「座長の日」、沢山のお客様で賑わう中、開演致しました。

 

1部 お芝居 沓掛時次郎

*配役*

沓掛時次郎*椿裕二座長

 

中野川一家 

六ツ田の三蔵*大川忍副座長

女房 おきぬ*美穂裕子さん

倅 太郎吉*椿キラさん

 

旅籠屋

主人*大川忍副座長

女房*夢路えみさん

 

敵対する一家*大川礼花さん・椿孝也さん

 

 

*あらすじ*

1場:三蔵の家の前

中野川一家を一人守っていた三蔵。

家族を守る為、遠州浜松の伯父御の所へ向かおうとするが、一旦、おきぬと太郎吉を村外れの水車小屋で待たせる。

敵対する一家の子分たちがやって来る。

子分たちだけでは三蔵に太刀打ち出来ず、助っ人の時次郎を呼ぶ。

時次郎は一対一の勝負を望み、子分たちが手出しする事を拒む。

名乗り合ったうえで、「一宿一飯の渡世の身。」と言い、三蔵と刀を交える時次郎。

三蔵は時次郎に斬られてしまう。

虫の息の中、「お前さんを男と見込んで頼みが有る。」と言う三蔵に、「あっしに頼みとは…」と尋ねる時次郎。

「あっしには女房子供が居ます。村外れの水車小屋で待っている二人を、あっしになり代わり、遠州浜松の伯父御の所まで送り届けてもらいたい。女房は身重な体。身二つになるまで、見届けてもらえますか。」と頼み息絶える三蔵。

おきぬと太郎吉がやって来る。

変わり果てた三蔵を見て泣き崩れるおきぬと太郎吉。

「三蔵さんを斬ったのはこの沓掛時次郎。」と言い、三蔵の今際の際の言葉を伝える時次郎に、「ちきしょう。」と斬り掛かろうとするおきぬ。

時次郎は三蔵に自分の羽織を掛け手を合わせると仇討される覚悟で居住まいを正す。

追っ手の気配におきぬと太郎吉をその場から逃がす時次郎。

三蔵には女房子供は居ないと聞いていた時次郎は、現れた追っ手たちに、「よくも騙したな。お前らだけは許さないぞ。」と言い残し、おきぬと太郎吉の後を追う。

 

2場:旅籠屋

病の床に伏せているおきぬの面倒を見る旅籠屋の主人と女房。

仕事を見付けられずに帰って来た時次郎に、「おきぬさんに子供が産まれたら何かと金が要るだろう。お金は有るのか。」と尋ねる宿屋の主人。

首を横に振る時次郎に、旅籠屋の主人は、「金儲けの話が有るんだがね。八丁徳一家と聖天一家の喧嘩出入が有り、日頃から世話になっている八丁徳の親分が、今夜の暮れ六つから明け方まで助っ人をしてくれたら、小遣いをやると言ってるんだ。」と言う。

「おきぬさんたちを遠州に送り届けなければいけない。俺にもしもの事が有ったら…」と一旦は断る時次郎だが、助っ人料は一両と聞き、「俺、やらせてもらいます。」と引き受ける。

太郎吉に手を引かれ、おきぬが現れる。

おきぬには、「向島の御大臣様の許へ歌を歌いに行く。相方にはおじさん。」と嘘を付く時次郎。

「時さん、帰って来ますよね。今、時次郎さんが出て行ったのなら、二度と私や太郎吉の前には帰って来てくれない様なそんな気がして。」と言うおきぬに、「用事が済めば帰って来ますよ。今度、三人で桜を見に行きませんか。そこで聞いて貰いたい話が有る。」と言う時次郎。

喧嘩場へ向かおうとする時次郎と旅籠屋の主人。

草履の鼻緒が切れた時次郎に、「厄落としと思えば良いじゃないか。」と言う旅籠屋の主人。

 

「この一両、おきぬさんに必ず渡してくれよ。」と頼む時次郎に、「任せてくれ。」と答える旅籠屋の主人。

 

