『一兵士の死をこの上なく尊く思ふ』
遺書
美しい祖國は、おほらかな益良夫マスラオを生み、
おほらかな益良夫は、けだかい魂を祖國に残して、新しい世界へと飛翔し去る。
「現在の一点に最善をつくせ」
「只今ばかり我が生命は存するなり」
とは私の好きな格言です。
生れ出でゝより死ぬる迄、我等は己の一秒一刻に依って創られる人生の彫刻を、悲喜善悪の修羅像をきざみつつあるのです。
私は一刻が恐ろしかった。
一秒が重荷だった。
もう一歩も人生を進むには恐ろしく、ぶっ倒れさうに感じたこともあった。
しかしながら、私の二十三年間の人生は、それが善であらうと、悪であらうと、悲しみであらうと、喜びであらうとも、刻み刻まれてきたのです。
私は、私の全精魂をうって、最後の入魂に努力しなければならない。
私は誰に知られずにそっと死にたい。
無名の幾万の勇士が大陸に太洋に散っていったことか。
私は一兵士の死をこの上なく尊く思ふ。
国民の遺書
「泣かずにほめて下さい」靖國の言乃葉100選より
昭和20年6月
沖縄方面にて特攻戦死 22歳海軍大尉