守屋said

守屋「え…」

突き飛ばされてすぐ、上から銃声がした。

愛佳の声が聞こえて振り向くと、左腕を貫かれていた。

守屋「あ…愛佳っ…」

ドーン!!

守屋「っ!」

途端にあのときの状況がフラッシュバックしてくる。

友香に突き飛ばされて、すぐに爆発音がして、気づいたら友香が血だらけになって倒れてて…

愛佳に突き飛ばされて、すぐに銃声と爆発音がして、愛佳の左腕が撃ち抜かれてて…

守屋「嫌、嫌、嫌だ…嫌だ!」

志田「茜_ーーー!」

愛佳が何か言ってるのに聞き取れない。

なのに…

心理撹乱士「ほら、言ったこっちゃない、あなたがいれば皆が不幸になるんだ」

敵の声は鮮明に聞き取れる。

嫌だ…

心理撹乱士「あなたはこっち側の人間だ、望んでいるわけでもないのに共にいる人を傷つけてしまうその気持ち、私になら理解できる」

志田「黙れ!…茜は渡さない!」

心理撹乱士「今のあなたが言っても説得力無いですよ」

志田「っ…」

私はどっち側の人間_

?「随分と笑わせてくれるな…」

心理撹乱士「!?」

私たちと心理撹乱士の間に現れた人。

それは…

?「茜と一緒にいると傷つく?そんなんどうってことはない、私たちが最も傷つくのはそのことで茜が孤独になったときだ」

心理撹乱士「お、お前は…《白銀》…」

白い外套を着ている、私たちが最も頼りにしている人だ。

守屋「理佐…」

渡邉「ごめん、遅くなった」

志田「理佐…いっ…」

渡邉「あー、梨加ちゃん、愛佳と上村二等兵をお願い」

渡辺「分かった」

理佐は心理撹乱士に向かって行った。

敵は逃げ回って建物の中に駆け込んでいったから戦わずして勝ったようだけれど。

梨加ちゃんも…

渡辺「あかねん、手伝って」

守屋「う、うん」

渡辺「友香ちゃんの側にはあかねんが必要なんだからね、私たちにとっても」

守屋「っ…うんっ…」



渡邉said

案外広がってるもんだな《白銀》…

渡邉「梨加ちゃん、上村二等兵どう?」

渡辺「応急処置のお陰で安定してるよ、二、三日入院することにはなるだろうけど」

渡邉「そっか、小林少佐愛佳をお願いできる?」

小林「はい」



守屋「愛佳、ごめん…」

茜が愛佳の腕の傷を押さえてる。

志田「っ…気にしないで、茜が無事で良かったよ」

小林「守屋大佐、代わります」

守屋「あ、ありがとう…」

志田「いででででで!」

小林「あっ…すみません…」

渡邉「貫通してんじゃん、しばらく任務は無理じゃない?」

志田「えー」

渡邉「帰ったらちゃんと梨加ちゃんに診てもらってね」

志田「訓練は出ていい?」

渡邉「良いわけないでしょ!」

志田「そんなー…」

渡邉「小林少佐の手榴弾の腕前もなかなかだったよ」

小林「っ…ありがとうございます…」

遠目からでも屋上に銃を持った敵がいたのは見えてた。

でも、今持っている銃じゃ届かなくて。

そのとき小林少佐が投げた手榴弾は敵に一直線だった。

志田「え!?あれ理佐じゃないの!?」

渡邉「うん」

志田「医療部員であんな正確に投げれるなんて…」

渡邉「小林少佐はもともと防衛部の訓練兵だったからね、一通りの基礎はできてるよ」

志田「へー」

小林「っ…ふふ」

あ、照れてる。

渡邉「てちに憧れてたんだよね?」

これは梨加ちゃんから聞いた情報。

この前てちに言ったら照れてた。

小林「…はい」

志田「へー!」

小林「はい、できました」

渡邉「よし、帰ろう」



平手said

今日の日中、葵が司令官室に駆け込んできた。

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報告書の確認も終わり、のんびりとコーヒーを飲んでいると…

バン!

