渡邉said

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守屋『理佐!!しっかり!!』

志田『理佐!!_理佐!?_理佐ぁっ!!』

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渡邉「っ!」

長濱「ん…どうしたと…?」

起きたときに身震いしてしまったからか、私に寄りかかって寝ていたねるを起こしてしまったようだ。

渡邉「いや、なんでもない…」

長濱「嘘、泣いてるやん」

渡邉「あ…」

長濱「葵ちゃんのこと?」 

渡邉「まあ、ちょっとね…」

思い出してたのは怪我したときの事だけど、まあ間違ってはないし。

あのときから、この季節に葵と離れて寝る、なんて事はなかった。

だから、ちゃんと寝れてるかな、泣いてないかなって心配になる。

長濱「ねえ理佐」

渡邉「ん?」

長濱「ずっと聞いてみたかったんやけど」

渡邉「何?」

長濱「なんであのとき理佐は、わざと自分が死ぬことを暗号にしたん?」

きっと、葵を庇ったあのときのことを言っているのだろう。

長濱「わざわざ暗号にせんと、葵ちゃんが基地に来れば分かることやん?」

渡邉「んー」

あのときのことを思い出す。

確かに葵を基地に行き私が動けないと伝われば、危険な状態だと言うことはすぐに分かる。

敵が持っていた武器はもう判明していたのだから。

背中の激痛に耐えながら必死に考えた。

どうやったら早く葵をこの場から立ち去らせることができるか。

長濱「やっぱり助けてほしかった?」

渡邉「…いや、あのときは本当に死ぬ覚悟はしてた、色々理由はあるけど、一番は葵に自分が死ぬところを見せたくなかったからかな…」

長濱「…」

渡邉「なんで階級手帳を渡したのかは自分でもよく分からない、でも、あのときは思いついた方法がそれしかなかった」

長濱「でも今こうして生きとる」 

渡邉「うん…葵と、梨加ちゃんのおかげ」

本当に梨加ちゃんには感謝してもしきれない。

私の命を救ってくれた、命の恩人だ。

長濱「とりあえず、葵ちゃんのために早く帰らんとね」

渡邉「…うん」



翌日

スパイ「_手に入れた情報はこれで全部です」

長濱「了解、引き続きお願いね」

スパイ「はい、それでは失礼します」

派遣しているスパイとの情報交換が終わった。

乃木国の秘境、人は誰一人として住んでいない、崖に囲まれた場所。

乃木国軍の幹部はもちろん、住民すら近づかないこの場所は、情報交換にはピッタリだ。

長濱「よし全部ある、帰ろう」

交換される情報は全て暗号化してある。

すぐにでも解読はできるだろうが、かなりの量があるため基地に戻ってからするらしい。

渡邉「織田、周辺に異常は?」

織田「ありません」

渡邉「よし、じゃあもと来た道を戻ろうか」

切り立った崖と崖の間を通り、チラホラと緑が見え始めた頃だった。

カチャ…

渡邉「…!?」

今の音からして…後ろ!

渡邉「隠れろ!」

それぞれ、近くの大きな岩に身を隠す_

織田「うわっ!」

渡邉「!?」

隠れようとした織田がバランスを崩し倒れこむように地面に叩きつけられた。

渡邉「織田!?」

織田「大丈夫です、これが…」

織田が差し出したのは小さな矢。

この大きさは…

渡邉「吹き矢か…」

スパイと別れてからのこのスピード…

スパイの存在がバレている?

それに吹き矢。

対して深い傷を与えられない小さい武器だ。

先端部に毒でも塗って動けなくしてとらえようというのか。

岩と崖の隙間から前方の敵を確認する。

…いるな。

渡邉「敵は八_!?」

長濱「理佐?」

渡邉「あの軍服…」

長濱「え…!」

齋藤「あれは…ひらがな国…」

世界三大国の一つであり三つの国の中で一番小さい国、ひらがな国。

欅国とは終争協定を結んでいて、今は仲良くも悪くもない国だ。

織田「まさか乃木国と一緒に欅国を_」

齋藤「いや、それはないだろう」

一瞬頭をよぎった最悪の事態。

でもそれは齋藤の一言で消え去った。

齋藤「前に乃木国でひらがな国のスパイが見つかって結んでいた協定が全て破棄になったらしいし」

長濱「でも必要なものをほとんど乃木国からの輸入に頼っていたひらがな国にとって、乃木国との貿易協定が無くなったのは大きな痛手」

渡邉「つまり、乃木国と対立している欅国を痛めつけて、また乃木国と協定を結びたいってわけか」

そんな、終争協定を無視してまで。

渡邉「とりあえずここに留まるのは危険だ、ひとまずどこかに身を隠そう」



齋藤「副隊長、あそこに崖と崖の間に空間ができている場所があります」

渡邉「よし、織田と齋藤は先に行って、あと援護を頼む」
齋藤「了解」
織田と齋藤がいる岩と私とねるがいる岩は少し距離がある。

隠れる場所があるのは織田と齋藤がいる方向。

ねるは防衛任務の経験が浅い。

できるだけ安全に移動するには援護をしてもらう方がいいだろう。

バーン!

!?

渡邉「これは…銃声?」

いや、違う…

渡邉「手榴弾だ…」

ミシッ

渡邉「?」

コロコロ…

上から石が落ちてきた。

崖の…上…?

渡邉「まさか!っ!」

上を見ると、どんどん石が落ちてきている。

ドッ…

頭上の崖が崩れ、沢山の大きな岩が落ちてくる。

ねるの手を引っ張り走る。

これはただの落石じゃない…

きっと崖の私たちの頭上の部分を爆発させたんだ!

ダメだ…!

間に合わない!

咄嗟にねるの頭を抱えて倒れこむ。

せめて、ねるだけは_

ゴッ…

「副隊長ーー…!_」








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いつも読んでくださってありがとうございます!
一ヶ月弱空いてしまいすみませんでした。
てちりさ小説もまだ投稿できていませんね。
本当に近々投稿するので、読んでいだだければとおもいます。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!