初めての方へ
この物語は
トラウマ(心の傷)に関するカウンセリングを
テーマにした架空のお話です。
トラウマ(心の傷)に関するカウンセリングを
テーマにした架空のお話です。
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139 目立たず、何もせず、反応しない
カウンセラーは、ただ黙って
僕の話に耳を傾けてくれていた。
重い話をしているからこそ
そうしてもらえることが嬉しかった。
僕は話を続けた。
「父が蒸発してから
母が酒に溺れることが
より酷くなりました。
小学校の卒業式や
中学校の入学式にも
母は来てはくれたのですが
酒を飲んでいました。
中学校に入ると
いじめがますます激しくなり
僕は自分の気持ちを外に
表さなくなりました。
目立たず何もせず
何に対しても反応しない
そういった護身術のようなものを
身に付けていったのです。
今、振り返れば
心に厚い壁を作って
自分の怒りや、本音が
外に漏れ出ないように
気を付けていたのだと思います。
学校も休みがちでしたが
中学校3年生になると
護身術が功を奏したのか
いじめが少しずつ収まってきました。
その頃の僕は
クラスではほとんど話さない
目立たない生徒だったと思います。
母は酒を飲んで
家に帰ってこないことも
たびたびありました。
近所の人や警察から
母が道で寝ているから
引き取りに来てほしいという電話が
入るようになりました。
中学生の頃の多感な
僕や妹にとっては
とても辛い電話だったことを
憶えています。
高校に入ってからは
いじめはほとんど収まりました。
目立たずに生きていくことが
すっかり身についていたのだと
思います。
ただ、この頃になると
街中を歩いていると
人の目が気になって
仕方がないということが
よく起こるようになりました。
自分が馬鹿にされているような
さげすまれているような
乱暴そうな人から
急に暴力を振るわれるのではないか
というような怖れを感じるように
なっていました。
さらに、その頃に
ショックなことが起こりました」