志田said

ジャー…

志田「ん…?」

水が出しっ放しにされている音で目が覚めた。

昨日の夜に蛇口を閉め忘れた?

いや、それだったらさすがに昨日の夜気づくでしょ。

寝起きで働かない頭で考える。

志田「んー…はや」

枕元のスマホの電源を付けるとアラームを設定した時間の二時間も前だった。

外もまだ暗いまま。

さて、水道の水を止めよう。

もったいないし。

志田「んー!…ん?」

一つ伸びをして洗面所の方向を見ると電気が点いている。

そして、バシャバシャと水遊びをしているときのような音が聞こえた。

もしや、と隣のベットを見るとホテルの同室のはずの理佐がいない。

志田「あれ、理佐?」

急いでベットから降りて洗面所に向かう。

志田「理佐?」

渡邉「あ…愛佳、ごめん起こしちゃった…?」

志田「ううん、大丈夫?」

理佐は洗面台に手をついていて、息が浅い。

苦しそうだ。

顔と前髪が濡れていて、きっと顔を洗ったんだろう。

渡邉「大丈夫…なんともない…」

志田「分かった、だけど一回こっち来て」

蛇口を閉めて、足下が安定しない理佐を支えながら寝室に戻ってベットに座らせた。

志田「ほらやっぱり熱あるじゃん」

渡邉「…」

ベットに座らせて額を触ってみると、予想通り熱が出ていた。

しかもそこそこ高い。

志田「今日は休_」

渡邉「やだ…」

否定早いな。

志田「今日の予定は?」

渡邉「雑誌のインタビュー…と、レッスン…」

志田「インタビューはどれくらいかかりそう?」

渡邉「わかんないけど昼までは終わるだろうって…」

昼までか…

結構長いな。

体温計が無いから詳しい数値は分からないけど、触った感じ結構な高熱。

レッスンはさすがに厳しいだろう。

志田「じゃあスタッフさんに報告してレッスンは休ませてもらおう?」

渡邉「…」

志田「今日は振りの確認だけだし」

渡邉「…でも」

志田「途中で倒れたりしたら心配だからさ、ね?」

渡邉「…うん」

なんとか説得させてマネージャーさんに報告した。

理佐と一緒のインタビューを受けるはずの友香には様子を見てて欲しいとだけ伝えることにした。



守屋「愛佳ーお弁当来てるよー」

志田「はいはーい」

午前中の予定が終わって、同じ現場の茜とお昼ご飯の弁当を食べる。

志田「お」

スマホのランプが点滅してる。


菅井〔今終わって理佐を寮に帰したところだよー

            マネージャーさんが部屋の前まで送り届けたって〕

志田〔分かった

            ありがとー〕


守屋「ゆっかー?」

志田「うん、理佐を帰らせたって」

守屋「そっか、理佐が体調崩すなんて珍しいよね」

志田「大人しく寝てたらいいんだけど」

理佐の事だから寝てるとは思うけど、最近忙しそうでダンス確認できなくて焦ってたからな…

コンコンッ

守屋「はーい」

ガチャ

マネージャー「二人ともご飯食べたら準備しておいて、時間あるからゆっくりでいいけど」

志田「分かりましたー」

…理佐にはとりあえず連絡だけ入れておこう。



~~🎵

先生「はいストップ、では今から少し休憩です、水分補給をしっかりしてください」

レッスンが始まって一時間くらい経った。

休憩になって、スマホの通知を確認する。

志田「あれ…?」

守屋「どうしたの?」

志田「理佐から返事が返ってこない」

菅井「珍しいね」

昼にメッセージを送ったっきり返事がない。

既読すらつかない。

こんなに返信が遅いなんて普段ならあり得ない。

菅井「寝てるんじゃないかな?」

志田「…そうだね」

それもそうかと納得してスマホをしまった。



今日はこのまま寮に帰ることになっている。

結局あれから返信は来ないままだ。

菅井「後で理佐の様子見に行くね、理佐の部屋でいいんだよね?」

志田「うん、ありがとう」

レッスンは振りの確認だけだった為、早めに終わった。

分からないところはもんた辺りに聞けばいいだろうし。

まず自分の部屋に寄って、メイク落として、お風呂に入って、パジャマに着替えてから理佐の部屋に向かう。

コンコンッ

志田「理佐ー?入るよー?」

きっと寝てるだろうから声だけかけて中に入る。

志田「理佐ー…ってあれ?」

大人しく寝てると思ったらベットにいない。

床には帰って来て着替えたであろう服が無造作に散らばっている。

いつも整理整頓されている理佐の部屋を見ているから少し新鮮。

それらをまとめて洗濯機に入れると、どこからか聞いたことがあるような無いような音が聞こえてきた。

ピーピーピーピーピー…

志田「この音…」

もしかして。

