初めての方へ
この物語は、実際のカウンセリングのやりとりを
テーマにした架空のお話です。
まずは、プロローグから、お読みくださいね。
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16 消えた幸せ
カウンセリングルームから出ると、前と同じように
体が軽く感じた。今はその理由が分かっていた。
内側に争いを抱えていなかったからだ。
気持ちは静かに落ち着いていた。
日差しをより眩しく感じるのも
風景が輝いて見えるのも
自分が自分を攻めたてず
駆り立てていないからだと思った。
僕は自分が自分しか見ていなかったことを
あらためて感じていた。
皮肉なことに自分をちゃんと見つめることで
自分しか見ていなかったことから解放された。
カウンセリングを受けた後は
世界が美しく見えたが本当は違うんだ。
世界ははじめから光り輝き、はじめから美しい。
ただ僕には見ることができなかっただけなんだ。
そんなことを考えながら歩いていると
道端に小さな花が咲いていることに気づいた。
来るときは、全く気づかなかった花だ。
その花に顔を近づけてよく見ると
花びら一枚一枚の美しさに唖然とした。
周りから浮き出ているように見えた。
そこには、言葉にできない存在感があった。
僕はただ嬉しくて笑った。
周りから見たら、おかしい人に思われたかもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。
公園のベンチで腰かけて、深呼吸をした。
空気がおいしかった。周りの樹々から
エネルギーを与えてもらっているような気がした。
自然とつながっているような気持ちになり
深い安心感と、満たされた気持ちを味わっていた。
これがカウンセラーがブログに書いていた
「幸せ」なんだろうか・・・
だとしたら、僕が思っていた幸せとはかなり違うけど
一番望んでいたものかもしれない。
ずっとこの幸せの中にいたいと思った。
「でも、本当にずっとこんな幸せを感じ続けることが
できるのだろうか・・・
またあの苦しみが始まるんじゃないのか・・・」
そう思ったとたん、急に不安になった。
自然とつながっている感じが、一瞬にして消えた。
もう一度、つながっている感じを取り戻そうとしたが
だめだった。
いつもの自分に戻ってしまったような気がした。
僕は本当にこの苦しみから逃れられるのだろうか・・・
先ほどの花に気づくこともできずに
僕は帰り道を急いでいた。