先日、シャンプーの正しい使い方、というタイトルで記事を書いたときに、泡立ちの悪いシャンプー代表(笑)として取り上げたノブ ヘアシャンプーD。
ちなみに、記事はこちら。結構反響あって嬉しい限りですが、実際に試していただけているといいのですけど・・。
意外に知られていないヘアシャンプーの正しい使い方
https://ameblo.jp/m-skincare/entry-12400060597.html
実は、このノブ シャンプー、ものすごく変わった処方設計になっています。20年以上前の処方ですが、いまだに同じような処方は滅多に見かけません。というか、私は同じ処方にあったことがありません。
近いうちにまとめますが、実はヘアシャンプーの処方にはあまりバリエーションがありません。ノンシリコンシャンプーが台頭して、いろいろな処方が作られるようになってきましたが、やはり基本骨子は同じような感じで、硫酸塩系(ラウレス硫酸ナトリウムなど)、オレフィンスルホン酸系(ジョンマスターの時に問題視されていましたね)、アミノ酸系(ラウリルグルタミン酸系、タウリン系)などがメインで、あとは石鹸系かグルコース系などくらい。複合的にいろいろな成分を使うことはありますが、メイン原料だけで見ると、多分ほとんどは上記に入るのではないかなと。
そこに全く属していないのが、このノブシャンプーDなのです。
ちなみに、ノブは皮膚科などでも推奨している低刺激スキンケアのブランドで、最近はニキビ用の製品の知名度が高いよう。シャンプーは3種類ありますが、残りの2種類は割と普通の処方です。
NOV ノブ ヘアシャンプーD 250mL ※お一人様1個限り |
ノブ ヘアシャンプーD
http://noevirgroup.jp/nov/g/g57116/
水、ココイル加水分解コラーゲンK、ラウレス硫酸Na、BG、ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース、加水分解コラーゲン、DPG、クエン酸、クエン酸Na、ポリクオタニウム-10、メチルパラベン
商品説明については、さっぱりな情報量なので、無視して成分を見ますが、なんともシンプルな処方です。
ヘアシャンプーは大体以下のような成分によって作られています。基剤は水なので無視します。
1)洗浄成分(起泡成分、泡質改善成分など含む)
2)ヘアコンディショニング成分
3)香料および安定化剤(防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤など)
ということで、ノブシャンプーを見ると以下のような感じです。
1)洗浄成分(起泡成分、泡質改善成分など含む)
「ココイル加水分解コラーゲンK」「ラウレス硫酸Na」「ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース」あたりが界面活性剤なのですが、主成分は「ココイル加水分解コラーゲンK」。「ラウレス硫酸Na」は日本で汎用されている界面活性剤ですが、全成分の配合順序からいってメイン減量ではないことがわかります。これは非常に珍しいケース。
そもそも、「ココイル加水分解コラーゲンK」は洗浄成分というより、コンディショニング成分なのです。なので、泡立ちが悪いというより、そもそも洗浄力が非常に弱くなっています。ただ、これがノブシャンプーの特徴的な感触を産んでいるもので、ほかのシャンプーが全てダメだったアトピーの人が、これだけは使える、という話を何度も聞いたことがあります。まあ、あまりに特徴的なので、これだけダメという人もいるようですが・・・
ちなみに、「ラウレス硫酸Na」は、上記の成分があまりにも泡が立たないので、補助的に入っていると思われます。また「ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース」は、グルコース(糖の一種)から作られる界面活性剤であり、洗浄力も多少はあるようですが、これは増粘剤、つまり粘度を高めて、「どろり」とさせるために配合されていると考えられます。
とはいえ、かなり緩い粘度なんですけどね、このシャンプー。あまり粘度が低いと、手にとった時に流れてしまうので、粘度というのはかなり重要な要素なのです。
2)ヘアコンディショニング成分
ヘアコンディショニング成分には、大きく2種類の成分が使われています。
一つは保湿系の成分。これは「BG」「DPG」と「加水分解コラーゲン」。
「BG」「DPG」は化粧水の保湿成分として汎用されているので、ご覧になった方も多いと思います。まあ、日本国内の化粧品だと、これらかPGを含まない製品は、ほとんど見たことがない、というレベルで汎用されています。
「加水分解コラーゲン」は、保湿とさせていただきましたが、ダメージ毛の修復作用もあると思います。ただ、水溶性ですし、毛髪への吸着は弱いので、あまり効いているとは考えにくいかなと。この処方だと、メイン成分の加水分解コラーゲンに混ざって入っている可能性もありますね。
コンディショニング成分の二つ目の役割は、毛髪修復系。感触調整の役割も同時に果たしているケースが多いです。感触調整というのは、洗っているときやすすいでいる時の指通りなどのこと。洗っている時に髪がもつれたり、すすぎ時にキシキシするという感覚を経験された方は多いと思いますが、これをそのシャンプーの洗浄力が強すぎるから、と理解している、または教育しているケースは多いのではないでしょうか?
