こんにちは、天和太郎です。

 

最近はプライベートで天和太郎の双子が生まれました(天和・ダブル役満・32000オールです。笑)。それに加えて本業も忙しく、ブログを全然更新できていなかったのですが、Mリーグでは天和太郎の推している白鳥プロが絶好調で嬉しいですね。個人成績もプラス219.2ポイントと好成績です。このまま良い流れが続くことを期待しています。

 

さて天和太郎は実はMリーガーの著書を20冊以上持っており、このブログで、少しずつでも、それらの本の書評を書いていきたいと思っています。

 

麻雀本につき、多井プロは、200頁の麻雀戦術本を「読み終えたときにひとつでもふたつでも新しい考えが知れれば素晴らしいこと」だと述べています(多井隆晴「多井熱」(竹書房)163頁)。

 

 

天和太郎も、ひとつかふたつ面白い発想があったら素晴らしい、という気持ちで、麻雀本を購入し、時間を使って読んでいます。このブログでは、天和太郎が読んだ本の中で、特に面白いと感じた、1つの考え方を掘り下げていきたいと思っています。

 

その記念すべき書評シリーズの第一弾ということで、今回は、白鳥プロの「トッププロが教える最強の麻雀押し引き理論」(以下「本書」という。)の書評をしていきたいと思います。

 

 

 

本書は、そのタイトルどおり、麻雀の押し引きにつき論じた本です。麻雀において、押し引きは最も重要な技術の一つであり、押し引きを制するものは麻雀を制する、といっても過言ではないでしょう。白鳥プロも麻雀の成績に最も大きな影響を与える要素は、鳴き技術、リーチ判断、手牌読み等ではなく、ズバリ「押し引き」だと述べています(本書2頁「はじめに」)。実際に、Mリーグを見ていても、白鳥プロの麻雀は、優れた押し引きのバランスの上に成り立っており、「押し引き」がとても上手いことが分かります。

 

本書の中で色々と勉強になる箇所は多いのですが、今回はその中から「親の連荘の価値」について論じた箇所を取り上げます(本書138~141頁)。

 

親の連荘をするために、子のリーチに押して形式聴牌を取った方がよいのかの判断などは、よく麻雀で直面する場面ですよね。そのような場面で押し引きの判断をするために、親の連荘の価値を考えておく必要があります。白鳥プロは、親の連荘の価値につき概ね以下のように述べています。

 

①小林剛「スーパーデジタル麻雀」では「親番1回の価値は500点、無限に連荘することを考えても650~700点前後」とされている。

②しかし、①は局収支話であり、順位点を考慮し、かつ、親の連荘によってトップの確率が高くなることを考えると親の価値はもっと高くなる。

③したがって、親の連荘はなるべく防いだ方がよく、「自分が放銃しなければよい」と思って、親に安易に急所となる牌を鳴かせたり、親が前に出やすい状況を作って連荘させてしまったりしない方がよい。

 

上記①は、小林剛プロ「スーパーデジタル麻雀」(竹書房)59~60頁の記載の引用であり、原典をあたると、ネット麻雀「天鳳」の統計データにおいて、親番1局の平均収支は約500点であることを基に、「おそらく1回の親番での平均収支は650~700点くらいだろうか。」と述べられています。500点~700点と言われると、麻雀における最低の上がり点や聴牌料よりも低い点数であり、親番1回には大した価値はないのだな、という印象を受けます。しかし、仮の話として、東1局の親番で、他家から300点ずつあげるから(300オール)、君の親番流れでよい?と言われたら、それは嫌だな、と思う人も多い気がします(小林プロは、これを受けるのでしょうか?)。

 

 

上記②は、(1)順位点を考慮すると、局収支以上に、点数期待値が高いという要素だけではなく、(2)親は点数のボラティリティが高い(大きな加点により一気にトップに近づく可能性がある一方で、ツモられたときに他の人よりも多く払うことにより下の順位にいく可能性もある)ため、トップになりやすい、という要素の2つから成る主張であるように思われます。念のためですが、白鳥プロが(1)を主張していることは明らかですが、(2)も主張しているのかは必ずしも明らかではなく、本を読んで受けた印象として、天和太郎が(2)も主張している可能性もあるなぁという印象を受けただけです。いずれにせよ、親の連荘には、局収支の点数以上に価値がある、という主張であり、それは説得力があるでしょう。なるほど。

 

しかし、天和太郎は、小林プロ、白鳥プロの2人の麻雀プロの著書を読んでも、親の連荘の価値につき、語りつくされていない要素があると思っています。それは、親の連荘の価値は、点棒状況及び残りの局数に応じて変動するということです。つまり、東1局0本場の親の連荘の価値と、南3局や南4局で0点しか持っていない親の連荘の価値は、大きく異なっており、後者の価値の方が大きいのです。これは麻雀には順位点があるからであり、順位が低いほど、アップサイドが大きく、1局多くできることの価値や和了の価値が上がるからです。そうだとすれば、親の連荘の価値を具体的に点数換算することにはあまり意味がなく、むしろ「親番1回の価値は500点、無限に連荘することを考えても650~700点前後」という(正しい)主張・データを盲目的に頼ってしまうことで、点棒状況及び残りの局数に応じた親の連荘の価値を測り誤ってしまいかねない可能性もありますので、その点は注意が必要だと思います(小林プロが正しいデータを指摘しているとしても、そのデータの使い方を誤らないように注意する必要がある、ということです。)。なお、上記の天和太郎の指摘と類似の点を指摘したものとして、(親か子かに関係なく)点棒状況及び残りの局数に応じて、和了の価値が異なることを指摘している文献があります(みーにん「統計学のマージャン戦術」(竹書房)130頁表19-1)。

 

 

親の連荘の価値については以上です。なお、天和太郎が、上記の白鳥プロの指摘を面白いと思ったのは、その内容だけではなく、その形式、つまり、小林プロの著書の内容を引っ張ってきて、「1つ抜けている観点があります。」として、批判的な指摘をしているところにあります。麻雀本には、理論的なこと、何切る、実戦の解説が書かれていることが多いのですが、概ねその本の中だけで完結しているものが多く、他の麻雀プロの主張に議論を積み重ねているものは、かなり少ないのです。しかし、多くの理論は批判を含めた議論の中で発展するものですので、他の麻雀プロの主張を建設的に批判することはとても有益であり、評価すべき点だと思います。しかもプロ雀士として先輩である小林プロの主張を批判するのは勇気のいることだったのではないでしょうか。この批判的な指摘こそが、本書において白鳥プロが見せた、隠れた絶妙な押し(引き)だったと思っています。

 

~流局~