「忍・美穂の日」に行って来ました。
1部 お芝居 雪化粧
*配役*
花村一座
座長で花扇の亭主 千之助*椿裕二座長
太夫元の娘 花扇(お花)*美穂裕子リーダー
千之助の母*夢路えみさん
座員*椿キラさん・椿みらんさん
市川団十郎*大川忍副座長
借金取り*大川忍副座長・椿たくみさん
居酒屋の店主 たつ*椿孝也花形
泉屋のお嬢さん*大川礼花花形
*あらすじ*
1場:楽屋
「亭主の千之助の前に出る芝居をする。」とおかんむりの千之助の母。
楽屋に戻った千之助も、「自分だけ目立とうとする。脇役の気持ちを考えろ。」と女房の花扇を叱り付ける。
博打場で借りた金を返せと借金取りがやって来るが、「無いものは返せない。」と居直る千之助の母。
代わりになる着物を持って行こうとする借金取り。
花扇が現れ、二円の借金の肩代わりをする。
そして、「これで出掛けて来て下さい。」と小遣い銭を義母に手渡す。
口では礼を言うが、中身を見て、「たったこれっぽち!これじゃ、酒も飲めやしない。」とうそぶく千之助の母。
泉屋のお嬢さんが千之助に会いたいとやって来る。
「千之助さんが私をお嫁様にしてくれるっておっしゃるもんですから、家を出て来たんです。」と言い店から持ち出して来た百円を見せる。
千之助は、「劇団を辞めさせて頂きます。」と書置きし、母と泉屋のお嬢さんと三人、花村一座を後にする。
書置きを見つけた座員が千之助たちの後を追おうとするが、それを止める花扇。
「劇団を続けて行くのかたたんでしまうのか、お父つぁんと話し合って決めるわ。」と言う花扇に、座員たちは、「お嬢様の舞台に惚れて入って来たんです。」と言い、花扇に付いて行くと言う。
「有難う。お前たちが私に付いて来てくれる限り、この花村一座は私が守って見せるわ。」と心を決める花扇。
2場:居酒屋
一年後…
舞台を終えた市川団十郎が一人でやって来て、奥の座敷を借りる。
花扇は一座を立て直そうとするも、父親である太夫元が亡くなり、幼なじみの居酒屋の店主のたつに相談にやって来る。
「私の事を気に入って下さると言う近江屋の旦那様に口利きしてほしいの。私ね、買ってほしいの。」と頼む花扇に、「芸は売っても体は売らないと言ってたじゃないか。」といぶかるたつ。
持参した着物の包みを見せ、「こういった物一切合切売ったお金で座員さんの給金を払い、一座をたたもうと思っているの。」と言う花扇。
「口を利いてしまったら、花ちゃんが一座を辞める役者を辞める手伝いをしている様なもんじゃないか。そんな事、出来ない!」と断るたつ。
店の奥から、「その荷物、私が引き取ってやろうか。」と団十郎が現れる。
花扇から訳を聞いた団十郎は、「その荷物、俺が引き取らせてもらう。百円でどうだろうか。その代わり頼みがあるんだ。向こう三年間は役者を辞めないと誓ってくれないか。興行収入で貰った百円と別に五十円、合わせて百五十円、持って行きなさい。」と言う。
たつから、「市川団十郎の先生だよ。」と聞かされた花扇は無礼を詫び、改めて御礼を言う。
「桧木の上に立つ役者も、そうじゃない板の上に立つ役者も同じ役者に変わりはねえ。立派な役者におなりなせえよ。」と言い居酒屋を後にする団十郎。
団十郎を見送った花扇は、「本当に良かった。お父つぁん、これからもこの私の事、ずっとずっと見守っていて頂戴ね。」と安堵する。
3場:居酒屋前
目も見えず歩く事の出来ない老婆をいざり車に乗せ、その紐を引っ張りやって来た貧しい身なりの二人連れ。
二人は千之助と千之助の母だった。
「寒いよ。お腹が空いたよ。」と言う母の為に、居酒屋の店主のたつに、「何か捨てる物でも良いです。恵んで頂けませんか。」と頼む千之助。
「これだけしか有りませんが。」と甘酒を持って来るたつ。
そして、「明日、新富座で花扇の襲名披露公演があるんですよ。お師匠さんの三回忌の追善興行も一緒にやるんです。」と話す。
若い女とどろんした亭主の千之助とその母親の悪行の数々までも話したたつは、その二人連れを見て、「もしかしたら…」と言うが、千之助は、「その人のお母さんは目が見えて歩けるんですよね。うちのお袋、一歩たりとも歩く事も、自分で立つ事も出来ないんですよ。一寸先も見えません。」と否定する。
たつは人違いを詫びると店番を頼み、新富座に差入を持って行く。
「この近くに、贔屓のお客さんが住んでた。何か恵んでもらえるかもしれない。」と言い出掛けようとする千之助に、「千よ、お前、おっかさんを捨てるつもりじゃないだろうね。」と不安を口にする母。
「捨てられた人間の気持ちが分かった。二度と人を捨てちゃならないと思った。直ぐに帰って来るから。」と言いその場を後にする千之助。
雪がちらつく中、通り掛かった花扇は凍えながらいざり車に座っているのは義母だと気付き驚く。
そして、目が見えていないと分かると、自分が差していた傘と財布をそっと手渡す。
何も知らず、「有難うございます。」と礼を言う千之助の母。
そこへ戻って来た千之助。
「この金だけは受け取る事は出来ない。」と言い花扇に財布を返す。
「明日、襲名披露なんだってな。師匠が死んだ事も知らずにごめん。」と言いその場を去ろうとする千之助に、「何処へ行くの。」と尋ねる花扇。
「行く当てなんてねえよ。もう二度とお前の前には姿は出さない。頑張って下さい。」と答える千之助。
「お花、おっかさんたちを助けておくれ。」と哀願する義母。「もう、止めてくれ。これ以上、みじめになりたくねえ。」と言う千之助に、「せめて、お父つぁんに線香の一本、あげて行ってはくれない。」と言う花扇。
千之助は、「師匠に顔向けできない。」と言う。
そこへ戻って来たたつが、これまでの花扇の苦労を思い、千之助に殴り掛かろうとする。
花扇は、「そこに居るのは私の亭主なのよ。私は離縁になった覚えはないのよ。だから、丸髷を結いながら亭主の帰りをずっと待っていたの。」と止める。
その様子を見ていた団十郎が現れ、「この三年で、役者としても立派になったが、人としても立派になりなすった。」と花扇を称える。
「明日の襲名披露、御亭主にも出て貰ったら。」と言う団十郎の言葉に、「明日のお父つぁんの追善興行、一緒に出てはくれない。」と頼む花扇。
「俺には資格なんてねえ。」と答える千之助。
「私はあなたと一緒に舞台に立ちたいの。」と言う花扇に、涙ながらに詫びる千之助。
「おっかさんを許しておくれ。」と詫びる義母。
「義母さん、随分と苦労したご様子。私の側を離れるからでしょ。これからはもう二度と離れちゃ嫌ですからね。」と言うと自分の羽織を掛ける花扇。
「これで私の苦労も実になった。」と言い、花扇は義母を乗せたいざり車の紐を自らの手で持ち、千之助と共に帰って行こうとする。
大川礼花花形演じる泉屋のお嬢さんの「百円 ♪百円 ♪百円 ♪」が耳に付いて離れない
前半は笑って、後半はホロッとして…
口上挨拶
椿孝也花形
大川礼花花形
椿キラさん
椿みらんさん
椿たくみさん
2へ続く…