⑯より続き…

 

順不同になりましたが…

 

1部 お芝居 母恋鴉

*配役*

下総の新太郎*松丸家小弁太座長

母*松丸家美寿々さん

 

仁兵衛(ニヘエ)*近江飛龍劇団 近江飛龍座長

兄 寛八(カンパチ)*松丸家翔さん

妹 お光*松丸家ちょうちょさん

 

盗賊一味

権九郎(ゴンクロウ)*咲田せいじろう副座長

手下*松丸家こももさん

手下*松丸家翔さん

 

 

*あらすじ*

1場:盗賊一味のあじと前

一仕事終え戻ってきた権九郎たち。

「仲間の縁を切ってくれねえか。故郷に帰って、とっつぁんに親孝行してえ。」と権九郎に頼む寛八。

「切ってやろうじゃないか。お前を叩き斬るって言う事だ。」と言い、刀に手を掛ける権九郎。

そこを割って入る寛八の兄貴分の新太郎。

「寛八から話は聞いていたんだ。俺も仲間の縁も斬って欲しい。」と言う新太郎に、「縁は切ってやるが、今回手にした千両は新太郎と寛八に百両ずつ、俺が八百両だ。」と言う権九郎。

承諾した新太郎と寛八に百両ずつ手渡すと、権九郎たちはあじとへ入って行く。

「俺もおっかさんに親孝行がしてえ様な思いになってきやがった。」

と言う新太郎に、「親孝行は生きてるうちに側にいて、にっこり笑ってやる。それが一番の親孝行だと思うんだ。」と言う寛八。

新太郎が、「俺も故郷へ帰る。」と言うと、寛八は、「俺の家はなぁ、上州は利根川宿に一家を構えている仁兵衛一家だ。訪ねて来てくれ。」と言う。

新太郎が一足先に旅立ち、一人になった寛八を権九郎たちが襲う。

悲鳴が聞こえ戻って来た新太郎。

虫の息の中、「誰にやられたか分からなかった。奴らはこの百両欲しさにやりやがったんだ。この金、故郷のとっつぁんに届けてやっちゃくれないか。髷も一緒に届けてやっちゃくれないか。とっつぁんには達者で暮らしてくれと伝えてくれ。」と頼む寛八。

そして、「寛八、早く帰って来い。」と言うとっつあんの声が聞こえる。とっつぁん、待っててくんなよ。今から、おめえの許へ帰るからな。おとっつぁん!」と言うと息を引き取る。

「おめえの最後の頼みは聞き届けてやる。俺に任せて安心しろ。この百両とおめえの遺髪は俺が届けてやるよ。迷わず成仏してくんなよ。それじゃあな。あばよ。」と手を合わせると、仁兵衛の許へ向かう新太郎

新太郎の後ろ姿に、「新太郎よ、俺は何も寛八が憎くて斬ったんじゃないんだよ。お前たちに分けてやった金が惜しくてな。お前にやった百両、必ず、この俺が受け取りに行くからな。」と高笑いする権九郎。

 

2場:新太郎の実家

家捜しするも新太郎の姿は無く、「おめえの倅の新太郎は仲間を殺した挙句、金まで奪って逃げやがったんだ。新太郎が帰って来たら必ず連れて来い!」と新太郎の母に言い付け出て行く権九郎たち。

権九郎たちに荒らされた家の中を片付けていた母の許へ、新太郎が帰って来る。

一瞬は喜ぶも、「息子の新太郎は五年ほど前に死んで、この世にはおりませんわい。」と言う母。

新太郎の家は貧しいながらも年貢は収めていたが、見回りに来た役人が妹のおさわに目を付け連れて行こうとするのを止めに入った父親は殺され、おさわは舌を噛んで死んでしまう。

新太郎はその役人を手に掛け旅に出ていた。

「あの時、俺はどうなっても良かったんだ。妹が死んで、おとっつぁんが死んで、おめえ一人ぼっちになるじゃないか。どこかの旅の空の下でも、倅が生きていると思えば、心の支えになるんじゃないかと思い旅に出たんだ。」と言う新太郎に、母は、「あれから年貢の取立が一層厳しくなり、新太郎のせいだと村八分にされても我慢していたのは、いつかは、新太郎が堅気の姿で帰って来ると思ったからだ。」と言うと新太郎を追い出し戸を閉ざす。

「こんなやくざな姿で帰って来たこの俺が馬鹿だった。働き詰めで倒れちゃならないよ。丈夫で達者で、いつまでも長生きしてくれ。」と言いその場から去ろうとする新太郎を、「もし、そこの人、年を取ると目が疎おなりましてな。糸を通しちゃくれませんかのう。」と呼び止める母。

涙で糸が通らない新太郎は、「目にごみが入っちまったようで涙溢れて、おいらにゃ、この小せえ針の穴は見えないんだ。」と強がる。

「糸が通りませんか。通らなければ、この婆が…」と言いながら、愛おしそうに新太郎の髪を撫で付け、後から手を添える母。

 

3場:仁兵衛一家

「寛八を殺したのは下総の新太郎。俺は寛八の死に水を取ってやり、大枚五両のお金を届けに来てやった。」と言い含め、仁兵衛に恩を着せる権九郎。

そして、寛八の妹のお光に目を付け、「俺の女房になれ。とっつぁんから言い出した事。」と迫るが、「嫌です。」と断るお光。

やって来た仁兵衛が、「お光にはわしから話す。もう少し待ってくれ。」と言うと、面白くない権九郎は手下たちとその場を離れる。

仁兵衛が村の五人衆に相談に行こうとするところへ、新太郎が訪ねて来る。

「下総の新太郎」と聞き、お光に長脇差を持ってくるように言う仁兵衛。

そして、「倅、寛八の仇。」と新太郎に斬り掛かる。

新太郎は寛八から預かった百両と遺髪を差し出すが、聞く耳持たない仁兵衛。

百両の包みを見たお光が、「死んだおっかさんが兄さんの為に作った胴巻。」と気付く。

権九郎と新太郎のどちらの言っている事が本当の事なのか…

「寛八を殺したのはこの俺だ。」と言い権九郎たちが現れる。

「やい、権九郎。てめえのしている事は犬畜生よりも劣るぜ。」と言い、無事、寛八の仇を討つ新太郎だったが、「また人を斬っちまった。この下総の新太郎は、生涯、堅気にやぁなれねえのか。」と肩を落とす。

仁兵衛とお光が現れる。

新太郎は改めて百両と遺髪を差し出し、「この百両のは悪さして作った金じゃありませんよ。寛八が素っ堅気の仕事に就いて、爪に火を灯す様にして作ったお金です。」と言う。

倅の事を何もかも承知の仁兵衛は、「そのお金は遠慮なく頂いておくよ。故郷にはお袋さんがいなさるとか。あんたはもう一度故郷へ帰り、膝にすがって詫びたなら必ず許してくれるよ。」と言う仁兵衛。

その言葉に、「おやじさん、有難うござんす。御免なすって。」と頭を下げ、腰のどすを仁兵衛に差し出すと、「おっかさん!」と叫び母の許へ急ぐ新太郎。

 

 

2場の針に糸を通す場面は見る度に涙が零れます。

美寿々さんの細やかな所作や声色は本物の老母の様です。

待ちに待った近江飛龍座長の登場に客席が湧きます。

舞台に現れた瞬間から笑った笑った。

お客様の心を掴み取る力は半端じゃないです。

美寿々さんがリアルな老母なら、飛龍座長はバーチャルな老父でした。

 

 

口上挨拶

松丸家小弁太座長

 

 

松丸家翔さん

 

⑱へ続く…