開業当初から来て下さっている老夫婦。
かれこれ20年。
あの地震の直後も避難先から通ってきてくれた。
20年の歳月…。
ご婦人は認知症に。
先日、ご主人から予約の電話。
奥様がデイサービスに行く月曜日か金曜日にしか来れないと
言う。
たまたまその日に限って、予約がいっぱい。
以前、奥様を連れて来られたこともありましたので、一緒に来てもらうということで電話を切る。
予約当日、診療室に入ってきたのはご主人だけ。
スタッフの女の子に聞くと、奥様は車の中で待っているという。
『えっ???』
心配になり駐車場へ。
エンジンがかかり暖房の効いた車の中でシートを少し倒し、うつらうつらしている奥様。
待合室に連れて行くつもりだった私。
そういう状況ではないことを目の前に、ご主人に申し訳ないことをしてしまったと反省。
ご主人の治療は1時間コース。
私はご主人の治療が終わるまで、車中の奥様と井戸端会議…。
私が話しかけると一生懸命答えてくれる。
会話にはならないけれど、私たちはゆっくりゆっくりご主人の治療が終わるまでお話しをしました。
会話にならない会話。
ご主人と息子さんのことだけは、解るという。
この方はどんな人生を生きてこられたのだろう。
私の母もいつか同じようになるのかもしれない…。
そして私だって…。
そんなことを考えながら会計を済ませ、ご主人は恐縮しながら帰っていかれた。
この『受付け』の席は私に色々なことを教えてくれる。
生きていくにとっても大切なことを教えてくれる。