③手術前日の涙 | まみの両胸乳がん日記

まみの両胸乳がん日記

2015年に乳がん陽性が出ました。
両胸・全摘・インプラント再建済み。化学療法EC+TC半年間。ステージ2B.リンパ節転移3個,郭清レベル1。
6年間、定期的にマンモとエコーで4ヶ月毎に検査をしていても、中期になるまで陽性が出なかった不運。

ついに陽性が出て癌が確定しましたが、私はまともに泣いていません。
過去2回の針生検の時に不安と心配はたくさんしたので、涙のタイミングがずれてしまったのだと思います。
自分の為の涙は、今まで出ていないのです。

宣告を受けた時も、診察室で泣くとか、錯乱するとか、全然なかった。
なんだかぼーっとして、茫然自失でした。
やっぱりなぁ…みたいな。

家に帰っても同じ。落ち着いてる。
なんでしょう、全摘すれば大丈夫!みたいな変な自信?があったのかな。かなり前向きでした。
まだよくわかってないというか、無知なのもあったのかな。

でも、手術前日。
明日は乳房を全部取ってしまう。
お風呂に入る前に、中学3年生の娘達におっぱいを触らせて「固いでしょう。これが癌だよ」と教えました。

そして、夫がビデオを撮りました。
「今日は2015年6月3日です。明日はまみが手術で胸を取ります…」
と、夫は私のおっぱいをビデオに撮りながら。
…言葉が切れたのでよく見ました。

夫は泣きながらビデオを撮っていました。

私の為に泣いてくれる夫を見たら、私はもうダメでした。涙が出てきて。
でも、娘達にあまり涙を見られたくなかったので(両親が涙する事態を見せて不安にさせたくなかった)、なんとか涙を止めてお風呂に入りました。

癌が発覚する前は、夫と私は無関心というか、冷たい関係みたいな感じでした。喧嘩するわけでもないし仲が悪いわけでもないけれど、会話が少なかったと思います。前はもっと仲良しだったんですけどね。
夫はいつも帰りが遅くて、きっと仕事で疲れていて、不機嫌な態度で。リビングでひたすら夜中までテレビを見ている。私は私で、2階の寝室でいつも読書をしている。そんな感じでした。

だから、夫が涙を流して、私をそんなに心配してくれるなんて、びっくりしたのです。

私の心が氷解した瞬間でした。
夫を悲しませたくない。

その夜中、ぐうぐうといびきをかいて寝ている夫の隣で、またビデオの時の夫の涙を思い出して、私はひとり涙を流しました。
自分の身を悲しんでの涙はまだなのです。
癌についての涙は、子供を思っての前に、まさかの夫に泣かされました。

夫を泣かせるようなことは、できるだけ先送りしたい。夫を一人暮らしにはさせられないよ、可哀想だもん。
娘達を悲しませたくない。
娘達はまだ少女。
これから恋をして、結婚して、出産、育児。仕事も。
娘達にはとにかく幸せになってほしい。
それを全部そばで見守って、手伝って、孫の世話をする。それが私の目標。
そうだなあ。孫が小学校卒業するくらいまでは、元気な、可愛いおばあちゃんでいたい。

絶対に!



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