発端は昨年11月11日。
舞台は政府の行政刷新会議による業仕分け

財務省が医療費の無駄を省くためとして用意した資料に、
「湿布薬、うがい薬、漢方薬は薬局で市販されている。
医師が処方する必要性が乏しい」という記述があった。
僅か1時間ほどの議論の後、15人の仕分け人のうち11人の賛成で、
「漢方薬を含む市販品類似薬を保険対象外とすべき」となった。
この後、医療用漢方薬最大手のツムラの株価が暴落。
12月中旬までに、日本東洋医学会などの団体が
「漢方薬の保険外し」に対し93万人の反対署名を集めた。

医者の処方する漢方薬は、
女性の更年期障害の治療や症状の緩和、
花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患の症状改善、
消化器系がんの手術後の腸閉塞防止、認知症症状の緩和、
抗がん剤の副作用緩和などさまざまな用途で、
必要不可欠な医薬品となっている。

日本最大手の病院検索・健康医療情報サイト、
株式会社QLifeが昨年12月初旬に行った調査では、
医者の79%、患者の85%が「漢方薬の保険外し」に反対。
日本に80ある医学部・医科大学全てで漢方療法教育が行われ、
医者の83.5%は漢方薬を処方している。

医者が漢方薬を処方する理由の第1位(56.4%)は、
「西洋薬では効果がなかった症例で、漢方薬が有効だった」
という調査結果もある。(日本漢方生薬製剤協会調べ)

「医者は呆れています。そんなことが出来る筈がないです。
私も、診ている患者さんに漢方薬を処方していますが、
漢方薬を保険適用外として困るのは患者さんです。
仕分け人の事実誤認と調査不足を、今はハラハラしながら見守っています」
と埼玉県医師会の吉原忠男会長。


「漢方薬の保険外し」という流れは、
明治7年の「西洋医学1本化」の太政官布告以来あり、
15年前の平成5年12月、当時の厚生省の医療保険審議会が
「一般用医薬品類似医薬品(漢方薬を含む)の
保険制度上の取り扱いを見直すべし」
という建議を出した。
この時、日本東洋医学会など諸団体が148万人の反対署名を集めて、
国がその矛を収めた。
しかしその後、毎年のように財政当局の策動は続いた。

今回の「事業仕分け」騒動は、昨年12月22日、
民主党から関係団体に「保険適用を継続する」という連絡が入り
収束の方向が見えてきたが、
新政権の医療政策に不安を抱かせる一幕だった。


以上は私がある雑誌に掲載予定の記事の一部です。


医療ナビ@埼玉 世話人 栁下 譲次