2018年度の日焼け止め新製品から、個人的にちょっと面白いな、と思ったロート製薬「スキンアクア ウォーターマジックUVオイル」。

 

たぶん、一般の美容ライターさんとか、ユーザーさん目線では、さほど驚くほどでもない製品かと思いますが、開発者目線(特に処方開発研究者目線)で見ると、すげえなあ、と思うことがいくつかあり、いつにも増して暑苦しく語っております。主にベースについて。

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クリームでもローションでもジェルでもなく「オイル」というコンセプトを支える基剤の作りがなかなかにこだわっていて面白いのです。

 

ロート製薬の公式サイトはこちら

http://jp.rohto.com/skin-aqua/water-magic-oil/

 

さて、前回は、そんなこんなで、基剤の最初の成分である環状シリコンで終わってしまいました。

 

日焼け止めの新潮流になるか?ロート製薬「スキンアクア ウォーターマジックUVオイル」その1

https://ameblo.jp/m-skincare/entry-12370365385.html

 

よく見たら、ブログタイトルも長い・・・。

 

今回は、上記の続きです。基剤の話がまだまだ続きます。

 

さて、前回説明したシクロメチコンの次に来るのが、「トリメリト酸トリエチルヘキシル」という油剤系の成分。エモリエント剤と言いますが、肌にしっとりした感触を与えつつ、肌を柔らかくする働きがありますが、実は、この成分がこの処方において、かなり大きな役割を担っています。

 

この製品の場合、乳化型になっていなくて、見た目は本当にオイルのような形状です。「ような」とわざわざ言ったのは、ベースのトップがシリコンなので、厳密には「オイル」とは言わないためです。まあ、一般認識としては、「油=水に解けない液状のもの」という解釈なので、問題はないのでしょうが。

 

実は、この後に説明する紫外線吸収剤は、なかなか分散が厄介なものが多く、通常はそれらに適した乳化剤を使って分散させる手法を取ります。そのため、水のほとんど入っていないローションの処方でも、乳化された白い液状になっているものがほとんどです。

 

ところが、この製品では、乳化型になっておらず、透明な、まさに「オイル」な形状をしています。これがこの製品の一つの特徴で、意外なようで、あまり見かけない処方です。これを支えているのが、この紫外線吸収剤の分散を得意とする、この「トリメリト酸トリエチルヘキシル」の配合にあるようです。

 

油剤としては、この他に「イソノナン酸イソノニル」という成分も入っていて、こちらはシリコーン油との相性が良い成分のよう。紫外線吸収剤やシリコンといった、他の成分と混ぜにくい成分を配合しているので、かなり色々な技術が盛り込まれているのが感じられます。

 

一方で、日焼け止め必須成分とも言えるシリコン成分も、複数種類配合されています。一見すると「シリコン」という名前になっていないのでわかりにくいものも多いのですが、「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン」「カプリリルメチコン」「ジメチコン」などが液状のシリコン。感触調整がメインですが、撥水性などにも寄与していると思われます。フェニルトリメチコンなどは、紫外線を吸収する作用もありそうに思うのですが、あまり言及されていないのが残念。

 

なお、この処方には、これらの他にも2つのシリコンが配合されています。それが「ポリメチルシルセスキオキサン」と「ジメチコンクロスポリマー」。

 

「ポリメチルシルセスキオキサン」は粉状シリコンで、肌の上で滑りをよくするために配合されています。これは、「シリカ」「ジメチルシリル化シリカ」も同じ役割。ベタつき感を出さないための工夫かと思われます。

 

一方の「ジメチコンクロスポリマー」は増粘剤です。この製品のメインであるあるシクロメチコンは粘性が低く、さらっとした液ですが、これだと指からこぼれてしまい、塗りにくいという欠点があります。これを改善し、適度な粘度を持たせるために使用しているのが、この成分のようです。

 

もう一つ、この製品の性状に特徴を与えている成分が「(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン」という成分です。これは、専門用語的にいうと「チキソトロピックなゲルを形成する」性質がある成分。わかりやすく説明するのが難しいのですが、「力をかけることで、粘度が下がる性質」くらいに理解いただければと。何もしない状態ではジェル状なのですが、手にとったり、押したりすると液状になるといった性質。富士フィルムのジェリーアクアリスタなどがこの代表です。

 

この成分を配合することで、トロッとした液でも、肌に塗布するとサラサラと伸びて馴染むといった性状を付与することができるようになります。粘度が低すぎると、溢れて塗りにくいとクレームされ、粘度が高いと伸びにくいと叱られる。化粧品の難しいところを、しっかりカバーしている処方になっているなと。かなりベテランの技を感じます。

 

その他、エタノールやDPGといった成分も配合されていますが、この辺は、そんなに感触などに関わっている印象はありません。基剤ですが、何かの成分のオマケ的な感じなのではないかなと。

 

ということで、相変わらず長々と基剤の話をしたところで、次回はようやく日焼け止め成分の話へ進みます。