早くに起きたのに、バタバタで劇場へ走る人

 

1部 お芝居 人情廻り舞台

*配役*

清水次郎長一家

親分 次郎長*咲田せいじろう副座長

子分 大政*松丸家こももさん

子分 小政*松丸家美寿々さん

 

老爺*松丸家小弁太座長

成田屋太夫*松丸家ちょうちょさん

 

 

*あらすじ*

1場:清水次郎長一家

「酒を飲むな。博打をするな。喧嘩をするな。」と止められぼやく小政に、「親分に直接、訳を聞いてみれば良いじゃないか。」と言う大政。

現れた次郎長親分に訳を尋ねる小政。

次郎長親分が保下田の久六を斬った刀を奉納する為、石松が代参の旅に出る折に、「酒を飲むな。博打をするな。喧嘩をするな。」と言い付けていた次郎長親分は、「石松が戻って来るまでは我慢してくれ。」と答える。

次郎長親分に会わせてほしいと老爺が訪ねて来る。

「一度で良いので差しの勝負をしてほしいのです。お親分さんは人情に厚いと聞いてやって来ました。」と言う老爺に、「俺は訳が有って相手をする事が出来ない。ここに居る大政が相手で構わないか。」と言う次郎長親分。

有り金全部六十五文を賭ける老爺に大政は三両賭ける。

老爺は張り目を度々変え、丁と賭けるが賽の目は半と出る。

「この老いぼれの命を賭けます。」と言いもう一勝負を頼む老爺に訳を尋ねる次郎長親分。

「以前は江戸の桧舞台に立った事のある成れの果てです。」と言い、訳を話す老爺。

「江戸の成田屋へ弟子入りし、ある時、急な病の兄弟子の代役で舞台に出る事になり、師匠に褒められ、目を掛けてもらうも、身に覚えがない事を心無い兄弟子の師匠への告げ口で破門され出て行く事に。師匠の一人娘が止めてくれるが、一度だけ垣根を越えたその娘のお腹の中には子供が出来ており、駆け落ち同然に二人で小さな地方周りの一座へ身を寄せました。成田屋に頼まれた土地のならず者に、無理矢理女房を連れて行かれ、寂しさを紛らす為、酒を飲み舞台に上がる喧嘩をするでその一座も追い出され、そんな時、掛川の芝居小屋から囃子の音が聞こえ中に入り、舞台の太夫を見ると師匠の若い時にそっくり。お茶子に尋ねたら、成田屋の娘の一粒種の子供と聞き、俺が親父だと親子名乗りしようと思ったが、こちらは小汚い老いぼれ、相手は成田屋の太夫。江戸に帰れば名代披露が有ると聞き、命を掛け祝いをしてやりたい。」と話す老爺に、「力を貸してやろうじゃないか。掛川の興行が終わって、江戸へ戻る途中のこの清水港で興行を打って貰らい、親父さんは興行が済むまで網元と言う事で。」と言うと、老爺に自分の紋服を貸す。

 

2場:料亭座敷

清水港での興行も大盛況に千秋楽が無事に終わった宴席で、舞を披露する成田屋の太夫。

舞が終わると、次郎長親分の計らいで網元に仕立てられた老爺と成田屋の太夫は二人切になり酒を酌み交わす。

「初心を忘れる事無く…」と言う老爺に、「母も網元様と同じ事を言ってました。」と言う太夫。

「お母様は。」と尋ねる老爺に、「母は達者で、江戸で私の帰りを待っています。」と答える太夫。

「お父様は。」と尋ねる老爺に、「以前は立派な役者と聞いております。私が幼い時に流行病で亡くなったと聞いております。母は嫁にも行かず婿もとらず、たった一人で女手一つで私を育ててくれたんです。」と答える太夫。

「お母様の御恩だけは決して忘れちゃなりませんよ。」という老爺。

「旅の仕度が整いました。」と声が掛かり中座する太夫。

太夫が座敷を出た後、太夫の座っていた座布団を子供の様に抱き、子守の真似をすると泣き崩れる老爺。

そこへ現れた次郎長に涙ながらに礼を言う老爺。

旅立ちの用意が出来、太夫が挨拶に戻って来る。

「江戸に帰っても、網元さんの事を忘れちゃならない。」と言う次郎長親分に、「母に手紙を出したなら、お世話になった方の思い出の何かを頂いてきたらとの返事。網元様の思い出の品を何か頂けませんでしょうか。」と言う太夫。

網元の羽織が所望と言う太夫に、借物の羽織と困惑する老爺だが、次郎長親分が計らう。

「着せて差し上げましょうか。」と問う老爺に、「着せて頂けますか。」と答える太夫。

「どうぞ、持ってお行きなさい。」と太夫にその羽織を掛ける老爺。

「名代披露の折には網元を連れて駆け付けるとは言ったが、網元もこの歳だ。これが最後になるかもしれない。網元さんの為に、ひとさし舞ってやっておくんなさい。」と頼む次郎長親分に、「承知いたしました。お世話になった網元様にご恩返し。」と快諾する太夫。

太夫が披露する口上に合せるように口上する老爺。

「その声色は…その声色は…まさか…」と驚く太夫に、「夢じゃ、夢じゃ、昔の夢じゃ。」と顔を背ける老爺。

後ろ髪引かれつつも、「おさらば。」とひとさし舞いながら座敷を後にする太夫。

「親分、有難うございます。」と次郎長親分に手を合わせる老爺。

 

 

成田屋の太夫役のちょうちょさん、声色を変え、凛として極まっていました。

親子名乗り出来ずとも、太夫の母・太夫は分かったに違いはなく、次郎長親分の計らいに手を合わせ感謝する老爺にホロッとします。

「シミーズのズロース親分」に爆笑。

清水次郎長親分も時を経て、こんな風に言い換えられるとは思ってもなかったでしょう笑

 

 

口上挨拶

松丸家小弁太座長

 

 

松丸家美寿々さん

 

②へ続く…