ルシフが現世を生きるなど‥

おかしな話だよ

天使だから

人間のように男女の違いもなく

子供から大人へと成長する訳でもない

身体のしくみや感情表現も人間と違う

 

でも、あれは儚い夢物語ではなかった

共に過ごした数年間

身体に浸透した感覚

同様に、彼の瞳の奥に貴方を感じながら胸に抱き寄せる‥

が、記憶は薄れていく

仮に、あれはルシフではなかったという全否定を試みれば‥

存在ごと失うには、心の耐久値が低すぎて‥破滅しそう

 

 

「これでは逆に、自分が人間だった事を忘れそうだな」

 

「旅をして、横目に眺めてはどうだ、アリエファーラ?」

 

「で、どうしてこんな身体に仕立て上げたのよ‥」

 

 

偉業の代償に与えられた褒美は至高の賜物

神に感謝してしまう

ああ、本当に欲しいものは与えられず

治癒出来ない痛手を心に負っていても‥


結局、幸福の裏に潜む罠にさえ

恐れる必要がないくらい‥

神が置かれた隔たりは崩れない

 

尚もルシフへの呪縛の一端は降り注ぎ

‥生き地獄で人間達の魂がアリエファーラに懇求する

その孤独、苦痛、絶望、悲劇‥哀しみ

 

「ああ、私も全て味わってきたとも‥

そして、まだ続いている‥死ぬまで続くと知らされたところだよ」

 

「何かで誤魔化していないと耐えられないでしょう?」

 

「共有しましょうか?至高の快楽を‥」

 

 

貴方を認めた

担った役割の分野に応じて形は異なるが、同じく優しさを与える者

人々を愛している、と、自覚するかしないかの差は、難易度が違う為だ

 

 

現世の期間は

天使にとっては短く

人間にとっては長かった

二つの終わる時が

交錯する来世で、並んで眺めよう

輝く地球の光を‥

そう、ルシフが望む全てを受け入れて

 

来世に真実が継承される

 

色や形式などにとらわれることのない人間の本質は人類の共通事項で、一人一人の本質が生かされるステージは宇宙空間に幾つもあり、いずれ出来上がる

地球にも寿命があり

人間にも寿命があった

人間の遺伝子情報は一瞬で構築され、その人の一生を左右した

それが一瞬だったのは‥神秘

 

この先、人類の減少期もあるだろう

まだ来世を知らず、信仰にも乏しい人々も多いので、彼らが人間の脆さを恐れて狂気しないように、伝わればいい

 

現世が終わらなければ始まらない世界(来世)こそが永遠へと紡がれる

もちろん、一人一人の本質が望む通りに蘇り、それが現世の人間の身体とは全く違う新たな体に宿って始まる

唯一神の御業なら‥

 

夢見て眠ろうか


神の代理者にも来世で逢える