友達には優しい | アスペル君の父として

友達には優しい

 週末は逃げ出してました。息子の顔をみるのが嫌で嫌で。


 私たちに嘘ついてたんですよ。お祖母ちゃんに酷い態度をとったのを黙ってたり、絶対買い与えなかったゲーム機を無断で買ってたり。

 そのことを問い詰めても、「ふん」とろくに聞こうとしません。思わず固めた拳で息子の顔をぶん殴ってました。グーで殴るのは何年ぶりかな? ひょっとしたら奴が生まれて初めてだったかも。

 嫁さんは泣くし、私は怒りに震えるしで、まぁたいへんでした。お恥ずかしいことに、精神的なダメージが大きくて、私がちょっと寝込んでしまいました。


 という訳で、彼のいる家を脱出。「もう一緒に暮らすのきついよね」と、そんな話を嫁さんとしていました。


 週明けて昨日の月曜は参観日。「なんであいつの参観なんかしなくちゃいけないんだろう」と思いながら、いやいや一人で学校に行きました。

 授業を受けている彼を見ても、いままでのように愛しさが湧き上がっていません。ああ、いるな、くらいの感覚で。

 もう本当に俺はあいつを受け入れられなくなったんだろうか。親子でも愛情が冷めることってあるんだな、とぼんやり考えていたものです。


 その後、特別支援教室の担任の先生と懇談。「学校で●●君はすごく友達から受け入れられてるんですよ。本人も皆と楽しそうに遊んでるし。私たちが注意しても聞かなかったりするんですが、友達の注意は聞くし、皆のためには一所懸命やるし」


 その話を聞いていて、心にあるモヤモヤしたもの、わだかまりが少しずつ溶けていきました。ああ、奴は奴なりに一所懸命やってるし、楽しく毎日を送ろうとしてるんだ。受け入れてくれる周りの子たちを、本当にありがたいと思いました。

 転校や短期入院を考えているという話をすると、先生はびっくりしていました。「皆と仲良くやってるんですけどね」、と。


 その日家に戻り、先に帰っていた息子と二日ぶりくらいに正面から向き合いました。

「学校で楽しくやってるって?」

「うん、まぁ」

 私は腕を伸ばして彼を抱きしめました。40過ぎの親父が男子中学生を抱きしめる図は、傍から見たら気持ち悪いかも。

「怒ってごめんな」

「うん」


 ……奴から友達を取り上げるのはかわいそうだな、と思い返しているところです。


 親や先生の話を聞こうとしないというのは、反抗期なのかもしれませんね。いつまでも子供のような振る舞いをする彼も、もう13歳だし。