平手said
平手「諜報部長から緊急報告書が来た、今日二人が参加する作戦の敵の詳細について」
志田「!」
守屋「!」
通常任務の前に班長を呼び出してミーティングなんかしない。
でも今回は念のために、特に茜には言っておかないといけない。
平手「副隊長」
渡邉「はい」
理佐が二人の前に諜報部長、もといねるから提出された緊急報告書を置く。
志田「え」
守屋「…!」
上から読んでいき、ある段落で二人の表情が強ばった。
敵兵の種類と人数が書いてある欄。
そこに〔心理撹乱士 一名〕の文字がある。
志田「これって…」
平手「そう、友香のときと同じ…」
志田「同一人物?」
平手「恐らく…」
守屋「…」
志田「茜…」
茜がこうなるのは無理もない。
想定の範囲内だ。
平手「ただ、あのときから数年経ってるのに一人しかいないっていうは考えづらい、実戦には出していなくても育成はしているだろうという認識でいた方がいいかもしれない」
平手「守屋」
守屋「!」
平手「一つ、今ここで決めて欲しいことがある」
守屋「…」
平手「さっきも言った通り今日相手にする〔心理撹乱士〕はあのときと同一人物の可能性が高い、その場合に理性を保てる自信はある?」
守屋「…」
平手「友香をあんなことにした敵を見て、暴走しない自信はあるの?」
志田「ちょっ…てち!」
愛佳が言いたいことは分かってる。
熱くなりやすい茜にしかも冷静に対処することを求められる今、こんなストレートな聞き方をするのはあまり勧められることじゃない。
守屋「…あるよ」
平手「本当に?」
守屋「本当…」
平手「…」
守屋「ねぇ!行かせてよ!!」
志田「茜!」
茜が机を叩いて声を荒げる。
愛佳が腕を掴んで、なんとか落ち着かせようとする。
平手「…」
個人的に言うなら、行かせてあげたい。
でも_
平手「…」
渡邉「茜」
守屋「…」
渡邉「怪我しない、って約束して?」
平手「…」
守屋「…!」
志田「!」
てちの斜め後ろに立っている理佐が、声を発した。
渡邉「もちろんてちだって行って欲しいんだよ、でもこのことは、軍のトップとして言えることじゃない」
平手「…」
渡邉「だから、行くなら絶対怪我をしないって約束して欲しい」
守屋「…」
そっか、いつも一緒にいるから忘れてたけど、てちは軍の最高司令官なんだ。
渡邉「もし何かあったら愛佳よろしくね」
志田「もちろん」
平手「二人とも_」
渡邉said
二人が司令官室から出ていくと、沈黙が訪れる。
渡邉「…良かったの?友香の名前出しちゃって」
平手「…うん」
渡邉「冷静に判断することを考えると…」
平手「今の茜にそれは求めてないよ、無事に帰ってきてもらうことが第一…友香のためにね」
志田said
志田「茜、大丈夫?」
守屋「うん…ふぅー…」
志田「緊張してる?」
守屋「少しね…」
敵が潜伏しているとみられる場所の近くまで来た。
ここから先は慎重に行動しなければいけない。
とりあえずは一人、偵察に行かせている。
その二等兵を待つ間、司令官室を出る直前に言われたことを思い出す。
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渡邉『もし何かあったら愛佳よろしくね』
志田『もちろん』
部屋を出ようと立ち上がると不意に話しかけられた。
渡邉『もし心理撹乱士が育成されていて完全出ないまま実戦に出されたとしたら、厄介だよ』
志田『分かってる、茜のことも任せて』
平手『…二人とも、帰ってきたら話がある』
志田『話?』
平手『…』
横目で理佐をチラッと見た。
理佐は頷いた。
渡邉『友香のこと、前から梨加ちゃんから言われてたんだけどタイミング合わなくて』
平手『皆で話し合いたいから無事で戻ってきてね』
志田『うん』
渡邉『愛佳はその前にさっきの仕返しかな』
志田『えっ、ガチで勘弁して』
理佐のいじりで少し空気が和む。
平手『茜』
守屋『ん?』
平手『絶対…無理だけはしないで』
守屋『大丈夫』
平手『いってらっしゃい…』
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志田「…茜」
守屋「ん?」
志田「さっさと終わして早く帰ろう?」
守屋「…うん」
茜の表情が和らいだ、と思ったそのとき。
ドーン!
志田「!!」
守屋「!!」
進行方向の岩場が爆発した。
思わず身構える。
恐らく、敵の攻撃によって砕けたのだろう。
最低でもすぐそこまでは射程内だということ。
ヤバイな…
志田「くっそ!」
守屋「岩壁の間を盾で塞ぐ?」
志田「上村がまだ戻ってきてない」
偵察に行かせた二等兵の上村が戻ってきていないのだ。
このまま岩壁の間を塞いでしまえば上村を見捨てることになってしまう_
志田「米谷中佐!」
米谷「はい」
志田「盾を集められるだけ集めろ、あと撤退準備しとけ」
米谷「了解です」
守屋「愛佳!?」
なんで撤退準備!?って顔してる。
志田「茜、これは友香の敵討ちの前に任務、それに向こうには心理撹乱士がいる、一筋縄ではいかないんだよ」
守屋「分かってるよ!でも_」
志田「分かってない!!」
思わず胸ぐらを掴んだ。
ごめん、茜。
志田「私達は班長だよ!教官なんだよ!今私達は相手の攻撃の射程内にいるかもしれないんだよ!!」
守屋「っ…」
志田「ごめん…茜が友香の仇を取りたいって思ってることは知ってるし、私も同じように思ってるよ…」
てちも、理佐も、葵も、同じ気持ちのはず。
志田「でも、友香のことを考え過ぎて部下が怪我をするのは、嫌なんだ…」
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いつも読んでくださってありがとうございます!
未だに新しい環境に慣れず悪戦苦闘しております。
そのため投稿が遅くなっておりますが、少しずつ進めております。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!