平手said
急いで理佐の部屋に向かい、本棚から欅国憲法書を取り出す。
志田「727…727…ここだ」
守屋「これ、カード?」
志田「カードキーだね」
メモ通り727ページを開くと、カードが貼り付けられていた。
メモの書き方からして、このカードキーは机の二段目のもの。
カードキーを差し込むと、その隣の液晶画面が点灯した。
志田「1…1…2…3」
ピピッ…カチャッ
平手「開いたね」
引き出しを引いてみると、一番上には【ひらがな国 勢力拡大傾向 報告書】と書かれた資料があった。
平手「これは…」
守屋「これ、なに?」
平手「理佐に単独で調べてもらってた資料だ」
志田「ひらがな国勢力拡大傾向?」
平手「前にひらがな国内で怪しい動きが見られるって言う報告が来て、諜報部で調べてもらおうと思ってたんだけどね」
報告が来たのは僅か半年前。
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平手『…てことで、これを諜報部で調べて欲しい』
長濱『…』
平手『どの国にも前例がない、報告は急がないよ』
諜報部で調査員を派遣して欲しいという話をしていると、ねるは資料を机の上に置いた。
長濱『…てっちゃん』
平手『ん?』
長濱『…この件は、個人で動いた方が良いかもしれん』
平手『と、言うと?』
長濱『ひらがな国が不穏な動きをしてるってことは諜報部でも話題になってる、勢力の拡大スピードからみて周りの国から人を引き抜いてるとしたら…』
平手『この国から引き抜かれることもないわけでもない、と』
長濱『そう、だからこの情報は出来るだけ知らせる人を限定した方が良いと思う』
平手『…分かった』
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ねるは諜報部一筋の情報のプロ。
この前みたいに命を狙われたことも一度や二度じゃない。
だから、ねるの直感は侮れない。
他国の情報を扱うトップシークレットだから、理佐を担当に任命した。
守屋「こんなこと言うのはなんだけど、一国の勢力が拡大することってごく自然なことじゃない?」
平手「そう、でもこれの場合は拡大することじゃなくて、拡大の仕方が不自然だった」
守屋「拡大の仕方…」
平手「どうも周囲の国に勝って吸収してるとかじゃなくて、個々の国から抜けてひらがな国に入ってるらしいんだ」
志田「つまり?」
守屋「戦いに負けたから従ってるわけじゃなくて、自分の意思で国を抜けてひらがな国に加勢してるってこと」
志田「なるほど…」
それ自体はまれにみられることで、それだけでは不自然とはいえない。
問題は…
平手「その数が多すぎる…」
守屋「…」
国内に周囲の国の情報を持つ人を大勢引き入れていることになる。
その情報を元にその国を潰すことは難しいことではない。
その結果、あり得ないスピードでの領土・勢力の拡大に繋がる…
平手「…一個前の報告書でね、理佐に早急にこの国の攻撃機能と防御機能の強化をするべきだって言われたんだ」
守屋「…ま、さか」
守屋said
志田「茜?」
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平手「どうかした?」
守屋「理佐は、『もう二度と階級章を使うことはない、残りの仕事は愛佳にやらせろ』って…」
志田「なっ…」
平手「…」
恐らく、というかこれは十中八九。
志田「まさか…自分でひらがな国を終わらそうとしてる…?」
守屋「そんな…」
平手「『もう二度と階級章は使わない』…命を懸けるってことか…」
カタッ
平手「!」
志田「!」
守屋「あ、葵…」
後ろから物音が聞こえた。
振り向くと、開けっ放しの理佐の部屋のドアから葵が去る姿が見えて、慌てて追いかける。
しまった。
時計は訓練の終了時刻をとうに過ぎていた。
葵と理佐は一緒に住んでいる。
訓練が終われば葵はここに帰ってくる。
そんなの当然の話なのに。
忘れていた。
志田「葵…どこから聞いて_」
原田「聞いてないよ、何も」
守屋「…」
平手「葵…」
原田「何もっ…聞いてない…」
こちらに背を向けて自分の部屋を片している葵の声は、震えていた。
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いつも読んでくださってありがとうございます!
そろそろ【1】の方も投稿しなければならないかな、と思っています。
欅軍は話があっちこっち行って非常に読みにくいかと思いますが、【1】【2】を目印に判断していただければと思います。
明日は日常小説を投稿いたします。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!