家電主役、黒から白に
国内外で市場急拡大
薄型テレビの販売激減にあえぐ家電メーカー各社が、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの「白物家電」を重点強化している。国内では、「節電ニーズ」から省エネ機種が好調で、先月の出荷額が8か月ぶりにプラスに転じた。海外でも新興国で購買力のある「中間層」が爆発的に増え、市場が急拡大している、。テレビなどの「黒物」をカバーする救世主として、「白物」にかける期待は大きい。
日本電機工業会(JEMA)が26日発表した白物家電の2月の国内出荷額は前年同月比3.7%増の1573億円と、昨年6月以来のプラスを達成した。主要製品別では、冷蔵庫が16.0%増の251億円、洗濯機は14.3%増の237億円と大きく伸び、エアコン0.5%増の403億円と、好調だった前年並みの水準を維持した。
白物家電は、東日本大震災と原発事故による電力不足で消費者の節電意識が高まり、家庭内で最も消費電力の多いエアコンを中心に買い替えが進んでいる。昨年7月以降は家電エコポイント終了による反動で前年割れが続いていたが、平成23年4~9月期は15年ぶりの高水準を維持した。
海外市場でも中間層の拡大を受け、富裕層向け中心のラインアップを転換し、低価格品を充実させ先行する韓国サムスン電子とLG電子を猛追している。24年3月期に7800億円の最終赤字を見込むパナソニックの大坪文雄社長は「厳しい経営環境の中、2桁成長を続けている」と牽引(けんいん)役を託す。
同社は白物家電の海外売上高比率を23年度の50%から27年度に60%まで高める計画を打ち出している。インドでは機能を絞って価格を3万円以内に抑えたエアコンを投入。23年度の販売台数は前年度比2倍を見込む。電力供給が不安定なインドネシアでは、省エネ性能を高めるなど、サムスンなどに比べ遅れていた「現地化」でも巻き返しを図っている。
また、液晶テレビへの依存体質からの脱却が課題となっているシャープは25年度中にインドネシアで冷蔵庫と洗濯機の新工場を稼働させる予定だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域での売上高を「早期に現在の1300億円から3千億円に増やす」と意気込む。これまで主力だった薄型テレビの国内出荷台数は前年の4割程度という超低空飛行が続いており、今年は昨年の1982万台から半分以下になるとみられている。値崩れも底なしだ。
電機担当アナリストは「白物家電は高機能化に伴い単価も上昇しており、テレビに比べて値崩れが小さい」とメリットを指摘。「『黒物』から『白物』に主役が交代する可能性もある」と予測している。