臨床心理士Mです。



両親、もしくは主に養育に当たる立場の人がJWであったために
いわゆる「JW2世」として育った方の心理について考える
シリーズ【JW2世の心理】、



今日は、


JW信者の子育ては「虐待」か?


について考えてみましょう。



記事のラストに、
子育て中のお父さんお母さんに向けてのメッセージがあります。

どうぞゆっくりご覧くださいませ。


シロツメクサ


虐待の定義

虐待とは、次の4つに分類されます。


身体的虐待
性的虐待
ネグレクト(育児放棄)
心理的虐待 


厚労省(※1)など多くの子育て関連のサイトに
定義と具体例などが載っていますので
ぜひ参考にしてください。


JW(エホバの証人)の信者の子育てで、
虐待が疑われるケースについて
いくつかの項目にわけて考えていきたいと思います。




【虐待?】鞭で打つこと

鞭で打つことは
聖書で許可されているようですが、

子どもに傷が残るような、
また子どもが過度の恐怖心を持つような体罰は
十分に「身体的虐待」と言えると思います。


鞭で打つことを
「聖書でよしとされているから」
と思って、
しつけとして続けている親御さんは
今すぐやめてください。


下手すると、児童相談所に通告されて
お子さんと離れ離れになる可能性があります。



【虐待?】幼少期からJWの教理を教え込むこと

親が信者だと、
子どもは幼少期からJWの教理を教えられますね。

物心つく前から
親の判断で
特定の宗教的な考え方を植えつけられるのは
いかがなものか・・・と思います。


ただ、
社会学・教育学的には
子に対する父母の
「自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由」
が認められています。(※2)


宗教的教育や道徳的教育が
カルト的なものだった場合のことを
もっと研究していくべきだと思いますし
政府にはぜひ明文化してほしいものです。


なので、
幼少期からJWの教理を教えこむことは
虐待とはいえませんが、

自由な感情や思考を抑え込まれ、
学校や友だち関係における複数の禁止事項がある中で
育ったJW2世・3世の方が、
社会に適応できなくなることも多々あります。


宗教的信念と、
自分が属する社会的コミュニティの「常識」「良識」のはざまで、
「自分」というアイデンティティの確立が
難しくなってしまうためだと思います。


JW2世さんのブログ等では
よく、「アダルトチルドレン」との関連が記載されています。


「アダルトチルドレン」とは、
社会学用語で
機能不全家族の中で育ったために、
成人してもトラウマ的な思いに悩まされる人たちのことです。
 (※3)



JWとアダルトチルドレン

臨床心理士としては、
アダルトチルドレンは
うまく適応できなかった人の逃げ場にもなってしまう諸刃の剣的な用語だと感じています。

「アダルトチルドレンなんです」という方のカウンセリングをしていると
親や家庭に責任転嫁している感じを受けることも多々あります。

特に親御さんがおかしな育て方をしているわけではないのに、
自己主張の出来なさや適応できなさを「親のせい」と言い切る姿には
正直なところ、なかなか共感できないときもあります。


でも、JW2世・3世の方々は
実際、
「JWの教理」という「一般的でない子育て」の中で育ってこられました。


自分の考えが抑圧され、
適応したいのに社会適応を禁止されることにより
アダルトチルドレンと呼ばれるような状態になってしまうのは
うなずける面が非常に多いです。


(JWとアダルトチルドレンに関しては、また別の記事に記載致します)



まとめますと、
幼少期からJWの教理を教え込むことは
虐待とはいえないけれども
子どもの人生に大きく影響するという意味で
成長阻害的な行為になる可能性もある・・・
というふうに考えるのが適切なように思います。




【虐待?】保育園・幼稚園・学校に関する禁止事項

保育園や幼稚園、学校に関する
JW的な暗黙の禁止事項も、
「幼少期からJWの教理を教え込むこと」の項目でも申し上げたように
子どもの人生に大きく影響する事柄だと思います。


