渡邉said

渡邉「!」

それは来週の仕事の打ち合わせが終わり、レッスン室に荷物を取りに戻ろうとしたときだった。

レッスン室の照明がついていることに気づいた。

「皆帰るとき消し忘れたのかな」なんて思いながら部屋の近くまで来ると、キュッキュッというシューズと床が擦れ合う音が聞こえてきた。

スマホで時間を確認すると、『20:58』と表示されていた。

渡邉「レッスンが終わってから三時間ぐらい経っているのにまだ誰か練習してるのかな?」

〔ガチャッ〕

長濱「あ、理佐」

渡邉「ねる」

そこにはねるがいた。

ん?でも、

渡邉「あれ?けやき坂のレッスンは?」

ねるは欅坂のレッスンが終わってすぐ、けやき坂のレッスンに行ったはずだった。

長濱「向こうが終わってからすぐ戻ってきた」

渡邉「また明日にすればいいのに」

長濱「まだ覚えてないところあるし、今日中に覚えておきたくて」

渡邉「ねるも明日から連休でしょ?なら…」

不意にねるの身体がフラついて倒れかかった。

渡邉「ちょっ…ねる!?」

後ろに倒れそうだったねるの腕を引っ張り、抱き寄せた。

渡邉「ねる!」

長濱「ごめん…理佐」

とりあえずねるを床に座らせる。

それでも自分の身体を支えてられないらしく、私にもたれかかってくる。

長濱「ごめん…なんか身体に力が入らなくて…」

ねるの身体が異様に熱い。

額を触ってみると明らかに平熱ではないと分かるぐらいの高熱が手に伝わってきた。

息も荒い。

渡邉「今日はもう休もう?」

力無く頷くねるを抱き抱えて、ねるの部屋に向かう。


〔ピピピピピ…〕

体温計が鳴った。

渡邉「何度?」

長濱「37.8…」

渡邉「そこそこあるね…これからもっと上がってきちゃうかもね」

長濱「えー…全然分かんなかったのに…」

体温計を受け取って毛布と布団をかけてあげる。

長濱「暑い…」

渡邉「これから寒気が来ると思うよ」

長濱「ううぅぅ…」

顔色が良くないな…

長濱「朝起きたときなんか寒いなとは思ったけど…」

渡邉「それだね…明日休みでしょ?ゆっくり休みなよ」

長濱「でもまだ覚えてないし…」

渡邉「今はレッスン忘れて身体を休めて?この熱も疲れから来てるのかもしれないし」

長濱「…うん……」


長濱「理佐…?」

渡邉「ん?どした?」

ねるが寝ているベットに腰掛けてスマホをいじってたらねるに呼ばれたからいじる手を止めてねるを振り返る。

冷えピタを貼っているねるの顔はさっきよりも火照ってるし熱上がってきちゃったみたい。

長濱「…」

渡邉「どーしたの?ねる?」

長濱「…」

何も喋ろうとしない。

渡邉「ねる?辛いの?…っわ!」

突然ねるが腰に巻き付いてきた。

私の腰に顔を埋めて顔を隠した。

何事かと思っていると、ねるの肩が震えてきた。

寒いのかな?

いや、違う。

…泣いてるんだ。

渡邉「…」

ねるから話し始めるまで待つことにした。

長濱「……自信がないの…」

ねるの背中を撫でる。

長濱「…皆から遅く入った分もっと頑張らなきゃいけないのに…最近上手くいかなくて…でもけやき坂のレッスンもあるし…」

ねるが言ってる『皆』は欅坂のメンバーのことなんだろう。

長濱「でもっ…でも……」

渡邉「分かってるよ…兼任を言い訳にしたくないんだよね」

長濱「もうっ…どうしていいか分かんないよっ…」

渡邉「ねるが私たちより遅れてるって思ってたとしても、私たちはねるが遅れてるなんて思ってないよ」

長濱「…」

渡邉「ねるはもう、私たちと同じところに立ってるよ」

ねるが腰から顔を離して私と目が合う。

渡邉「これからは何かあったら私のところに来て?何も話したくないなら言わなくていいし、楽になるなら話して欲しい!何のアドバイスもできないから話を聞くだけになるかもしれないけど…ね?」

長濱「うん…ありがと理佐…」

ねるは安心したのかゆっくりと目を閉じて、しばらくすると寝息が聞こえてきた。

…さっき言ったのは全て私の正直な気持ち。

私たち『仲間』なんだから頼ってね。

ねる…









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いつも読んでくださってありがとうございます!
再投稿最初はりさねるです。
どうしてもこれを最初に出したくて自分の小説を漁りました。
次からは保存順なので、以前と順番が異なります。
申し訳ありません。
《言葉の重さ~頑張れと大丈夫~》も引き続き更新しますのでよろしくお願いします。

(今日の投稿はこれのみとなります。明日からはペースを上げていきます。)

次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!