昼の部より続き…

 

1部 お芝居 男の絆 仇討ち甲州路

*配役*

妙見一家

親分 虎太郎*劇団美川 美川慶二座長

子分 新田の又八*椿孝也花形

 

不動一家

親分 英五郎*英虎博さん

女房 お美代*美穂裕子リーダー

 

お美代の弟 相模屋十兵衛の倅 十吉*大川礼花花形

 

黒駒一家

親分 勝蔵*椿裕二座長

代貸 大岩*大川忍副座長

子分*椿キラさん・椿みらんさん

 

 

*あらすじ*

1場:不動一家

十吉がお美代の許へやって来る。

「父つぁんは殺されて、もうこの世の人じゃねえんだ。新田の又八に斬られた。新田の又八の親は妙見の虎太郎なんだ。その虎太郎の親は黒駒の勝蔵。義兄貴に力を借りたい。」と言う十吉に、「内の人と妙見の虎太郎さんは盃を分けた飲み分けの兄弟分。こればかりは聞く事は出来ないよ。」と詫びるお美代。

英五郎が現れる。

「力になってくれるだろうな。」と頭を下げる十吉に、「俺と妙見の虎五郎とは盃を交わした五分の兄弟だ。力を貸す事は出来ねえ。後は俺に任せてくれ。」と言い盃と刀をお美代に持って来させると、「俺が戻って来るまで、馬鹿な真似だけはするな。お美代、十吉、俺の帰りを待ってろよ。行って来る。」と言い、虎太郎と交わした盃を懐に忍ばせ妙見一家へ向かう英五郎。

「うちの人の帰りを待つ事にしよう。」と言うお美代に、「姉さん、すまねぇ。」と詫びる十吉。

 

2場:妙見一家

妹を手籠めにしようとした相模屋の親分を手に掛けてしまった経緯を話し、「不動の親分が来た際には、あっしとは何の関わりは無いと言ってやって下さい。」と頭を下げる又八に、「この事は俺に任せてほしい。」と答える虎太郎。

英五郎がやって来る。

「何も言わねえで、こっちに渡してくれねえか。」と言う英五郎に、「自分の子供が殺されると分かっていながら出す親は何処にもいない。黒駒勝蔵親分をかさにしてでも、又八は守って見せる。」と断る虎太郎。

「盃が割れりゃ赤の他人。」と言い懐から出した盃を刀の鐺(こじり)で割る英五郎。

帰って行こうとする英五郎に、「俺は明朝、新田の又八を連れて、黒駒親分を訪ねる。その道中通るのが庚申塚。」と告げる虎太郎。

「不動の親分に斬られて参ります。」と言い、英五郎の後を追おうとする又八を、「病のお袋さんはどうする。」と止める虎太郎。

 

3場:黒駒一家

やって来た虎太郎は、「何も言わずに受け取っておくんなさいまし。」と勝蔵親分に盃を差し出す。

「相模屋の貸元が殺され、殺したのは新田の又八。新田の又八の親はおめえだ。相模屋の貸元の娘婿は不動の英五郎。おめえと不動の英五郎とは飲み分けの兄弟。」と見当が付いている勝蔵親分に、「何も言わずに受け取って下さい。」と言う虎太郎。

「黙ってこの盃は預かる。」と言う勝蔵親分に、虎太郎は、「あっしの何があろうと、親分の出張るのだけはなさらないで下さい。」と頼む。

「俺が出張れば誰も傷つかずに済むが、今度一度切り約束しよう。」と言う勝蔵親分に、「親分、今日のこの日まで、長々お世話になりましてございます。御免なすって。」と言い黒駒一家を後にする虎太郎。

その後姿を見て、「皆、虎は死ぬ気だ。」と呟く勝蔵親分。

 

4場:庚申塚

妙見一家を待ち伏せる英五郎と十吉。

妙見の虎太郎と又八がやって来る。

「そこに居る又八は俺が討つ。」と言う英五郎。

刀を交える二人だが、英五郎の刀の先を自分の腹に突き刺す虎太郎。

虫の息の中、「こうするより他に道は無かったんだ。あいつには夢が有るんだ。病のお袋さんに親孝行させてやりてえ。俺の命と引き換えに、新田の又八の命だけは助けてやってくれないか。」と頼み息を引き取る虎太郎。

虎太郎の変わり果てた姿を目にした又八は、「勝蔵親分に盃を返して、てめえらには何の災いも掛からない様にしたんだ。」と言い刃向かうが十吉に刺されてしまう。

止めを刺そうとする十吉を止める英五郎。

黒駒一家がやって来る。

「女房子供を恋しいと思う気持ちも、虎が又八を庇う気持ちも、俺が虎を我が子の様に思う気持ちも、みんな同じなんだぞ。今日はこいつとの約束が有る。黙って見逃そう。」と言う勝蔵親分。

刃向かおうとする十吉を止め先に帰らせる英五郎。

「そこに居る妙見の虎太郎の名前を背負ってまいりましょう。」と言いその場を後にする英五郎。

「この盃は地獄の底まで持って行け。」と言い虎太郎の傍らに置き、「悔しいよな。新田の又八、妙見の虎太郎、惜しい命を散らしちまったな。」と手を合わせる勝蔵親分。

 

 

親が子を思い、子が親兄弟を思う。

血の繋がりをも上回る盃を交わすと言う事。

「義理と人情を秤にかけりゃ、義理が重たい男の世界」

 

 

口上挨拶

椿孝也花形

 

 

椿キラさん

 

2へ続く…