毎度、市場の化粧品について、あれやこれやと、聞かれてもいないことまで書いているこのブログ。たまには、訪問販売の化粧品についても書いてみましょうと、ベーシックな製品を取り上げたつもりが、予想外の深い展開に。

 

いやあ、考えて作られた化粧品は、深い。シンプルに見えて、よく考えられてるなあと。ま、私の文章がくどいだけかもしれませんが。

 

ということで、アイビー化粧品 ラ ベーシック モイストイン ローション。

 

 

アイビー化粧品の公式サイトはこちら

https://www.ivy.co.jp/products/skincare.html

 

ラ ベーシック 製品サイト

http://ns.ivy.co.jp/products/sk_labasic.html

 

ラ ベーシック モイストイン ローション

 

全成分

水、BG、グリセリン、エタノール、ジグリセリン、コメ発酵液、サッカロミセス/ハトムギ種子発酵液、スイカ果実エキス、ヒラマメ果実エキス、リンゴ果実エキス、ヘチマエキス、マンダリンオレンジ果皮エキス、アラニン、オルニチンHCℓ、シトルリン、セリン、ヒドロキシプロリン、カルニチン、ベタイン、PCA‐Na、塩化Na、乳酸Na、プロパンジオール、コレステロール、水酸化レシチン、イソステアリン酸ポリグリセリル‐10、ミリスチン酸ポリグリセリル‐10、ヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、クエン酸Na、水酸化K、メチルパラベン、香料

 

この化粧水の成分を

①基剤

②乳化剤(後ほど説明します)

③機能性成分(保湿、アンチエイジングなど)

④その他の成分(安定化剤、防腐剤など)

に分類して、乳化剤のとこまで説明したのが、前回。

 

今回は、最新の皮膚理論にまで踏み込んで考えられているなあ、と読み解きながら感動した、実は意外に深かった機能性成分の部分です(う〜ん、どう書いても上から目線な失礼さが拭えない・・・。ほんとすみません。)

 

さて、処方の構造はシンプルで、教科書に出て来る化粧水の処方みたいなベースですが、配合されている有効成分「③機能性成分(保湿、アンチエイジングなど)」はかなり練りこまれている感じです。

 

まず、「コメ発酵液」と「サッカロミセス/ハトムギ種子発酵液」が有効成分の筆頭に入っています。まあ、どちらもある程度以上の濃度で配合しないと効果が出にくい成分で、はっきり言ってこのくらいの配合量(多分2%以下)では、効果のほどは微妙なのですが、どちらも良い成分ですし、最近また再評価されている成分であることは事実。

 

保湿効果としての評価も高いですが、アンチエイジングの成分としての注目が高い様子。この辺りは、SK2を意識しているのかな、と勘ぐってしまいます。コメ発酵液も最近は人気ですね。独特に匂いがあるので、敬遠されていた過去がありますが、最近は匂いもかなり改善されてきて、使いやすくなったのも要因かも。どちらも、細胞を活性化し、肌のターンオーバー促進などの作用があったかと思います。

 

もっとも、稀に肌に合わず、トラブルを生じてしまうことがあるのは事実なので、この点は要注意です。先のエタノールのこともあるので、敏感な肌の方は、使用前にお試しをすることをお勧めします。

 

さて、ちょっと面白いのは次に来る「スイカ果実エキス」「ヒラマメ果実エキス」「リンゴ果実エキス」という3成分。それぞれ単体でも興味深い成分ですが、実はこの3成分をセットに、独自の配合で作られた化粧品原料があります。これのデータが素晴らしく、保湿機能はもちろんですが、小じわの改善や、長期使用による保湿機能改善などの作用が報告されています。保湿力の維持という点でも優れているという報告がありました。

 

もっとも、このミックス成分、よくよく見ると「乳酸Na」と「PCA-Na」という成分も含んでいます。どちらも少量だと思いますが、乳酸はいわゆるフルーツ酸の一種で、ターンオーバー促進などの効果がありますし、PCAはアミノ酸由来の保湿成分で、よく知られた保湿剤。なので、このミックス成分は、植物エキスだけが効果をもたらしているわけではないのではないかと、実は疑っている私です(と、原料会社の営業担当の方に突っ込んだら、ものすごく嫌がられました。すみません。)

 

その後の2成分「ヘチマエキス」「マンダリンオレンジ果皮エキス」は、保湿成分としての配合ですが、どちらも美白成分としての報告があります。この辺りは確実に意識されているなと思います。

 

非常に興味深いのは、これら5種類の植物エキスの後に、ずらずらっとアミノ酸が並んでいる点。アラニン、オルニチンHCℓ、シトルリン、セリン、ヒドロキシプロリン、カルニチン、あたりまでが全てアミノ酸です。

 

角質層の保湿には、セラミドに代表される角質細胞間脂質と、NMFと呼ばれる保湿成分が必要ですが、このNMFを形成しているのがアミノ酸で、90年代のセラミドフィーバーの反動か、2000年代になって、資生堂を中心にNMFを重要視する流れが来ていたように思います。先に挙げた「スイカ果実エキス」「ヒラマメ果実エキス」「リンゴ果実エキス」も、実はNMFを増加させる作用というのが示されていて、どうやらこの製品を開発した方は、この辺りをかなり研究されている様子。

 

ただの保湿、というより、その先を見据えての処方配合のように思います。

 

もっとも、アミノ酸も配合しにくい成分で、独特の匂いの問題や、変質しやすさなどあり、そんなに高濃度で入っている感じではないので、効果のほどは「マイルド」だと予想されますが・・・

 

最後に補足として④その他の成分について。

 

先に挙げた乳化剤の後から始まる「ヒドロキシエチルセルロース」「クエン酸」「クエン酸Na」「水酸化K」「メチルパラベン」「香料」あたりが該当します。ヒドロキシエチルセルロース」は粘度調整、「クエン酸」「クエン酸Na」「水酸化K」はpH調整、「メチルパラベン」が防腐剤です。

 

防腐剤として、メチルパラベンだけというのは、ちょっと弱いなと思ったのですが、エタノールがそこそこ入っているので、大丈夫なのかなと。個人的な好みですが、最近はやりのノンパラベンとかアルコールフリーとかを表現するために、おかしな防腐剤を使ったりするより、潔くて好感度。もちろん、それらが苦手な方はいらっしゃることは知っていますしが、普通の肌の方なら、そこまで気にする必要はないというのが、私の意見です。

 

まあ、そんなこんなで、シンプルな処方だとか言いながら、長々書いてきたわけですが、まとめますと

 

「アイビー化粧品 ラ ベーシック モイストイン ローション」

・化粧水らしい化粧水。

・保湿力高い化粧水、浸透性高い化粧水を求める方には不向きかも。

・機能性成分はかなり優秀で期待できるが、長期使用向きかなと。

・エタノール、パラベン、香料が苦手な方は避ける必要あり。またコメ発酵液なども、合わない方がいるので、注意が必要。

・保湿力はそこそこレベルなので、乾燥肌にはこれ単体では不十分かも。クリームなどを併用することをお勧め。

・ベタつきが少ない、油分が少ないなどの特徴は、男性に好まれる感触かなと。

 

といった感じでしょうか。

 

化粧品技術者的には、かなり練りこまれているし、変な流行に乗ってない感じとか好感触なんですが、正直、ちょっと地味な印象がありますねえ。売れてほしい製品ですね。ものすごい個人的な感想ですが。