今回の事件について、何も取材していない。

筆者は20余年、ファイターズ関係者K氏と、「顔見知り」として付き合ってもらっている。

彼は、どのようなメールを送っても必ず返信してくれる。極めて律儀で、個人的に全幅の信頼をおける人物だ。

今回の件に関しては、彼に何のメールも送っていない。質問すれば、可能な限り答えてくれることはわかっている。ただ今後の付き合いを維持するため、煩雑なアプローチはしないと決めた。

したがって、当コラムは仮定文である。

 

水原氏は、2012年より北海道日本ハムファイターズの職員として通訳を中心に仕事をしていた。

基本、ファイターズのスタッフは全員英会話ができる。2018年大谷翔平が渡米するにあたり、ファイターズ職員の中から通訳を選ぶことになった。

筆者は家庭内で、「K氏が適任なのに」とぶつぶつ言っていた。彼は、通訳はもちろん、アメリカでのマネ-ジメントに精通しており、実際に実務も行う能力を持っている。

大谷ほどの選手を面倒みる場合、通訳を含めた総合マネージャーとしての仕事が求められる。筆者の知る限りK氏が適任だと思った。

ファイターズには数人、そのようなスタッフがいた。ただ球団は、誰も手放したくなかった。候補の中から、通訳とキャッチボール相手ができる程度の水原氏が球団を離れることに、妨げる理由はなかった。

 

水原氏の行為は、現在の報道で知る限りお粗末極まりない。

アメリカのマフィアが、大谷氏本人にアプローチするのはリスクを伴うが、水原氏ならアプローチする方法を熟知している。ギャンブル漬けにし、弱みを握り、負債を何らかの方法で送金させる裏の道も、水原氏に伝えるのは容易である。

利益をむしり取った後、水原氏を野に放ち司法の手に渡すという手法に、何の違和感もない。

 

K氏であれば、マフィアの接近を察知できるし、大谷氏に心理的負担をかけるような行動はまず起こさない。

つくづく残念だが、ファイターズ球団が絶対に離したくない数名の中に、K氏が含まれることも事実だった。

大谷氏が水原氏を選んだ理由は知る由もないが、選択を誤った。

ギャンブルの負債はエンジェルス時代からのもので、同じカリフォルニア州のドジャースが解雇という後始末を強いられた。

 

大谷氏は、数年にわたって行われていたギャンブルを、いつかわからないが近年になって知ることになる。

そして送金の手法については、まだ不明だがマフィアの手引きであり、常識的に考えると大谷氏は関わっていない。

大谷氏は渡米前に犯した選択の過ちを抱え、その後、アメリカで生きる上での選択を自分が主体で行っている。

幸い彼の収入からすれば。8億程度という金額は、まだ救いがある授業料として認めることができるだろう。

 

かつて、王貞治氏(当時監督)が話してくれたことがある。

「自分は現役時代にいろんな会合に呼ばれたが、同席する裏社会のボスに対して、球団のボスが、長嶋と王には手を出すな、と釘を刺していた。だから、自分に対しては誰も酌に来なかったし、何か贈り物が届いたような時には、必ず倍程度のものを送り返した」。

これは、元西鉄ライオンズの池永正明氏が、仲間の活動によってようやく球界復帰を認められ、晴れて表舞台へ戻った日。つまり福岡のドーム球場で始球式を行った、試合前の練習中に伺った話だ。

「あの頃の九州は、その辺が甘かったんじゃないか」とも加えた。

 

大谷氏にも、雑音を排して試合に集中できるブロックが機能していたらと、つくづく思う。

これからでも遅くない。マネージメント能力の高い人物を、それなりの年俸で個人契約した方が良いと思う。

大谷翔平は、球団、マネージャー、エージェントがチームを組んで守り抜く存在だ。


(マウンドへ戻った池永氏)