「10年も続けてすごいですね」
と言われることがあります。でも、最初から情熱が
あったわけでも、作家を目指していたわけでもありません。
実は私、裁縫が大嫌いでした。
ミシンなんて中学の家庭科以来、触ったこともない。
持っていたミシンは、身長が150cmない自分のズボンの裾上げ代を節約したくて、勢いでポチってそのまま数年間、押入れに放置していたものでした。
そんな私が「むにがま」として歩み出すことになったのは、ある夏の朝の、信じられないような出来事がきっかけでした。
2016年。当時の私は派遣社員として働いていました。
でもある朝、会社の駐車場に着いた瞬間、どうしても車から降りられなくなってしまったんです。
ただ、涙が止まらない。
「もう、無理だ」
そのまま当時の部長さんに電話をして、派遣会社にも電話をして、その日のうちに仕事を辞めました。
重なる不運、張り詰めていた何かがキャパオーバーしてしまったんだと思います。
そこから1ヶ月、私はただの「プー太郎」になりました。
バイトの面接に申し込んでは、怖くなって辞退する。
自分を責めて、落ち込む日々。
手元に残ったのは、絶望と、あまりにも残酷な「暇」という時間だけでした。
その暇を潰すために、私は本当になんとなく、数年放置していた押入れの箱を開けました。
中に入っていたのは、あのミシンと、フェリッシモで買ったきり忘れていた「がま口のキット」。
説明書を読むのも嫌い❗糸のかけ方もわからない😰
うろ覚えの記憶とネットの情報を頼りに、必死にググりながらミシンと格闘しました。
でも、いざ形になり始めると、不思議な感覚が襲ってきたんです。
「……あれ? これ、意外と簡単かも。」
大嫌いだったはずの裁縫が、どん底にいた私の手の中で、小さな「達成感」に変わった瞬間でした。
キットの説明書、裏表紙にあった型紙の仕組みを見て、
すぐに自分なりの「原型」を作ってみました。それが、全ての始まりでした。
1個目は自分用に。そして2個目を作った時、なぜか「出してみよう」と思いました。
ハンドメイドという世界があることは知っていたけれど、まさか自分がそこに参加するなんて。
2016年9月9日。
minneに出品した「黒×白のにくきゅう柄」のシガレットケースに、注文が入りました。
「えっ!売れた!?なんで!?」
喜ぶより先にパニックです。梱包の仕方も決めていなかったので、そこからまた必死にググりました。
2016年9月14日。
宛名の住所を、間違えないように鉛筆で下書きして、その上から油性ペンで丁寧になぞりました。
発送は、ポストの口から「落とす」のがどうしても嫌で、郵便局の窓口へ。
大切なものを手渡ししたいというこのこだわりは、10年経った今も変わっていません。
派遣の時給とそんなに変わらないその金額は、これまでのどんなお給料よりも温かく、重みがありました。
「やるつもりなんてなかった」
「暇つぶしだった」
そんな頼りない一歩から始まった私の活動が、気づけば10年。
この「note」では、あの日の私のように立ち止まっている人や、何かを始めようとしている人に届くように、これまでの泥臭くて愛おしい10年間の記録を綴っていこうと思います。
あの時、勇気を出して窓口から差し出した小さな封筒が、今の私を支えてくれています。
月30万稼げます❗❗
なんて威勢のいいことは言えません。私は今も、自分のことを『底辺作家』だと思っています。
でも、そんな私だからこそ、伝えられることがある。
一つひとつ丁寧に窓口から送り出してきた、その手触りだけは本物です。