3~6歳の情報の吸収度というのは
ものすごいです。ほんとにものすごいです。


「三つ子の魂百まで」といいますが、
この時期に吸収した情緒・思想・行動様式というのは
本当に生涯を決定づけるような影響を持ちます。


乳児期・幼児期に、
一般的でない育てられ方をすると
社会的な適応が阻害され
児童期・思春期ひいては人生を通して、
大きく混乱することもあるでしょう。


しかも、
児童期・思春期の「恥」に対して多感な時期に
武道や国歌斉唱に関して
またお友だちとの遊びに関して、
「自分は出来ない」といわなければならない・・・
かなりの苦痛を伴うと思います。



保育園や幼稚園に関しては、
カトリックの保育園とかなら礼拝などもあるでしょうが

普通の保育園幼稚園なら
「神様が・・・」
「神様の喜ぶ行動を・・・」
なんて毎日のようにいいませんし
ましてや
「エホバ」の名前なんて出て来ません。


・・・だからこそ、毎日「エホバ」を繰り返す子育てを!
とお父さんお母さんは努力しておられるのでしょうが、

毎日「エホバ漬け」にすることが
果たして「適切な養育」かどうか・・・?


JWの教理的には適切でも、
社会一般的には非常にマイナーな考え方です。


でも、「マイナーな考え方」だということが、幼児ではわかりません。

ここがもっとも問題なのです。


・・・常識・良識・一般性などが
まったくわからない状態の乳幼児に対し、

「幼稚園はよくないところだから行かないで、
おうちで正しいことを学びましょうね」

というのは、
虐待ではないのか。


学校のみんながしていることを、
自分ではそんなに悪いことと思ってないのに
「組織の教えだから」と拒否せざるを得ない・・・

これも、虐待ではないのか。



いずれも、
虐待・・・とは言い切れないでしょうけれども、
非常に閉鎖的で、極端な子育てだと感じます。



保育園や幼稚園では
JWの教理にそぐわない遊びもしますよね。

戦いや争いがNGなのですよね、
鬼ごっことかドロケーとかも、それに入ってしまうのでしょうか?
(ドロケー、古い?!(恥))


ポケモンも、戦うし進化するからダメとか・・・
魔法使いの出て来るアニメや映画はダメとか・・・

サブカルオタク気味な自分からすると、
すごいもったいないです。
サブカルチャーから学べることっていっぱいあるのに・・・


・・・失礼しました、
今のは私の個人的な感覚が多くもれ出てしまいました^^;



確かにゲームしすぎは別の意味で問題ですし、
どのご家庭でも
「ゲームしたい!」「ダメ!何時間やってんの!」
というウンザリするようなやりとりをしていると思います。


「聖書に書いてあるからゲームしちゃダメ」という親のお小言を、
まともに受け取ってゲームしない子が
「聖書的」なのでしょうか。


JWの皆さんにとっては聖書的なのでしょう。

「人殺ししちゃダメ」とか
「嘘ついちゃダメ」といった
抽象的な事柄について
「聖書に書いてあるから」なら
まだわからないでもないのですが

(そういうごく普通のことを
 ナチュラルに「ダメなこと」と理解できるようでなくては
 そもそも人としてどうなの? と思いますが)


ゲームとか読む本とか、
そんな細かいことまで
「聖書に書いてあるから」
という理由で禁止されて
それに従う子ども・・・

子どもらしさという点から見ると・・・
難しいところなのではないでしょうか。

反発するほうが
ずっと子どもらしいと思いますし
ちゃんと成長していると感じます。



・・・
魔法の出て来る本を読んだり、
無邪気に友だちとゲームしたりする子どもたちのことを
「この子は聖書的でない行動をしている」
なんて判断する神様だとしたら。

読書もゲームもさせず、「世」の友だちとも遊ばせずに
組織を通じて培った自分の信念のままに
何の疑いもなく
閉鎖的で一般的でない子育てをするお父さんお母さんを
「素晴らしい。ぜひ楽園でも奉仕してほしい」
と褒める神様なのだとしたら。


それは本当に神様でしょうか?