平手『うお!って葵か…どうしたの?』

原田『これっ…愛佳が…』

ひどく慌てながら駆け込んできた葵は泣きそうな顔をして何かを差し出してきた。

平手『階級章…』

なるほど、泣きそうな理由はこれか。

きっと愛佳が託したんだろう。

中に書いている暗号を理解できるのは理佐だけだ。

今は梨加ちゃんに資料を渡しに行っている。

平手『葵、医療部長室行こう』

コンコンッ

渡辺『はーい』

ガチャ

平手『理佐、いる?』

渡邉『いるよー、って葵もいるじゃん、任務は?』

原田『理佐!これっ…』

渡邉『階級章?愛佳の…』
急に理佐の顔つきが真剣になった。

渡邉『………』

あの暗号を見ながらブツブツと呟いている。

明らかに穏やかではない単語が出てきている。

渡邉『てち、非常事態みたい、怪我人もいて後援が必要』

平手『非常事態…?』

ガチャ!

小池『渡辺部長!』

入ってきたのは医療部員小池一等兵。

確か、小池一等兵も任務だったはずだが。

渡辺『どうしたの?』

小池『これ、志田大佐から預かりました』

平手『!』

渡邉『!』

それはメモ帳をちぎったような紙。

そうか…

きっと今向こうでは緊急事態が起きている。

防衛部長の理佐と医療部長の梨加ちゃんが一緒にいるとは限らない。

それなら、後援の要請が防衛部と医療部別々に届いたのも頷ける。

渡辺『怪我人発生の可能性有り…医療部員要請…』

平手『怪我人…』

渡邉『小池一等兵、向こうの状況は』

小池『はい、敵の陣地近くで様子を窺っていたとき、敵軍から偵察していた上村二等兵を捕らえたと矢文があり…』

渡邉『上村二等兵か…』

平手『どうしたの?』

渡邉『いや…上村二等兵は愛佳が特に可愛がってるから、冷静だといいけど』

平手『なるほど』

愛佳なら助けに行くだろう。

平手『続けて』

小池『隊を撤退させて志田大佐と守屋大佐、小林少佐の三人で奪還すると…』

平手『そうか…』

つまり、上村二等兵が拷問にかけられている可能性があり、怪我をしているかもしれないということか…

渡邉『なら、後援は少ない方がいいね、私が行くよ』

平手『え?でも』

渡邉『四人のうち上村二等兵は怪我、茜が心理撹乱士の術にはまっている可能性だってある、小林少佐は少佐階級って言っても医療部員だ、防衛任務に慣れてる訳じゃない』

平手『それで人数を少なくってなれば防衛部の大佐階級の理佐が得策、ってことか』

渡邉『そう』

平手『分かった』

渡辺『じゃあ、医療部員は私でいい?』

平手『え、いいの?』

渡辺『仕事もほとんど終わってるし、大丈夫』

平手『よし、じゃ二人とも、よろしく』

渡邉『了解』

渡辺『了解』



渡邉said

渡邉『梨加ちゃん、準備にどれくらいかかる?』

渡辺『そんなにかからないよ、五分ぐらい』

渡邉『分かった、終わり次第出発しよう』

渡辺『うん』

必要なもの…とりあえず武器を揃えるか。

原田『理佐…』

渡邉『!』

また不安にさせちゃったかな…

渡邉『大丈夫、ちゃんと帰ってくるから』

原田『でも…』

渡邉『てちと一緒に待ってて?』

原田『うん…っ…』

渡邉『てち、葵をよろしくね』

平手『任せて、理佐も気をつけて』

渡邉『行ってきます』

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いつも読んでくださってありがとうございます!
    これで内容的にはやっと前投稿してた分の半分は終わりましたかね。
どうやらこの小説、自分が思ってる以上に好評みたいなので嬉しいです。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!