わたしは15年くらい前に一時期心療内科に通院していた事がある。
はじまりは夢遊病だった。
母子家庭で子供二人を育てるのは今思えば本当に大変だった。
管理職になってからは寝る間も惜しんで働いた。毎日9時から夜の10時、11時まで働いた。若かったのだ。
だけどやりがいのある仕事だった。
無我夢中で疲れている心や身体に気づいていなかったのだろう。
はじまりは夢遊病だった。
夜中に外に出て行くのだそうだ。団地暮らしの家のドアは重くて明け閉めに大きな音がする。気づいた娘達が追いかけて来る。
わたしは下まで降りて草むらのところで用を足したりしていたようだ。わたしには全く記憶がない。それ以外にも押し入れをあけて何かを話したり。
娘達も小さかったのでさぞかし心配でドアの閉まる大きなばたんという音を聞くと叫びながらおいかけてくるようになった。
そしてまた大人しくふとんに入り寝るそうで、
朝おきてもわたしには全く記憶がない。


それがうつの兆候だった。

それからしばらくすると車に乗りハンドルをにぎろうとすると、激しい動悸、過呼吸がおき「このまま運転したら必ず死ぬ」と思うようになった。
約10年通院しながら働いた。
下の娘の卒業とともに退社した。
職を離れた事で心は晴れやかでうつは次第に良くなっていった。


いや、良くなっていったはずだった。