おはようございます。英語の先生の、りょうきです。

 

先週の、大阪大英作文。できましたか。

 

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【問】次の文章を、英語で表現しなさい。

 

 いよいよ神様に召されるその時が来て、この世とのお別れの記念にこれまで愛聴してきた数多の名曲の中からただ一曲を聞きながら死んでゆけるとしたら、どの曲を自分は選ぶだろうか。

 一人私に限らず、時間と共に消えてゆくゆえに美しい音楽の愛好者なら一度はこの問いを自らに発して楽しいような切ないような思いに暫し浸ったことがあるのではないか。

 

熊沢雅晴「最期の一曲」

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前半と後半に分けましょう。まずは前半から。

 

 いよいよ神様に召されるその時が来て、この世とのお別れの記念にこれまで愛聴してきた数多の名曲の中からただ一曲を聞きながら死んでゆけるとしたら、どの曲を自分は選ぶだろうか。

 

これは、単純に訳しにくいだけです。「神様に召される」とか「この世とのお別れの記念に」とか。だから、その日本語の空気感を大切にしながら、訳します。

 

What piece of music will it be to celebrate my departure, should I be granted to choose only one to enjoy then among many masterpieces I’ll have loved when He finally wants me back?

 

…とか、どうでしょう。

 

「神様に召される」は、He wants me back. にしました。文中でどこに出ようとも、「私」のIは常に大文字ですが、「神」を指すとき、文中のどこであっても大文字のHでHeにします。ちなみに、どこでもF大文字のFatherも「神」であり、どこでもM大文字のMotherは「聖母マリア」です。

 

「この世とのお別れの記念に」は、いろいろ考えたんですけどね。celebrate my departure にしました。departureは、「出発」「旅立ち」です。そのお祝い。門出を祝うかんじ。

 

文中のshould I be granted to choose only one は、仮定法を倒置しています。

つまり本来はif I should be granted to choose only oneです。

grantは、「与える」「許す」の意味です。ただ、主語が神様に限るという珍しい動詞です。

だから、基本的には受動態で使います。能動態で、しかもI grant…とかは、やりません。

 

ということで、私の英語を、再び日本語に訳してみると、こんなかんじ↓

 

「私の門出のお祝いは、どの曲になるのだろう。神がいよいよ戻ってこいと言うその時にenjoyするために、その時点でたくさん愛しているであろう名曲たちの中から、一つだけ選ぶことを神に許されたなら?」

 

前半終了。後半に行きます。

 

 一人私に限らず、時間と共に消えてゆくゆえに美しい音楽の愛好者なら一度はこの問いを自らに発して楽しいような切ないような思いに暫し浸ったことがあるのではないか。

 

後半が、勝負です。ここで何か見えないといけません。

見えるべきは、「楽しいような切ないような」の「切ないような」です。

ここにピンとくる。切ない?何が切ないのか?

 

なぜ切ないかのヒントが、ちゃんと書いてあります。

「時間と共に消えてゆくゆえに美しい」です。ここが、最大のヒントです。

 

仮に音楽の価値そのものが、時代で変わるとしても、それは関係ないはずです。

だって自分で好きな曲を選べるので、世間で時代遅れだとされていようが、関係ない。

ところが、完全に自分の好みの話だけをしていいのに、それでも「時間と共に消えてゆく」。

 

ここで、自分に置き換えて考えます。

 

例えばあなたが中学生の時、一番聴いた曲はなんですか。

もう毎日それを聴いて、それを基準にマイベストみたいな編集までしたんじゃないんですか。

 

あるでしょう、そういう曲。どハマりした曲。

 

そのうえでもう一つ聞きますが、当時と同じだけ、今もその曲好きですか。

当時のどハマりと同じテンションで、今日今からその曲を聴けますか。

 

どハマり曲は、というかそのどハマりは、一時的なんです。

その曲を嫌いになったわけじゃないけど、当時のテンションは、今はない。

 

そうやって、その時その時で、どハマりは変わっていくんです。

それが音楽の楽しいところなんですね。音楽にハマるって、そういうことだと。

 

そうすると、これから天に召されるまでの期間で、どんな曲にハマるのかはわからない。

30年後に召されるとして、その時にハマっている曲は、今は見えない。

でもきっと何かにはハマっている。それはそれで楽しみであって、だから「楽しいような」があります。

 

そうすると、例えば今とある曲にハマっているとします。

「これを聞いて死んでいくんだ」と今は思っていても、30年後はわからないでしょう。

ていうか、きっと違う曲だと思います。音楽って、そういうものだから。

 

その時、今のその曲は、おそらく選ばれないんですね。こんなに好きなのに。

 

そう考えると、今こんなに好きでも、その時になると多分選ばれない。

何か切ないですね。寂しいですね。それが「切ないような」です。

 

この感覚が見えたかが、問われています。

「楽しいような切ないような」だけで、以上を全て理解しないといけない。

 

で、それが見えたなら、そのように英語で表現しないといけません。

 

こんなのできました↓

 

Seeking the answer in the self for a while, I am not the only one that should be happy with the one but missing all the rest, for I know the climax of favor has been temporary so that music can be enjoyed.

 

「自身の中で答えを探すと、選ぶ曲にご満悦であろうと同時に、選ばなかった残り全てをmissingしているであろうは、私だけではない。なぜなら、贔屓(ひいき)のclimaxは無常であり、だから音楽はenjoyされることを、私はわかっているから」

 

うちの校長(国語)曰く、「切ない」は「切々な」つまり「切るような」気持ちであると。

 

昔大好きだったぬいぐるみを、ふと今の目線で眺めたときのような。

そしてひょっとしてそれを処分しないといけない時に感じるであろう気持ちのような。

 

想像するだけで、キュッと心が切られるでしょう。それです。

それに近い英語を探すんです。sadは近いけど、ちょっと違う。

私はmissingにしました。「いなくなって、自分の心にぽっかり穴が」みたいな。

他には、hurtとかも近いと思います。要は心がキュッと切られたらいいんです。

 

だからここらへんの英語にこだわっていない解答は、おそらく気づくべきに気づいていない。

したがって、点は下がります。要求していることに答えてないから。

 

日本語通りの英語じゃない、つまり意訳しすぎじゃないかって?

大丈夫です。問題の指示が「訳せ」じゃなくて「英語で表現しなさい」でしょ。

その指示すらも、大きなヒントです。

 

<解答例>

 What piece of music will it be to celebrate my departure, should I be granted to choose only one to enjoy then among many masterpieces I’ll have loved when He finally wants me back?

 Seeking the answer in the self for a while, I am not the only one that should be happy with the one but missing all the rest, for I know the climax of favor has been temporary so that music can be enjoyed.

 

難しいですねぃ(笑)。

 

でも、よく考えさせられます。こうやって、言葉に対する感性は磨かれていく。

 

提出してくれたみなさんは、お疲れ様でした!

 

どうぞ良き一日を(^^)