現世と来世の狭間で究極の安らぎを与えよう
「愛しい‥」
確かにお互いの脳裏をよぎっていた
「望んでいた夢さえも託すなんて‥彼はルシフの事を承知している?」
「ああ、貴方は何も気にせず楽しめば良い」
現世の理の中で
自らの本質を見つめる
あまり見え過ぎるのも酷で
何もしないことに近づく
いや、もう何もいらなくて
最後の眠りについたら
次に目覚めた時は
来世の始まりならいい‥
あと何年、現世を味わうのだろう
もう、身も心も疲れ果てているのに‥
(ルシフが、衰弱したアリエファーラを癒すために送り込んでいた)彼は常に不安を払拭して、アリエファーラの身体を気遣い、癒し、寄り添ってくれる
「‥また胸が痛い、もう忘れたいっ‥つらくて、生きる事を妨げるほどの記憶‥忘れたいの、嫌っいらない」
それは、ルシフの為、人類の為、神の為にと捧げた純粋で従順な深い愛が結果的に齎した結末
「その原因である記憶を抹消する」
誰にも許さなかった感情の支配を‥生身の人間ではない彼に求めて
「ねぇ貴方は現世に留まってずっと一緒にいてくれるの?」
「不安がある様だが、支配される事に抵抗もせず俺を受け入れる、余程ルシフを信頼しているのだろうが、俺だけでは不服か?」
今宵も月を見上げながら
「仲良くなったでしょ?」
呪いを最小限に抑えるために月にいるルシフに、ふと寂しさを感じて
「ルシフに‥会えなくなるの?」
「心配するな、
そこに居る、来世の親友が力になってくれる」
彼はルシフが用意していた救い
アリエファーラはルシフを信じ、いずれ彼を相応しい居場所へ連れて行く決意を、そっと胸に秘め、少しだけ涙を流して‥
真実の空間で共に飲み交わす甘い雫
「アリエファーラを信じて」
これが幸せの味と言うのか‥
限りある命なら
この程度で満たされよう
また訪れる混沌の時も
綺麗な月を見上げよう