渡邉said

取材以外に久々に二人きりになったのはいいが、特に何を話すと言うわけでもなく。

私は勉強のためにファッション誌を読み、てちはスマホをいじっていたけど今は手を止めている。

平手「…ねえ理佐」

渡邉「ん?」

私のベッドの上でゴロゴロしていたてちがピタッと動きを止めた。

平手「頭痛が痛い」

てちは最近この言い回しにはまっている。

お腹が空腹だとか、後で後悔しただとか。

意識して言っているのか気づいていないのか分からないときもあるけど。

渡邉「…」

平手「…」

渡邉「…いつから?」

平手「…朝から」

目を合わせようとしない。

渡邉「いつの?」

平手「き、今日…」

渡邉「…」



渡邉「はい、計って」

平手「ん…」

とはいえただふざけて言っている訳ではないらしい。

言われてみればなんとなくしんどそうに見えなくもない。

布団の中に入るように促すと、もぞもぞと掛け布団の中に潜り込んでいった。

渡邉「いつから?」

平手「んー…分かんない」

渡邉「そう」

頭を撫でると気持ち良さそうに目を閉じる。

触った感じはそんなに高熱ではなさそう。

でも少し熱い気がする。

渡邉「ちょっと待っててね」

毛布を持ってこよう。

時期的に寒くなってきているし、もしこれから熱が上がるとしたら寒気も出る。

疲れもあるだろうし、今日はもう泊まらせようか。

渡邉「どう?鳴っ…た?」

平手「すー…」

…寝てる。

渡邉「ちょっと失礼…」

起こさないように脇から体温計を取り出す。

渡邉「…6.9度かー」

判断し難い体温だな。

元々平熱が高ければ珍しいことではないだろう。

渡邉「まあいっか」

このまま寝かせておこう。

とりあえず冷えピタと風邪薬は後回しにするとして、隣にお邪魔する。

渡邉「ちょっと熱い…」

平手「ん~…」

なんとなく髪を撫でると、もぞもぞとすり寄ってきた。

渡邉「可愛い…」

横になったのはいいが、まだ夕方と呼ぶには早い時間。

流石にまだ眠くはない。

てちを胸元に抱き寄せ、越しにスマホを弄ることにした。

くっつきすぎて、腕というかもはや肩を枕にしている。



平手「理佐…」

渡邉「ん?」

平手「暑い…」

しばらくすると身体の熱と怠さで目が覚めたらしい。

汗もかいていて、額に前髪が張り付いている。

渡邉「ちょっと起きれる?」

平手「ん…」

前髪をあげて冷えピタを貼る。

めまいを感じているのか、その最中もずっと目は閉じたまま。

渡邉「お腹空いてない?」

平手「空いてる…」

渡邉「ゼリー持ってくるね、薬飲まなきゃ_うわっ」

冷蔵庫にゼリーを取りに立ち上がろうとすると、急に腕を引っ張られた。

平手「…空いてない」

渡邉「薬、嫌?」

平手「……ぃや…」

渡邉「…分かった、薬は飲まなくていいからゼリーだけ食べて?」

平手「うん…」

渡邉「明日の朝に下がってなかったら飲んでもらうけど」

平手「…え」

渡邉「明後日は仕事でしょ、下げないと」

平手「はい…」

渡邉「いい子」

頭を撫でてゼリーを取りに行く。

ブドウとオレンジとモモどれがいいか。

好み聞いておけばよかったな。

渡邉「…ブドウにするか」



渡邉「おまたせー、あ…」

平手「すー…」

寝てる。

仕方ない。

ゼリーを取りに行く間にでも寝ちゃうくらいしんどいってことだよね。

夕飯の時間にしてもまだ早いし。

枕元の棚に置いておくことに。

渡邉「…」

私も少し横になろうかな。

平手「んーー…ん…」

てちを起こさないようにゆっくり布団に入ると、またすり寄ってきた。

次はしっかりと私の服の端を掴んでいる。

まるで、離れないでほしいと言っているかのように。

…起きたら帰るって言いそうだな。

帰す訳ないけどね。










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てちりさです。
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