慌てて台所に向かう。

志田「理佐っ!」

さっきの音はやっぱり冷蔵庫から発されていた。

そして案の定、冷蔵庫の扉が開けっ放しで、その近くに理佐が倒れている。

理佐の足下の床と着ているシャツは濡れ、近くには空のコップが転がっていた。

志田「理佐!理佐大丈夫!?」

渡邉「…まな、か…?」

理佐の顔は火照っていて呼吸は荒いし、声は掠れている。

渡邉「のど…み…ず……ちょ…い」

志田「水?ちょっと待ってて!」

恐らく喉が渇いて水を飲もうとしてたんだろう。

その証拠に、ミネラルウォーターのペットボトルの蓋が開けられたままになっている。

コップに注いだはいいが、それを飲む前に倒れてしまったんだ。

きっと冷蔵庫の扉は、ミネラルウォーターを取り出した時にきちんと閉まらなかった。

志田「はい、水だよ」

新しいコップにミネラルウォーターを注ぎ、理佐の上半身を抱き起こしてコップを口元に持っていく。

少しずつ、ゆっくりコップ二杯の水を飲み干した頃には、少しは意識が鮮明になっていた。

とはいえ、立ち歩くことはまだ無理そうなので肩を支えながらベットまで歩く。

濡れているシャツを着替えさせて、ようやく身体を横にさせることができた。

渡邉「まなか…ごめん……」

志田「気にしないで、身体楽にしてていいよ」

まだ、辛そう。

熱は多分朝より上がってるし、水分補給をしたとはいえ飲んだのは水二杯。

スポドリ欲しいな…

コンコンッ

志田「はーい」

菅井「愛佳ー?」

志田「入っていいよー」

ガッ

菅井「あっ!」

守屋「ちょっと友香!」

ガチャ 

茜もいたんだ。

っていうか、

志田「今押すと引く間違えたでしょ?」

菅井「え!?いや_」

守屋「うん、思いっきり」

菅井「ちょっとー言わないでよぉ…」

志田「いやバレバレですから」

っていうか間違えるの何回目…

寮に来る度間違えてるなこの人。

菅井「理佐体調どう?大丈夫…じゃないね」

友香は理佐の少しやつれた顔を見て判断したみたいだけど、さっきのことがあった手前大丈夫なわけがない。

守屋「愛佳これ」

志田「お、ありがと」

茜から受け取ったレジ袋の中には冷えピタやレトルトのお粥、ゼリー、スポーツドリンクが入っていた。

志田「助かるわー、スポドリ今丁度欲しいと思ってたところ」

守屋「良かった、じゃ戻ろうか」

菅井「そうだね、理佐ゆっくり休んでね?」

渡邉「…うん」



茜から受け取った物を冷蔵庫に入れ、スポドリ一本と冷えピタを持って理佐のところに戻るとぼーっと天井を見つめて眠そうだ。

志田「眠いなら寝ててもいいよ?」

渡邉「ううん…眠くない…」

志田「嘘、目閉じかけてるよ」

渡邉「…愛佳…」

志田「ん?」

渡邉「眠い…」

志田「…」

ですよね。

冷えピタだけ貼ろう。

汗で額に貼り付いた前髪を避けて、冷えピタを貼った。

渡邉「すー…すー…」

身動ぎしないってことは寝たのか。

汗凄い。

タオル持ってくればよかったかな。

志田「おやすみ」

まだ寝るには早い時間。

まだ熱は下がらない。

今日は、ここで寝ようかな。









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いつも読んでくださってありがとうございます!
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
    インフルエンザにかかっておりました。
あと何日か休養が必要なのですが、熱は大方下がったので寝ていれば何の問題もありません。
(立ち上がると少し頭痛と目眩がします。この記事を投稿し次第また寝ます。)
予防接種を受けていなかったのですが、受けたときよりも断然辛いです。
自業自得ですね。
予防接種の大切さを痛感したので、これも小説にするかもしれません。
インフルエンザや予防接種の話を書いている書き手さんが結構いましたが、二つまとめてみようかな?
またお知らせします。
    インフルエンザの話が長くなりました。
もなりさ小説です。
個人的にもなりさ小説の中で一番好きな小説です。
なぜかは自分でもよく分かりませんが。
実際は倒れたとき落としたコップが割れた音で人が来てくれましたが、なんとなく「寮だしなー…」ということで冷蔵庫にしました。
実際冷蔵庫の扉は開いていて音が鳴っていたので。
(朝はホテル、帰ってきたときは寮になっています。分かりにくかったらすみません。)
(最後解説?の文章、長すぎるので段落をつけました。)
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!