3場:旅籠屋

「時さんはまだでしょうか。」と時次郎の帰りを床に伏せ待ちわびるおきぬ。

時次郎から預かった一両を差し出す旅籠屋の主人に、「おじさん、有難う。」と言うと、「おばさん、紅を持って来て頂けますか。私、顔色悪いでしょ。髪だってこんなに乱れてる。せめて、時さんが帰って来て嫌われない様、紅だけでも差しておきたいんです。」と頼むおきぬ。

「今、持って来るから待ってるんだよ。」と紅を取りに行く旅籠屋の女房。

「おじさん、長い間、お世話になってすいません。何のお返しも出来ず本当にすいません。後に残ったこの子の事だけお願いします。」と宿屋の主人に話し、「太郎吉、おじさん、おばさん、時さんの言う事を聞くのよ。」と太郎吉に話す。

紅を持って来た宿屋の女房に、「どうしても一人で紅を差す事が出来ない。おばさん、手伝って。」と言い紅を差し終えると、「おばさん、有難う。」と礼を言うおきぬ。

そして、「時次郎さん。」と名を呼ぶとそのまま息を引き取る。

戻って来た時次郎に、「時さん、遅かった。」とうな垂れる旅籠屋の主人。

「おきぬさん、遅くなってすいませんでした。おきぬさんに初めて嘘を吐きました。喧嘩の助っ人に行っていたんです。

太郎吉には七つの祝の鯛とは言わないまでも尾頭付き、おきぬさんには精の付く物をと。お前さんの体が治らなけりゃ良いと思った事も有る。治ったら、お前さんたちを遠州浜松まで送って行き離れ離れになる。桜の下で大事な話があると言ったのは、おきぬさん、この時次郎、お前さんの事が好きだった。」と涙する時次郎。

時次郎は一両をおきぬの手のひらに乗せ布団を掛けると、太郎吉と二人、手を合わせる。

「咲いたばかりなのに、桜が散ってる。おきぬさんの死を悲しんでるんだろう。」と呟く時次郎。

 

4場:峠

「これからどうする。遠州浜松かおじちゃんの生れ故郷の信州沓掛に行くかどっちが良い。」と尋ねる時次郎に、「おいら、おじちゃんと一緒に居たいな。」と答える太郎吉。

そこへ、追っ手の二人が現れる。

太郎吉の事を思い、「命だけは…」と頼む時次郎だが、容赦ない追っ手たち。

刃向かおうとする時次郎に、「おいらの事を思うんだったら、もう悪い事はしないで。おじちゃん。」と時次郎の足にすがり付き止める太郎吉。

追っ手の一人が、「沓掛時次郎は先の戦場で討たれて死んだ。そこの旅の御方、その子の為に、立派な堅気になるんだ。」と言うとその場から去って行く。

「おいら、おじちゃんに頼みてえ事があるんだ。おいら、おじちゃんの事、ちゃんて呼んでも良いかい。」と尋ねる太郎吉に、「良いよ。」と答える時次郎。

「ちゃん。」

「そんな小さな声では聞こえない。もっと、大きな声で呼んでみろ。」

「ちゃん!」と大きな声で呼ぶ太郎吉と抱き合う時次郎。

おきぬの骨箱を胸に、時次郎と太郎吉は信州沓掛を目指す。

 

 

太郎吉役の椿キラさんの涙でもらい泣き。

沓掛時次郎役の椿裕二座長の涙を流しての熱演に涙。

おきぬ役の美穂裕子さん、一人で紅を差す事すら出来ないおきぬが、時次郎に嫌われない様にと手伝ってもらってまで紅を差す…時次郎を思う心情に涙。

旅籠屋の主人役の大川忍副座長とその女房役の夢路えみさん、その人の良さに涙。

そして追っ手役の大川礼花さんの最後の言葉に涙。

 

 

口上挨拶

椿孝也さん

 

 

大川礼花さん

 

 

御二方

 

②へ続く…