原田said

真っ暗な中、ふと目が覚めた。

原田「…」

やっぱり、眠れない。

毎年この時期は熟睡できなくなる。

今日のように目が覚めるときもあれば、無意識に泣いてて理佐に起こされる時もある。

いつもなら理佐が起きて抱きしめてくれるけど、あかねんにそこまでしてもらうわけにはいかない。

原田「少し起きよう…」

静かに寝室を出てリビングのソファーに座った。

原田「理佐…」

理佐に会いたい。

任務が終わり帰ってくるのは明後日。

早く、帰ってきてほしい。

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原田『理佐!おはよー!』

渡邉『あ、葵おはよう』

私と理佐は生まれたときからお隣同士で、一人っ子の私にとっては理佐はお姉ちゃんみたいな存在。

挨拶すると優しい笑顔で返してくれる。

その笑顔が私は大好きだった。

原田『理佐、今日も仕事?』

渡邉『うん、ごめんね、でも明日は遊べるよ』

原田『本当に!?やったー!!』

渡邉『ふふっ、じゃ、いってきます』

原田『いってらっしゃーい!!』

この国は中学校卒業の後は二つの進学方法がある。

国立の高校に進むか、欅軍訓練学校に進むか。

欅軍訓練学校は、将来欅国の防衛に徹し尽力する優秀な軍隊員を育てるために作られた。

志望する人が少ないため倍率は低いが試験がとても難しく、合格者がいない年もあるほど。

その時理佐が通ったのは後者、欅軍訓練学校だ。

そのときはもう卒業していたけど。

そんなこと、小学校低学年の私は知るわけもなく。

ただ優しいお姉ちゃんに会えることだけが嬉しかった。

そんな矢先_

『敵が国内に進撃中!国民の皆さんは避難所に避難してください!』

こんな国内放送が響いた。

小学校では瞬く間にサイレンに驚いて泣く子、なんのことか分からず呆然としている子、そして必死に子供達を誘導している小学校の先生たちで混乱した。

先生『皆!こっちだよ!』

あとから聞いた話、国内に入ってきた敵は国に不満を持ち反乱を起こした人たちだったらしい。

つまり、元々は欅国の国民。

だから、一般人は一切傷つけないはずだった。

敵『おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

しかし、何故か逃げていた人を切りつけ始めた。

味方に大声で止めろと叫ばれてもその人はやめようとしない。

ふと、目が合った。

怖かった。

怖くて、足がすくんで動けなくなった。

その男がこっちに向かってきた。

大きな刃物を振りかざしながら。

先生『葵ちゃん_!』

ザッ…

暖かいなにかに包まれて、そのまま地面に倒れこんだ。

渡邉『ぐっ…があ!』

原田『理…佐…?』

渡邉『…っ、やめろ!!この子は一般人だぞ!!』

聞いたこともないような大声で叫んだ。

渡邉『先生!早く行って下さい!』

今度は先生に向かって叫んだ。

先生は慌ててまた皆を連れて走っていった。

原田『理佐っ…っ…』

渡邉『葵、もう大丈夫、怖かったね』

原田『理佐…頭…血が…』

理佐の頭からは血が出ていて、頬を伝って地面に落ちる。

渡邉『大丈夫、私は平気だよ』

敵『お前な!!』

敵を見ると男が自分の仲間に取り押さえられていた。

敵『退くぞ!』

敵は男を取り押さえながらもと来た方向に逃げていった。



原田『理佐…?』

渡邉『ぐっ…はぁ…はぁ……』

理佐は私を抱きしめていた腕を離し、道路に横になった。

苦しそうだった。

するとおもむろに二つに折り畳まれた物を出し、片面を指でなぞり始めた。

渡邉『葵…』

原田『…っ…?』

渡邉『あそこに見える…大きな建物あるでしょ…?』

原田『うんっ…』

理佐が指差したのは欅軍基地。

渡邉『あそこにね…てちと愛佳と…茜と…友香がいるの…』

原田『皆…あそこにいるの?』

渡邉『そう、それでね…今からそこに行って…愛佳に…これをっ…渡してきてくれる…?』

