桃愛の小説

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いつものように教室に入っていったまどか。
しかし、昨日とは違う空気がまどかをまっていた。
そこでみた、まどかの机の上に、あまりにもバラバラに散乱したノート。
二年六組の生徒の冷たい視線が、まどかへと向けられていた。


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あまりにも衝撃的な出来事にしばし立ち止まっていたまどか。
それでも一歩、一歩、一歩ずつ自分の机へと向かう。
「・・・!」
バラバラになったノートに濃く、筆圧が強く書かれた…
「死ね」の文字。
ページをめくっていくと、大きく裂けたある一ページに、“消えろ”の文字が。
次々に見える、邪魔、クズ、早く死ねの文字が。
落書きのように書かれた字。乱暴で、単純に裂かれた、まだ何も書かれていないノートが、まどかのすぐ目の前で留まっていた。
「何よこれ!ひどい!新しいノートだったのに」
まどかは声をあげた。静かな教室にぽつりと響いた。
その次の瞬間、ドンッという音が言葉をふさいだ。
「だまってろ!お前、ほっとうざいな!」
まどかの声より大きなその声に、さっきよりも教室が静かになったような気がした。
胸が痛んだ。今、この場所には、私の味方というものはいるだろうか?わからない。
自分が何をした?皆に、何をした?あぁ、頭が痛くなってきた。
授業のときは皆普通だ。今までの、冷ややかな目をした皆はいなかった。
怖い―――。なんでこんなに怖く思うのだろうか。何もかも分からない。誰もわからない。どうしようもない。今までの仲間とは、こんなことをするやつじゃない。まどかはそう思った。まだ信じられない、っていうか信じたくない。こんなの。
急に隣の席のやつが私を呼びかけて言った。
「ねぇ、俺の腕にグーでポンっってやってみて」
なにをする?それをやれれた上で何をする?
だけど言うとうりにした。本当に軽い、触れるぐらいの感じだったのに。
「せんせぇ!まどかさんが、俺、なんもしてないのに殴ってきました!最低!」




                                 続

バラバラに破れたノート。
ぐしゃぐしゃに丸められた紙。
それらがまどかの机の上に、無残に置かれてあった。
今までに見たことがない、昨日までは、ずっと普通だったはずの机。
中学二年生になってから、毎日使っていた、机の上に。
数秒の間、何が起きているのか分からなかった。頭が真っ白になって、しばし呆然としていた。
しかし、ある声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。
「矢野まどかーおっはよーっ(笑)」
口調がとても軽い声。まどかはその声が、高岡みさと という子の声だとうことを、瞬時にさとった。
みさとはクラス内、いや、学校内でも目立つほうの類であったため、スカートは短く、髪色も茶髪になっている。
―――周りが静かだ。
冷たい空気。まだ八月の上旬だというのに、ひんやりとした空気が身体に触れる。いっきに寒気がこみ上げてきた。
ここは…ここはどこなのだ。
昨日まで、この二年六組の教室には、一歩踏み出せば、明るくて、輝きのある笑声がきこえてきたはずなのに。
ここは本当に、二年六組の教室なのか―――?
「まーどーかー。どうしたの?席、座らないの?きれいに飾ってあげたのになぁ」
墨田朱音だ。私が、ちょっと苦手だったあいつ。
かすかに、クスクスという笑い声が聞こえた。
輝きのある笑い声ではなく、暗くて、ほこりをかぶった、輝きの微塵もない、笑い声。
絶望に包まれる。暗黒の闇の底に落ちる。今はただ、苦しいとか、辛いなどの感情なんかなかった。
ただ、光が失われたことに気づいた。





                                   続