60 樹が教えてくれたこと⑧
私は目の前の巨木に触れながら
語り掛けていました。
「どうすればいいんですか・・・
どこに行けばいいんですか・・・」
しばらくの沈黙の後
突然頭の中に言葉が閃きました。
「ここにいればいい」
体がゾクッとしました。
まるで巨木に放し掛けられたように
感じたのです。
ここにいればいい・・・
どういうことだろう・・・
ここにいれば解放されるのか・・・
ここにいれば幸せな気分に
なれるのか・・・
いや、違う。そうじゃない。
この場所のことじゃないんだ・・・
私は内側に響いてきた言葉の意味を
必死で探していました。
そして気がついたのです。
そうだ!
私はここにいなかったんだ!!
自分の内側
自分の気分ばかりに集中して
今ここで起こっていることとのつながりを
失ってしまっていたんだ。
目の前の大きな樹
美しい朝日
駆け抜けていく爽やかな風
そう、ここにいればいい。
いつでもそれはここにある。
自分が見失いさえしなければ
いつでも幸せと豊かさは
ここにあるんだ。
自分を受け入れられず
自分を否定した途端に
自分とのつながりも世界とのつながりも
失ってしまうんだ。
私に必要だったのは
ここにいることだったんだ・・・
私は目の前の巨木に
両方の手のひらを当てながら
ありがとうと、つぶやいたのです。