先日スペインのお話を書いたので、ついでにもう少しスペインのお話を書いて見ましょう。今日はマドリードから70kmほどのところにある世界遺産に登録された旧都「トレド」のお話です。スペインに1日しか滞在する時間が無ければ、まず「トレド」を訪ねなさいと言われるほど素晴らしい街です。何が素晴らしいかと言うと、街全体が中世から全く変わっておらず、3方を河に囲まれた7つの岩山の上に立つ、城壁に囲まれた中世の要塞都市で、この街にいると自分がまるで中世の街に住む人間になったような気分になれる街なのです。私はスペイン在住中に3度おとずれた事があります。
ケニーのブログ-タホ河に囲まれたトレド市街
まずこの街の歴史を知るとビックリです。街の歴史は紀元前190年に始まります。ローマ帝国がイベリア半島に進出し、交易で多いに栄えました。その後ローマ帝国の衰亡とともに、6世紀になると西ゴート王国の都となりますが、やがて11世紀にスペイン帝国に征服され首都となり、スペイン帝国が16世紀にマドリードに首都を移すまで帝都として栄えました。16世紀には中世のギリシャ人の大画家エル・グレコがこの街を気に入り、たくさんの創作活動を行い、多くの遺作が残っています。
ケニーのブログ-トレド市内の石畳の迷路
街は、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教それぞれの影響を受け、様々な文化の渾然一体となった不思議な雰囲気です。周囲は南北1.3km、東西1.5kmの狭い範囲ですが、全周を城壁に囲まれ、3方を囲むタホ河からは1つの橋で繋がれ、この橋を封鎖してしまえば外敵の侵入は阻止できる構造になっています。街の中は迷路のような狭い石畳の路が縦横に走っていて、もちろん車なんか入れません。
ケニーのブログ-トレド市街に入るサンマルティン橋
凄いのは、この街に現在でも7万人くらいの人が住んで、普通に生活していることです。中世から連綿と続く町並みに、石造りの家。そこにそのままの姿で市民が暮らしているのです。スペインにはそういう中世からの街がたくさん残っています。
ケニーのブログ-トレド市街の外観
イスラム圏とキリスト教圏の境界に位置するスペインでは両派の争いが何度も繰り返され、映画「エル・シド」(チャールトン・へストン主演の大スペクタル映画です)はこの頃の戦争を描いたもので、スペイン救国の英雄エル・シドのアラブ軍との攻防を描いたものです(興味のある人はアマゾンかツタヤで探して観て下さい)。

このように2000年を超える歴史を持つ街が、そのままの姿で現在もラ・マンチャ県の県都として健在なのがヨーロッパの面白いところです。

ちなみにこの街で行われた最後の戦争は、1936年のスペイン内戦で、街に篭城したフランコ軍を共和国軍が攻めたのですが、街の保存が問題で大規模な砲撃ができず、攻め落とせなかったそうです。でも機関銃や小銃の弾痕はあちこちに残っています。

どうですか、「トレド」の街に興味を持っていただけましたか。

いつの日か読者の皆さんとツァーを組んでトレドに行きたいものですね。