1,彰子の同級生・由良隼人
さて、2回目は由良隼人。
本作における「ヒロインの相手役」というポジションです。
前作だとここは前半は大舘昇一郎、後半は井上馨になります。しかし、こちらのも現代物であるのでいろいろ違う。
隼人は「彰子の中学の同級生男子」「史学科出身の地方紙記者」「新田義貞郎党の子孫」という3つの側面があります。これは、最初から決まっていた設定だったかな……。歴史ミステリ―という面では「彰子の相棒であり助言者」という面もありますね。
彰子のキャラに「転校生」があるので、「同級生」「クラスメート」だった人間の存在は、この作品では重要になります。隼人は「最初に声をかけた男子」「思春期男女ゆえに微妙な関係」というのが、中学当時の互いの間柄。まあ、微妙な距離感ながら、けっこう仲良く、楽しく中学生活を送っていたんではないでしょうか。
性格は実はけっこう変わっておりまして、初校とかはもっと荒っぽい性格だったような。彰子を怒鳴ったり、怒ったりする場面がありましたが「いや、この子(彰子)はどういう男子に心を開かないタイプだろうな」と思い直して修正。
その後もあーだこーだとこねくり回しながら、「どこか飄々」「つかみどころのない」「運転すると時々別人」みたいなキャラになりました。なお、運転時に別人になるのは、群馬ではよくある話ですが、赤城南面道路でカーチェイスをしてはいけません。
そして「隼人」という名前ですが、これはインスタでも話題になりましたが、中島飛行機シリーズです。
隼人は「一式戦闘機隼」から。
瑞子は「彩雲」の別名が瑞雲。
未登場ですが隼人の父が寿人(寿エンジン)、瑞子の父が栄人(栄エンジン)です。
そんな中島飛行機一家。
中島飛行機 一式戦闘機隼
2,史学科という「説明役」
もうひとつ、「史学科出身の新聞記者」というの。
今作、隼人が重要な点はここでした。つまり、膨大な歴史知識の説明をどう入れていくか……という問題。
これは実は最初は「彰子が国文」「隼人が史学」というのを考えていました。ところが「国文と史学のふたりで進行したら、さっさと解決してしまう。ミステリ―でもなんでもない」という点に気が付き(さっさと気づけっ、オイ……)変更。
彰子は美術系になり、隼人が歴史解説を一手に担うことになりました。これにより、本来は2人とも20歳で大学3年生だったのを、「社会人のほうがいいかな」と思い変更。「地方紙記者」という要素を追加して、年齢も23歳になりました。この話の彰子が、実年齢よりもやや幼い印象があります。
そんな「説明係」というのがキャラの最大要素であるので、途中で「逆にキャラ立ってないんじゃないか?」と不安に思うことも。実は彰子、隼人、志帆の3人の中で、一番時間を費やしたのは隼人だったりします。そのお陰なのか、意外?にも好意を持ってくれる人が多いキャラになりました。
なお、大学は國學院大學史学科出身です。
なお、そんな彼であるので、エピソードには作者の実体験がふんだんに盛り込まれていたりします。大変なわけですよ、歴史を仕事にするというのも。
ちなみに隼人、「実は裏切る(最初から敵)」なんじゃないか?」と思った読者も多かった様子。ここは作者も以外でした。というのも、実は序章には最初は「由良」と出ており、校正でカットしています。
私は転校生女子に優しい少年を、裏切らせるような真似はしませんよ、皆さん。
この作品ではね。
彰子「待って!國學院大學史学科じゃあ、大学時代は東京の渋谷にいたんじゃないの?」
隼人「さて、せっかく鎌倉にきたんだから飯でも……」
彰子「なにがおまえすっかり都会人だな、よ。ていうか、私が採用試験を受けた会場も、國學院大學たまプラーザキャンパスじゃない。どっかで見てたの?ねえ!」
隼人「前橋からなら2時間20分でいけるしな。ちなみに、たまプラーザ駅南口徒歩5分だ。作者は昔、別の口から出てぐるぐる迷っていた」
隼人「まだ話は終わってなーい」
続きます。