかー…」

志田「うん…」

守屋「…」

志田「…」

守屋「…今、何考えてる?」

志田「…解決策?」

守屋「…私も」

理佐は私にとっては相棒で、親友で、今までどんなときもお互いを支え合ってきた存在。

六人のなかでも、特にお互いの信頼は厚いと自負している。

助けに行かないという選択肢は、私にはない。

何が何でも助けに行きたい。

でも、なにせ状況が難しすぎる。

〈あと二週間以内に急成長している国の勢力を無くし、かつその中で理佐を奪還する。〉

考えつく作戦はどれも、国と理佐どちらかを優先しどちらかを捨てるしかなくなる。

最終的にてちは、国を選択するだろう。

国のトップとして、この国を守るには理佐を見捨てなければいけなくなる。

いくら仲間優先を掲げるこの組織でも、それは仕方ない決断だろう。

守屋「どうしたらいいと思う?…友香」

志田「…」

コンコンッ

守屋「はい、どうぞ」

小林「失礼します…」

志田「あれ、どうしたの?」

小林「あの、司令官からお二人を呼んでくるようにと言われまして…」

守屋「わかった、すぐ行_」

グゥー…

守屋「…」

志田「…ごめん、食堂寄っていい?」















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いつも読んでくださってありがとうございます!
 久しぶりの欅軍になります。
個人的に少し半端なところで終わってしまった感じがあるので、早めに投稿できればと思います。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!