洗浄力の強さは全く影響ないとは言いませんが、この辺の感触は、ほとんどが洗浄成分の処方の設計と、カチオンポリマーといわれるコンディショニング成分によるものです。このノブの場合は「ポリクオタニウム-10」。カチオン化セルロースという成分のことです。カチオン化することで、髪に付着しやすくなっており、すすいだ時にぬるぬるする感触を与えます。これが「すすいでいる時に髪がもつれない」理由。同時に粘度を高くするためにも使われます。
最近流行りのノンシリコンシャンプーでは、シリコンを入れない代わりに、この辺の成分をガバッと入れた処方が多く、長く使っていると髪がゴワゴワしてきてしまいます。特にアミノ酸ベースの処方だと、粘度が高くなりにくいので、この辺りの増粘効果のある成分を大量に入れるので、髪のボリュームは出ますが、髪にはあまりよろしくない気がします。
で、振り返ってノブですが、肌の弱い人は「カチオン」に反応する場合が多くあり、それに配慮してか、この成分もあまり多く入っていません。その証拠に、粘度が低く、長期使った場合のビルドアップ(だんだんゴワゴワしてくることを、専門的にこう呼びます)も少ないようです。その分、すすぐときに髪がもつれるのですが・・・。
3)香料および安定化剤(防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤など)
以前にノブの化粧水を取り上げた時にも書いたかもしれませんが、ノブの古い処方は、アレルギーを起こさないようにする配慮として「成分を絞り込む」という方向性を徹底しているように思います。特にアトピー性皮膚炎の酷い人のように、アレルギー反応を起こさない成分を探す方が大変、みたいな人だと、成分数を減らすことで「当たりを減らす」という処方設計は現実的。
そんなこんなで、そもそもシンプルな処方ですが、安定化剤もシンプルで、pH調整の「クエン酸」「クエン酸Na」と防腐剤の「メチルパラベン」しか入っていません。酸化防止剤とかあった方がいいように思うのですが、切り捨てているようです。まあ、長期保存に向かないタイプの処方ですね。
ちなみに、「当たりを減らす」という主旨から、香料・着色料が入っていないのもノブの特徴。精油で香りをつけることすらしないという徹底ぶりです。潔いというかなんというか。おかげで、原料の臭いが気になる人があるよう。特に、コラーゲン系は独特の臭いがあって、苦手な人がいるんで、この辺は注意が必要かもしれません。
さて、ということで、まとめると
・かなり変わった処方なので、いろいろなシャンプーを試したい人の選択肢の一つにはなるかも。逆に、個性が強すぎるので、苦手な人は多いと思われる。基本的にアトピー性皮膚炎とか、敏感肌をターゲットのしているので、頭皮や毛髪に特別なトラブルがなければ、必要ないと思われる。
・成分数が少ないので、アレルギーを気にする人には向いていると思われる。
・洗浄力が弱いので、乾燥しやすい人には向いている。逆に、ダメージ毛にはコンディショニング成分が少なすぎ、洗っている間にもつれたり、絡まったりして髪が傷むことがあるかも。
・泡立ちは良くないので、髪の脂分を丁寧に落とす、二度洗する、などの工夫が必要。
・主成分や配合成分に対して、防腐剤がかなり弱めなので、保管には注意が必要。また、酸化防止剤も入っていないので、開封後はなるべく早めに使い切る、高温にしないなどの配慮が必要だと思われます。
といったところでしょうか。
まあなんにせよ、個性の強いシャンプーであることは事実。久しぶりに市場の製品をざっと調べましたが、やはり同じタイプの製品は見当たりませんでした。ノブはヘアシャンプーを3種類出していて、ほかの2種類は割と一般的な処方なのですが、これが生き残っているところみると、やはり根強い固定ファンがいらっしゃるのだろうなと。
頭皮のトラブルが生じやすいという人なら、一度は試して見て欲しいと思います。ちょっと使いにくいけど・・・。
NOV ノブ ヘアシャンプーD 250mL ※お一人様1個限り
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