原田『これ?』

渡されたのはさっき理佐が指でなぞっていた物。

それは、欅軍階級手帳だったんだ。

原田『理佐は?行かないの?』

渡邉『ちょっと…疲れちゃったから…少し休んでから行くね…』

原田『やだ!理佐と一緒がいい!』

渡邉『葵、お願い言うことを聞いて…私は葵のこと…嫌いになりたくないの…』

原田『嫌い?理佐は葵のこと嫌いなの?』

渡邉『ううん…好きだよ…でも…早く行かないと…嫌いになっちゃうかも…』

原田『やだ!』

渡邉『じゃあ、行けるよね…?』

原田『うん!行く!』

私は欅軍基地に向かって走った。

理佐が命の危険にさらされていることも分からずに。

ただ、理佐に嫌われたくない一心だった。

そこから基地までは結構な距離がある。

でも私が走ったのは保育園でたまに通る散歩コース。

いつも通るコースより大幅に短縮されるそのコースを通ったのはたまたまだった。

今思えば小学生低学年であんな距離を走れたのは凄いと思う。

やっと着いて、基地の裏門に飛び込んだ。

すると、自分の存在に気づいた隊員が話しかけてきた。

隊員『どうしたのかな?』

原田『あ…っ…』

男の人だった。

さっきの人も男の人。

さっきのことを思い出してまた涙が出てきた。

性別が同じってだけで怖くなった。

隊員『避難所はここじゃないよ、こんなところに来ちゃダメだ』

原田『や、いや…』

菅井『葵?』

原田『っ…っ…ゆっかぁー!』

私に気づいたゆっかーが駆け寄ってきた。

原田『うわあぁぁぁ!』

菅井『よしよし、怖かったね』

原田『これっ…これ理佐が…愛佳に渡してって…』

菅井『!これ…』

理佐から預かった物を見せるとゆっかーは目を見開いた。

菅井『高橋二等兵』

高橋『はい』

菅井『これを至急隊長に届けてください、そして渡邉少佐の物だとお伝えください』

高橋『了解!』

高橋と呼ばれた男の人はさっきの物を持って建物の中に走っていった。

菅井『葵、中に行こっか』

それを聞いて、泣き疲れてしまった私はゆっかーの腕の中で眠ってしまった。

起きたときに目の当たりにすることになる地獄があるとも知らずに_

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志田said

志田「ん…?」

真夜中に部屋に射し込む光で目が覚めた。

リビングかららしい。 

横で寝ているてちを起こさないようにリビングに向かう。

そっと覗いてみると、葵がソファーに座っていた。

志田「葵?」

原田「愛佳…」

志田「眠れない?」

原田「うん…」

葵の隣に座って壁にかかっている時計を見た。

二時二十三分。

起きるには早すぎる時間だ。

原田「理佐…」

志田「…」

理佐のことが大好きな葵。

いつも理佐の後ろにくっついている。

志田「理佐のこと、心配?」

原田「心配じゃなくて…」

志田「寂しい?」

原田「…うん」

志田「そっかそっか」

この時期だ。

トラウマのこともあるだろう。

あれからずっと、理佐は葵の側にいた。

葵が両親の反対を押しきって欅軍訓練学校に入ったときも、理佐は無理に反対することなく受け入れた。

理佐自身も実家通いから寮に切り替えて、二人で住んでいる。

理佐は、葵の精神的な支えでもあるんだ。

そんな二人を見てると、私もあのときのことを思い出してしまう。











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いつも読んでくださってありがとうございます!
    突然ですが、これから夜の投稿になることがあるかもしれません。
個人的には朝に投稿したいので、できるだけそうしようと思っていますが、どうしてもできないときは夜に投稿します。
勝手ではありますが、よろしくお願いします。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!