霧の街 小さながま口屋【むにがま】へようこそ音譜音譜

『霧の街から、大切なあなたへ彩りを運ぶ旅立ちの物語』

霧の街の案内所には、ときどき、少し特別な願いを持った旅人さんが訪れる。

その日やってきた旅人さんは、優しくて温かい、特別な贈り物(ギフト)を探しているようだった。 


「ピンク色の和柄や、和のものが大好きな、あの方のために」と。


案内所の棚には、彼女(むにちゃん)がひと針ずつ命を吹き込んだ、西陣織・金襴(きんらん)生地の「花ざかり」桃色のがま口お財布ショルダーが静かにたたずんでいた。

伝統ある織り糸が光を浴びて、まるで花々が咲き誇るようにきらめく、そんな特別な子だ。




その子が旅人さんの目に留まった瞬間、目に見えない小さな火花がパチンと弾けた気がした。


 「このお財布を見た時、ビビッときてしまいました!」


それは、がま口さんと旅人さんの心が、確かに通じ合った美しい一瞬。 

「特別な記念日に、あの方へ届けたい」という旅人さんの真っ直ぐな想いを聞いたとき、不器用な私(事務局員)の心にも、小さな炎が灯った。




この伝統ある美しい織物のがま口さんを、ただの袋に入れて送り出すわけにはいかない。 


私は街の奥を駆け回り、この子にぴったりな、真っ白で綺麗なお部屋(お箱)を仕入れてきた。 


旅人さんが教えてくれた「ピンクが好き」という言葉を道標に、大切に持っていた桃色と金色のリボンをきゅっと結ぶ。

そして、「特別な日(誕生日)」をお祝いする無償の魔法のシールを、そっと添えて。


準備は整った。

 白い箱の中で、桃色のがま口さんは、まだ見ぬ「大切な人」との出会いを夢見ながら、誇らしげに胸を張っているようだった。

そして、がま口さんは旅人さんと共に、霧の街から新しい世界へと旅立っていった。


数日後、遠い街から届いた手紙には、無事に旅を終えたがま口さんが、大切な人にものすごく喜んでもらえたという、温かい報告が綴られていた。


誰かの大切な記念日に寄り添い、笑顔の彩りを運ぶお手伝いができること。

それこそが、この霧の街で私たちが物語を紡ぐ、何よりの理由なのだと思う。


旅立っていったがま口さんが、これからも旅人さんと、その大切な人の毎日を、パチンと優しい音で守り続けますように。





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霧の街の裏通りへ、ようこそ🎶

10周年、900件以上の取引実績。……それでも私は、底辺作家。

霧の街の住人である私には、一つだけ、どうしてもうまくいかないことがある。

 それは「工作」だ。


霧の街の事務局として、私は日々、がま口を縫い、言葉を紡いでいる。

私の手元には、いつも大切に閉じたがま口と、その口を鳴らす「パチン」という静寂がある。


そんなある日、旅人さんから「ラッピングを箱でお願いできますか?」と相談をいただいた。


 大切にしたいというその温かい願いに、どうしても応えたかった。

けれど、その時は形にしてお渡しできる箱を用意することができず、心苦しい思いでお断りをしてしまった。




それから私は、どうすればその願いに応えられるのかを考え続けた。

「自分で箱を用意すればいいのではないか」。

そう思い立ち、工作という不慣れな道に踏み出すことにしたんだ。


動画サイトで作り方を調べ、厚紙と画用紙を買い込んだ。

画面の中の器用な人たちの指先を真似て、夜な夜なカッターを握る。

糊で指を汚しながら、私は何度も同じ角を折った。

そうして完成したのが、この箱だ。 





内側は、旅人さんの心を少しでも温められるようにと、淡いピンクを選んだ。

一生懸命に折った折り目。

何度も測り直した厚紙の重なり。


けれど、完成したものを手に取った瞬間、私は溜息をついてしまった。 

「……やっぱり、工作は嫌いだ」


完璧な形を目指せば目指すほど、私の手仕事はがま口の凛とした美しさを邪魔しているような気がした。


何より、工作が心底苦手な私が無理をして作る箱よりも、私自身が魂を込めて縫ったがま口に集中することこそが、旅人さんへの本当の誠実さではないか。

結局、この箱は霧の街のどこにも使われないまま、私の棚に眠っている。 




でも、この箱を作るために私が費やした時間と、指先に残った糊の跡は、無駄ではなかったと信じたい。


箱作りという「夢」に挫折したけれど、その代わりに、がま口を包むための新しい魔法を探す旅が始まったから。

工作は苦手だ。

けれど、この霧の街で、誰かの大切な時間をしまう「がま口」を作り続けることだけは、誰にも譲れない私の役割なのだと思う。


もし、この不器用な事務局員に、何かいいアイデアを授けてくれる旅人さんがいたら、ときどきこの街を覗きに来てほしい。


今日も、霧の街は静かだ。 

今夜も私は、がま口に向き合っている。


【ここから先は、霧の街の小さな裏話】

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霧の街 小さながま口屋【むにがま】へようこそ音譜音譜



『思いつきの先に見つけた、新しい霧の街の景色(ぬい制作・最終章)』

「がま口屋なのに、なんでぬいぐるみなんて作ったの?」


霧の街の誰かにそう聞かれたら、私は少しはにかみながら「ただの思いつきだよ」と答えるだろう。 


「そんなの、ブランドに必要なくない?」と言われたら、

「そうかもね」って笑ってしまうかもしれない。


効率や正しさだけを求めるビジネスなら、これはただの遠回りだ。

 けれど、無謀だと言われたこの挑戦をやり遂げた今、私の手元には、想像もしなかった新しい景色が広がっている。

これまで、お買い上げいただいた旅人さんへのおすそわけとして、ひっそり作っていた「つまみ細工」。



 完成したこの子(16cmの彼女)の頭にちょこんと乗せてみたら……息をのむほどに可愛くて、胸がときめいた。 


「あぁ、これはぬいさんのための、特別なお守り小道具になるかもしれない」


それだけじゃない。

 今まで完全オーダーメイドのみでお受けしていた、あの「推しポーチ」。

 この子と向き合ったことで、これからは販売用として、もっとたくさんの旅人さんにお届けできるかもしれないという可能性の光が見えてきたのだ。


今回生まれた彼女は、16センチ。

 実はこのサイズ、世の中のぬい活を楽しんでいる旅人さんたちの間でも、とても愛されている大きさなのだという。 


だったら……このサイズの子たちが持てるような、ちっちゃな「ぬい用のがま口」を作ってみても、ものすごく面白いんじゃない?なんて、次のワクワクが止まらなくなっている。


「必要のないこと」なんて、きっとひとつもなかったのだ。

不器用な私が思いつきで始めたひと針は、私の心を癒やすだけでなく、このお店の未来をちょっとだけ広げてくれた。 


がま口屋が作った、ちいさな分身と、これから広がる新しい物語。

がま口を閉じる「パチン」という音が、誰かの大切な時間を守れますように


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