少し前のことですが、友人に洗顔料について聞かれたことがあります(この導入多いな・・)。
曰く、よく見ている美容系YouTubeで、洗顔料について語っていたが、泡だててから肌に乗せるのでは洗浄力が失われていて意味がないので、洗顔料は肌の上で泡立てるべし、と言っていたが本当か。
端的に言えば、間違っています。また、洗顔料の機能の仕組みについても理解していないとしか言えないので、その人の言うことは聞かないように、と言う話なのですが。メイク系の自称美容家がスキンケアについて語ると、こういう放送事故が起こりやすいんですよねえ。
10年近く前ですが、某有名美容家(実際はメイクがご専門の美容師さん)が、とある有名なトーク番組で「セラムというのは赤ちゃんの肌の成分なんですよ~」と語ったのを放送されていたことがありました。テレビですらこれだから、YouTubeなんか無法地帯ですからね。
で、話は戻って、泡だててから使うように指示している洗顔料は、その通り使うのが正しく、よりよく洗いあがります。特に、微粒子粉体はあわ立ててあるほうが落としやすいようですね。これは、実際の肌で実験した後、顕微鏡写真で比較したデータを見たことがありますが、明確にあわ立てたほうが綺麗でした。
一方で、汚れ落としではなく、古い角質を落とすことを目的にしている場合は、肌の上でこする(スクラビングする)タイプの製品も選択肢に入ります。スクラブの入ったジェルかクリームで肌をマッサージすることで物理的にこすり落とすか、クレイパックなどで多いですが、少しおいて吸着させたのちこすり落とすタイプ。
乾かしてから、軽く擦って落とすタイプなんかもありますが、これは上手にやらないと結構痛いので、ご注意を。後、地味にめんどくさいです(笑)
スクラブ入りの洗顔料は、男性用洗顔料を中心に比較的メジャーですし、パックやマッサージという製品も、ここ数年は増えているように思います。ただ、この二つはきっちり棲み分けられていたのが、日本の特徴でした。
ところが、ここにきて、そうじゃないタイプの洗顔料が出てきたので、驚いたよ、というのが今回のお話。相変わらず、前置きが長くてすみません。(というより、上記の洗顔料の区分について、まとめたほうが良いかも、と今思いましたので、近いうちにまとめます)。
てことで本題。
カネボウ スクラビング マッド ウォッシュ
研ぎ澄ましたようにクリアな素肌へ導く、吸着磨き上げ洗顔。モロッコ溶岩クレイ(洗浄成分)配合のペーストに崩壊性スクラブを配合し、余分な皮脂を吸着、古い角質・毛穴汚れを磨き洗いあげ、一気にリリース。肌に吸い付くような生泥感触のペーストの三段階の質感変化で、解き放たれるようにすべらかで、うるおい感のある明るい肌へ。濃密な泡での泡洗顔も叶えながら、すっきり取り去りたいという衝動を毎日迷いなく解放する。
とまあ、説明だけ見ると、洗顔料なの?パックなの?と謎なのですが、使用方法を見てびっくり。というか、2回ほど読み返してしまいました。
ご使用法:
〇あらかじめ顔をぬらしてから、目の周りを避け直接肌に伸び広げてください。1回の使用量は、直径2cmくらい(約2g)が目安です。
〇手でスクラブが配合されたペーストを肌になじませてください。
〇少量の水またはぬるま湯を足し、泡立てながら顔全体を洗い、すすいでください。
ポイントは、最後の「泡だてながら」という部分。
そうなんです、クレイパックなのに、泡が立ち、洗顔料として使用するものなのです。
処方を見るとこんな感じ。
成分:グリセリン、ミリスチン酸、水、水酸化K、モロッコ溶岩クレイ、PEG-32、PEG-6、パルミチン酸、メチルグルセス-10、DPG、ラウリン酸、ステアリン酸グリセリル(SE)、香料、セルロース、EDTA-4Na、ポリクオタニウム-44、シルク、エチルセルロース、ヒアルロン酸Na、ココイルメチルタウリンNa、カニナバラ果実油
ざっくり説明すると、脂肪酸石鹸の処方をグリセリンベースで作り、クレイとクレンジング成分、肌保護成分を入れたという感じ。基本がカリ石鹸(液体石鹸などに多いタイプの洗浄料)なので、泡立ちは細かく、かなりしっかりした泡が作れそうです。クレイを入れると泡立ちが下がるので、そのためかもしれません。
それにしても大胆なコンセプトです。個人的には、クレイパックした後、顔を洗うのが超めんどくさいので歓迎なのですが、脂性肌以外の人が使っちゃって大丈夫なのか。見た所クレイはそんなに多くないようですが、カリ石鹸ということはアルカリ度がかなり高め(多分pH11以上)のはずなので、それをペースト状のまま肌にのせて放置するという方法はいかがなもんかと。
また、セルロースのスクラブが入っていますが、セルロースはイメージと違って結構硬く、やり方を間違えると肌を傷つけかねません。強めにこする人が出てこないと良いのですが、だいたいこういう製品を使う人は、大胆な使い方をする人がいるんですよねえ。長時間放置しちゃったりとか。
ちょっと心配です。
一方で、賢く使えば、とても便利な製品であるとも言えます。
年齢を経た肌は、どうしても角質が溜まりやすいという特徴があります。きちんとお手入れしているのに、なんだか肌がゴワゴワするとか、微妙に厚ぼったく感じるという人は、角質が肥厚している可能性を疑ったほうがいいかもしれません。
また、毛穴が気になる方にも、こうした製品は有効。クレイの吸着とスクラビングによる汚れ除去など、1本で多方面からアプローチできるというのは強いと思います。
一方で、注意すべき、というか全くお勧めできないのは
・乾燥肌の方
・アルカリ性に弱い人
・敏感肌
など。これらの方は、使用されないことを強くお勧めします。多分、相当痛いと思います。
また、肌質が合っていても
・長時間使わない
・ゴシゴシ強くこすらない
・しっかり洗い流す
などの注意も必要。
アルカリ度が高いので、長く肌に置いておくと刺激が出やすい可能性がありますので、使用時間の目安を守る必要があります。また、前述の通りセルロースのスクラブが入っているので、こする時は優しくやらないと、肌を傷つける可能性があります。また、クレイが入っているので、水を足した後のあわ立てをしっかり行い、きっちり洗い流さないと、クレイが肌に残る場合があります。
なんだか、マイナスなお話が多いですが、実は私的には大好きな処方です。KANEBOは色々問題の多かったカネボウ化粧品(美白事件の時は、業界全体で大迷惑を被ってそれはそれは大変だった)が、海外戦略向けに打ち立てたブランドとのこと。残念ながら、ブランドサイトを見る限り、コンセプトがぼやっとしてて、戦略ブランドとしては弱すぎる印象がありますが、処方開発に気合を入れているのは事実。ということで、かなりエッジの効いた製品を出してきたな、と思う今回。
はっきりいうけど、男性用ですよ、これ。
女性がこれを使って、問題ないです、とは言いにくいですが、男性用としてはかなり良い製品だと思います。もともと、男性は角質が蓄積しやすい傾向がありますし、皮脂分泌も多いので、クレイ吸着は良いと思います。
そんなこんなで、まとめますと。
なんでKANEBOブランドでこれなの??
と思わずにいられない、今回の「カネボウ スクラビング マッド ウォッシュ」。まあ、ちょうどパッケージも黒で男性が使うにも抵抗ないし。男性向けでいいんじゃないでしょうか。