ここはメルボルンの街中から少々外れたところにある酒場

店はなかなか広いが、その日の客は14~15人程度、半分ほどのテーブルは空席だった


その客のうちの一人、バーモンド中尉はカウンターでグラスを傾けていた・・・


彼の指揮するMTLS隊は、MS隊とはいえ規模は小さく、部下といっても旧知の者が2名だけ

そのような小規模部隊に大きな任務が回ってくるはずもなく、彼は部隊指揮官という身分に見合わないヒマを持て余していた

そのヒマを有効活用しメルボルンに多数いる、公国軍兵士ではあるが特定の部隊に所属せず遊撃員として動いている人員をMTLS隊専属にスカウトしようと画策していたが・・・・・・

「・・・・・・こんな場末の酒場じゃ、そうそう見つからんか・・・・・・」

「何だい?」

「イヤ、もう一杯もらおう」

ヤレヤレ、独り言が出るあたり俺もヤキが回ったか・・・などと思い店内を見渡す

ここの客はほとんど知ってる人間だ

整備兵か輸送員、あとは実戦を知らなさそうな新兵ばかりだ

バーモンドもいずれは高度な整備も出来る整備兵を抱え、新兵連中に教育を施す大部隊の指揮官になる事を夢見たが、今はそれらではなく実戦経験のあるパイロットが欲しかった


時計の針が23時30分を指し、バーモンドが何杯目かのブランデーを胃袋に流し込んだとき彼の隣にトッ、と誰かが腰を下ろした

ソレが何者か確認する前にその客はバーモンドの肩に腕を回して顔を近づけてこう言った

「呑んでマスかぁ~!?色男中尉どのぉ~~?」

「ぐは、この女酒クサっ!」

バーモンドの酔いが醒めるくらいの猛烈な酒臭さを放つこの女は公国軍少尉の身分の分かる軍服を着用していたが、手に持った酒瓶は何故か彼女が兵士であるのを否定する存在のようにも見えた

「マスタぁ~、この中尉が私のことサケクサイとかいう~~」

「そりゃおまえが呑み過ぎだからだミリアム 強い酒ばかり呑みやがって」

「あんですとー! ダレが酔っ払いだ~!!」

いや、誰がどう見ても立派な酔っ払いだろう こいつを見て酔っ払いじゃないと思う奴がいたらちょっと来い説教してやる、そこまでバーモンドが声に出さずつぶやいた時、ミリアムと呼ばれた女性少尉はバーモンドの肩にもたれかかってきた

ねぇ・・・・・・

さっきとは違い、甘い声でささやくようにつぶやく

「中尉ドノは・・・・ドコのダレですかぁ~」

「ソレは俺の台詞だっ!!」

バーモンドは容赦なくミリアムの後頭部にツッコミの手刀を叩き込んだ

ごっ!!!

とカウンターとミリアムの額が激突し、ミリアムは動かなくなった

「引力にひっぱられるぅ~・・・」

と一言残して・・・・・・


「・・・・・・で、マスター こいつは一体なんなんだ?」

バーモンドは隣で安らかに意識を失ってるミリアムに見向きもせずマスターに問いかけた

ミリアム、と呼んだからには多少の事は知ってるだろう

「そいつは元宇宙軍対ルナツー方面連隊のパイロットだよ、今は単なる呑んだくれだがね」

「ほぉ・・・・」

改めてミリアムの顔を覗き込んでみる

安らかに酒臭い寝息とヨダレを垂れ流してるこの女を、パイロットと信じるのは少々難しい気がした

「所属中隊の隊長の転属と部隊解体、それに伴っての転属命令でメルボルンに下りてきたが、この有様だろう? どこの部隊も引取りを拒んでるのさ」

そこまで聞いたバーモンドは数枚の紙幣をカウンターに置いて立ち上がった

「多すぎるぜバーモンド中尉 こんなには取らねぇ」

「この女の分もだ」

ミリアムの腕を自らの肩に回し抱えあげる そんなに重くは無い

「酔狂だな まさかMTLSで引き取る気かぃ?」

「そのまさかさ また来る」

対ルナツー方面連隊といえば、宇宙要塞ソロモンに所属する部隊でも連邦軍との接触の多い部隊だ

そこの出身であれば、実戦経験は豊富だろう 

多少酒癖が悪くても「実戦経験のある、特定の部隊に所属していないパイロット」であれば、バーモンドにとっては充分だったのだ

「さて、問題はこの女が首を縦に振るか・・・だな」


  第1話 終了

~~~~~~~~~~き~り~と~り~~~~~~~~~~

と、こんな事を妄想するだけならまだしも、実際に書く自分、南無

ちなみに全て妄想フィクションです


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