【虐待?】大学等に進学させないこと

高等教育の禁止は、
今の時代に照らし合わせると
やはり虐待と言いたくなるレベルの問題になってくると思います。


実際には虐待とは言い切れませんが
(進学する頃には法的な『児童』ではなくなっているので)


「組織が歓迎してないから進学はダメ」
なんて、
子ども側からしたら納得できないですよね。



確かに大学や専門学校に行けば
人間関係が、高校までのそれよりもグッと広がります。


いろんな人に出会い、いろんな経験をするでしょう。
高校までの生活よりも、
より自由度が上がり、責任も伴ってきます。
恋愛もするでしょう。


組織的には
自己責任で自由を謳歌する快感を知ってしまったら
組織になんて戻りたくなくなってしまう・・・
そういう出会いを禁止したい気持ちもあるでしょう。


「大学行って遊びたい」
っていうチャラい系の考え方をする子でなければ
学びたいと思う専門的な学問を思う存分学ばせてあげたい、
というのが親心だろうと思うのですが・・・



まとめますと
小学校や中学校に通わせないのは
虐待にあたりますし
そもそも教育を受ける権利を阻害しているので
親が罰金を払うケースもあったようです。

ですが
高校以降になると義務教育ではなくなるので
聖書や組織を理由として
進学させてくれないとしても
虐待にはあたらない・・・と言えるでしょう。


でも、
JW2世の方の大学進学をめぐって
親御さんとの確執が決定的になるケースは非常に多いです。





まとめにかえて
 ~子育て中のお父さんお母さんへ~



もしもここを見ている子育て中のお父さんお母さんがいらしたら、
ぜひ考えてください。
今の子育てが
あなたのお子さんの将来に
ものすごく影響してきます。


あなた方が良い父親良い母親であろうと努力していることは本当にすばらしいことです。
真剣に、子どものための子育てをしようとしていることも、知っています。


でも、
お子さんが
親御さんとの関係に
困ったり、つらそうだったり、悩んだりしているようなら
一度考えてみてください。



しつけとして鞭で打ってよいとしているのは、
子どもの頃からJWの教理を教えるようにと言ってしているのは、
特定の遊びをしちゃいけないとしているのは、
保育園や幼稚園が「良くない」と言っているのは、
大学に行かせない方が良いとしているのは、


あなたですか?
それともJWの出版物を通して学んだ聖書ですか?



JWが本当に良いものなら、
一般的な育てられ方をして、
大人になって、
「やっぱりJWは良いね」と言って
お子さんは組織に戻ってくるはずです。


お子さんを信じてあげてください。



最後に、
子ども虐待防止運動している団体の言葉を引用します。


虐待としつけ。この二者間には、しっかりと線引きできないグレイゾーンが存在します。が、多数の事例に関わってきた福祉、保健関係者や精神科医、小児科医などが言うように「子どもが耐え難い苦痛を感じることであれば、それは虐待である」と考えるべきだと思います。

保護者が子どものためだと考えていても、過剰な教育や厳しいしつけによって子どもの心や体の発達が阻害されるほどであれば、あくまで子どもの側に立って判断し、虐待と捉えるべきでしょう。(※4)



親御さんが「虐待」だなんてゆめにも思わず
「絶対に子どもにとって良いものだ」と信じている子育てでも

子どもがつらい思いをしていたら、
子どもの発達が阻害されたら、

それは、虐待です。




聖書も言っています。


父たる者よ。子供をおこらせないで、主の薫陶と訓戒とによって、彼らを育てなさい。
 (エフェソス6.4 口語訳)




もう一度、
子育てについてご夫婦で考えてください。
お子さんの立場にたって、考えてあげてください。

そして、
組織のやり方に対して迷いを感じたら、
一度でいいので、組織に属さない人に相談してみてください。






【引用・参考サイト】

※1
児童虐待の定義と現状(厚生労働省)
※2
親の教育権と子どもの権利保障
 (西原博史 早稲田社会科学総合研究 第14巻第1号 2013.7 )
※3
アダルトチルドレン(wikipedia)
※4
子ども虐待(子ども虐待防止 オレンジリボン運動)

聖書が語る躾(金城学院幼稚園長 馬渕宣子)

子ども虐待診療の手引き
 (日本小児科学会子ども虐待問題プロジェクト,2006.4)

レリジャスハラスメント(wikipedia)

(敬称略)




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